ヒト肝3次元培養系、マウス・ヒト肝細胞融合系による新規医薬品毒性評価系に関する基盤研究

文献情報

文献番号
200500232A
報告書区分
総括
研究課題名
ヒト肝3次元培養系、マウス・ヒト肝細胞融合系による新規医薬品毒性評価系に関する基盤研究
課題番号
H17-トキシコ-002
研究年度
平成17(2005)年度
研究代表者(所属機関)
小澤 正吾(国立医薬品食品衛生研究所 薬理部)
研究分担者(所属機関)
  • 石田 誠一(国立医薬品食品衛生研究所 薬理部)
  • 宮島 敦子(国立医薬品食品衛生研究所 薬理部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 厚生科学基盤研究分野 萌芽的先端医療技術推進研究【トキシコゲノミクス分野】
研究開始年度
平成17(2005)年度
研究終了予定年度
平成19(2007)年度
研究費
23,250,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
医薬品の代謝能の個体差に深く関連する代謝酵素の欠損変異遺伝子が知られている。一方、環境因子により医薬品の代謝能が亢進する場合もある。どちらも医薬品の有効性や安全性に重大な影響を与えることがある。環境因子によるヒト肝薬物代謝酵素の誘導を評価するため、ヒト肝初代培養細胞を用いた薬物代謝動態能の評価が常時行われているが薬物代謝酵素誘導能を保持する細胞の入手は容易ではなく、安定した評価系とは言い難い。本研究では、近年の新規細胞培養基材や培養方法を採用しヒト肝癌細胞を種々の新規培養環境に置くことにより、健常ヒト肝mRNAの遺伝子発現を模倣する安定培養系を確立する。再現性の高い新規医薬品の安全性評価系の構築を通じて、厚生労働行政に資する。
研究方法
正常肝mRNA における遺伝子発現プロファイルと3種のin vitro培養系(三次元培養、スフェロイド培養、プレート培養)における肝細胞の遺伝子発現プロファイルをAffymetrix社human genome U133A gene chipを用いて網羅的に解析する。三次元培養系では、細胞の増殖期と定常期間の比較を行う。上記3種の異なる環境下で正常肝mRNAの発現プロファイルと近似する培養条件を明らかにし、肝機能維持因子の解明を目指す。
結果と考察
ヒト肝癌由来HepG2細胞では、平面培養ではリファンピシンにより2.4倍のCYP3A4の誘導であったのに対し、ハイドロキシアパタイトを使用した三次元培養系での誘導率は最高14倍であった。定常期の発現量と増殖期の発現量間に、統計的有意差の認められた遺伝子の中で、定常期の発現が増殖期に比べて3倍以上あった18種類の遺伝子のうち、8遺伝子が発がんに関連するものであった (例:Grb10, ATR1など)。少なくともヒト肝癌由来HepG2細胞では、三次元培養環境に細胞が置かれると、その他の培養環境に比較して細胞が腫瘍の特性と関連する指標を発現していた。また、HepG2細胞を用いるとスフェロイド形成が可能であった。
結論
三次元培養、スフェロイド培養系につき、遺伝子発現パターンを詳細に解析し、薬物代謝能を生体に近づけるとともに、生体内の遺伝子発現を模倣するに必要な遺伝子発現調節機構の解明を行う態勢が整った。三次元培養系において細胞が腫瘍特性を示す生理状態と腫瘍特性を示さない生理状態が認められ、正常肝機能再現の手がかりが得られた。

公開日・更新日

公開日
2006-04-11
更新日
-