ヒト末梢血中リンパ球を用いたトキシコゲノミクス基盤研究

文献情報

文献番号
200500228A
報告書区分
総括
研究課題名
ヒト末梢血中リンパ球を用いたトキシコゲノミクス基盤研究
課題番号
H17-トキシコ-006
研究年度
平成17(2005)年度
研究代表者(所属機関)
藤村 昭夫(自治医科大学 臨床薬理学)
研究分担者(所属機関)
  • 大島 康雄(自治医科大学 薬理学講座臨床薬理学部門)
  • 篠原 歩(東北大学大学院 システム情報科学)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 厚生科学基盤研究分野 萌芽的先端医療技術推進研究【トキシコゲノミクス分野】
研究開始年度
平成17(2005)年度
研究終了予定年度
平成19(2007)年度
研究費
32,500,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
新薬の臨床開発時に患者さんから検体を採取する場合、できる限り負担の少ない方法で臨床検体を採取する必要がある。そのような検体として、ヒト末梢血中有核細胞がまず考えられる。本研究ではリンパ球を含むヒト末梢血中有核細胞をトキシコゲノミクス研究に用いるための基礎検討を行う。
研究方法
本研究では以下の項目を検討した。
1) リンパ球を用いたトキシコゲノミクス研究の基盤整備―リンパ球の遺伝子発現に最も影響の少ない採血およびRNA抽出方法を検討。
2) 腎障害性薬物評価をリンパ球によって行う際に用いる新しいDNAチップの作成―リンパ球に腎障害性薬物を曝露させ、有意に変化する遺伝子を探索。 多数の薬物均一な指標により曝露した上で、遺伝子発現研究を行うことが好ましいが、薬理作用や実際の臨床の場で利用される方法が異なる薬物をどのような側面から均一として、曝露するかについて検討した。臨床用量を基に曝露濃度を決定した。
3) 薬物性腎障害予測にリンパ球を用いることの妥当性の検討-ヒト腎細胞およびリンパ球における遺伝子発現変化の類似性を検討。日本人プライマリーヒト腎細胞と日本人EBV不死化リンパ球に代表的な薬物8種類それぞれ曝露した発現データを比較し、曝露前と比較して有意に発現誘導された遺伝子を比較した。
結果と考察
1) 細胞処理の方法が異なると遺伝子発現に対する異なる影響が見られた。これらの特徴を基に純化の方法を、研究上必要な感度・各テクニックのばらつき・処理時間など現実的に利用可能かどうかを考慮して選択するべきと考えられた。
2) 決定した曝露濃度に従い本年度は、添付文書上副作用として急性腎不全などの腎障害が記載されている薬物とそうした記載のない薬物を80種類ずつ選び出し、40種類ずつ曝露・遺伝子発現実験を行った。残りの40種類ずつの薬物曝露・遺伝子発現研究を2年目に行ったのちに、データの評価を行う予定である。
3) CisA, FK506, TOBでは腎細胞とリンパ球において共通して発現誘導が見られた遺伝子数は0であった。しかし、NKT01, DKB, GM, ISPではそれぞれ1であり、AMKでは2の遺伝子が両培養組織に共通して発現誘導されていた。
結論
1) 臨床の現場で末梢血中有核細胞を用いた遺伝子発現研究を行うための、基礎的なテクニックについて検討を行った。
2) 発現解析については予定曝露薬物のうち、約半分の発現実験を終了した。18年度中に終了予定で有る。
3) 腎細胞とリンパ球では基礎となる薬物曝露前の遺伝子発現が異なる。薬物曝露後に変動する遺伝子の共通性は低い。

公開日・更新日

公開日
2006-04-03
更新日
-