保険薬局における調剤録の今後のあり方に関する調査研究

文献情報

文献番号
199700020A
報告書区分
総括
研究課題名
保険薬局における調剤録の今後のあり方に関する調査研究
課題番号
-
研究年度
平成9(1997)年度
研究代表者(所属機関)
秋葉 保次(社団法人日本薬剤師会)
研究分担者(所属機関)
研究区分
厚生科学研究費補助金 行政政策研究分野 厚生行政科学研究事業
研究開始年度
平成9(1997)年度
研究終了予定年度
-
研究費
1,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
保険薬局が、保険調剤を行った際に記録することが義務づけられている調剤録について、規制緩和推進3カ年計画で電子媒体による保存を認める方向で措置するよう指摘されていることを踏まえ、現行の薬剤師法・健康保険法(以下、「健保法」という。)等関係法令の規定との整合性を勘案しながら、調剤録の保存を電子媒体化する場合の法律上の問題点、技術的基準等に関する検討をする必要がある。
調剤録は、調剤済みとなった処方せんに調剤録への必要事項を記入した場合は処方せんをもってかえることができるとされていることから、多くが紙を媒体とする処方せんにより保存しているという実態を踏まえ調剤録の電子媒体による保存方法について検討を行った。
一方で、患者の有効で安全な医薬品使用を確保する上で、薬剤師による薬剤服用歴の活用が重要な役割を担っている。しかしながら、調剤録に記載する内容と薬剤服用歴の記録に基づく保険調剤での薬剤服用歴管理指導料の要件には重複する事項も多く、調剤録と薬剤服用歴の記録における記載事項、保存方法の検討が課題としてある。
これらを踏まえ、保険薬局における調剤業務の充実と効率化のため、調剤録を単に記録として保存するだけではなく、薬剤服用歴の記録とも関連させて電子媒体化を図り活用することが有用となる。情報の公開・提供が進むなか、電子媒体を利用した調剤業務が制度的にも円滑に遂行できるよう、条件整備を早急に行うことが求められていることから、調剤録の記録・保存方法等電子媒体の利用について調査検討した。
研究方法
保険薬局が保険調剤を行った際に備える調剤録と処方せんに関し、調剤録の電子媒体による保存方法を中心に今後の調剤録のあり方に対する検討の基礎資料を得るため?調剤録及び薬剤服用歴の記録の記入・保管管理・利用の状況に関する実態と問題点の調査、?現行の薬剤師法・健保法等関係法令の規定に準拠し、調剤録の保存を電子媒体化する場合の法律上の問題点、技術的基準等に関する検討を行った。
調剤録の記載、保存方法に関する調査については、保険調剤を行っている全国の保険薬局から無作為抽出した1,000薬局を客体に、調剤録の記載・保存方法、電算機器の設置・活用状況、薬剤服用歴の記録・保管方法等について調査を行った。
医薬品の使用動向や処方及び調剤を記録した薬歴等システム的に管理している状況について、諸外国の情報も入手し、検討のための参考にした。
結果と考察
保険薬局は、保険調剤を行った際に遅滞なく当該調剤に関する事項を調剤録に記録することが義務づけられている。この場合、調剤済みとなった処方せんに調剤録への必要事項を記載することにより調剤録にかえることができることから、調剤録と処方せんの記載及び保管管理に関する実態調査を行い、その結果を踏まえ調剤録を電子媒体により保存するための薬剤師法等関係法令及び技術的な面からの検討を行った。
保険薬局が、調剤録の記載及び保存に当たっては、調剤済みとなった処方せんに調剤録の必要記載事項を記入したものをもってかえられることから、媒体が紙である調剤録の保存方法については改ざんの恐れの無いことが担保されることを条件に、光ディスク等電子媒体による保存を認めることは可能であると考えられる。診療録に関する諸記録についても、マイクロフィルム、光ディスクにより保存することは、改ざんの恐れのないことを担保に医師法第24条の診療録の記載義務、保存義務違反とならないとする見解が示されている。
さらに、調剤録の電子媒体による保存の可能性については、調剤録が薬剤師による押印を要件としていないことから、電子媒体化に当たって法令上の阻害要因とはならない。調剤録の保存が義務づけられている目的のひとつとして、適切な請求がなされたことを事後的に確認することと解されるが、紙を媒体とする処方せんの保存を別途義務づけている以上改ざん等のセキュリティの面での問題は少ないと思われる。第三者の閲覧権の侵害に関しては、現在調剤録について第三者たる閲覧者として想定されるのは、保険指導・監査を行う公的立場にある者であることから、指導・監査の際に内容を打ち出すか又は画面上で確認できるので、閲覧権は担保できると解される。
結論
医薬分業の進展に伴い医薬品の適正使用の観点から保険薬局が実施している薬剤服用歴の記録について、その記載事項が調剤録と多くの部分で重複していることを踏まえ、調剤録と薬剤服用歴の記録との記載内容についても調査し、引き続き検討を行う必要がある。

公開日・更新日

公開日
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更新日
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研究報告書(紙媒体)