薬物の毒性発現を決める薬物動態・効果制御分子の推定と毒性回避を指向したスクリーニング系の開発

文献情報

文献番号
200500227A
報告書区分
総括
研究課題名
薬物の毒性発現を決める薬物動態・効果制御分子の推定と毒性回避を指向したスクリーニング系の開発
課題番号
H17-トキシコ-005
研究年度
平成17(2005)年度
研究代表者(所属機関)
杉山 雄一(東京大学大学院 薬学系研究科)
研究分担者(所属機関)
  • 家入 一郎(九州大学大学院 薬学研究院)
  • 徳永 勝士(東京大学大学院 医学系研究科)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 厚生科学基盤研究分野 萌芽的先端医療技術推進研究【トキシコゲノミクス分野】
研究開始年度
平成17(2005)年度
研究終了予定年度
平成19(2007)年度
研究費
49,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
薬物の効果の個人差や副作用を引き起こすヒトの遺伝的要因について、遺伝子ノックアウト動物や遺伝子発現細胞などを用いて、薬物動態・薬効・副作用に関係する分子が毒性に与える影響を定量的に観察することで、毒性関連候補遺伝子を推測する。上記実験の結果に基づき、遺伝子多型との関連を探る臨床研究を行い、さらに候補SNPsを迅速に診断できるチップの開発を行うことで、臨床医療に成果を還元できるよう検証実験を行う。
研究方法
トランスポーターの寄与率の検討については、肝取り込みは、OATP1B1, OATP1B3発現系ならびにヒト凍結肝細胞における物質の取り込みを比較することで求めた。また胆汁排泄は、遺伝子欠損動物ならびに取り込み・排泄トランスポーター共発現細胞を用いて行った。胆汁うっ滞の検討は、発現系での阻害能の検討並びに、ratにおける血清胆汁酸の上昇の測定により行った。また、健常人男性にstatinを投与後の血中濃度、コレステロール低下効果を観察し、複数の遺伝子変異との関連を調べた。SNP迅速判定法の開発は、DigiTag法を用いて、28種類の同時タイピングを40検体について行った。
結果と考察
複数の薬物に対してトランスポーターの寄与率の検討を試みたところ、同効薬で類似の動態特性を示すにも関わらず、個々の寄与が異なる事例が明らかとなり、動物実験と共発現系の結果の相違から、寄与率には種差が認められることが示唆された。一方、胆汁うっ滞の検討では、ratにtroglitazone投与後、硫酸抱合体が肝臓内に蓄積し、胆汁酸トランスポーターを十分阻害しうる濃度に達することが分かった。さらにBSEPのPPARgamma agonistの阻害能力は、ヒトのほうがラットより強いことが分かった。臨床研究では、OATP1B1, BCRP両方の遺伝子変異がpitavastatinの薬物動態に影響しうること、pravastatinの短期の効果には、OATP1B1の変異が影響するが長期では影響せず、効果に関わる分子の変異が関与することが明らかとなった。さらに、SNPタイピングでは、27SNPsのうち24SNPsでタイピングに成功した。
結論
個々のトランスポーターの寄与の違いが、トランスポーター機能変動による薬物動態の個人差、ひいては薬効・副作用の個人差を生み出すことを明らかにした。さらに胆汁うっ滞の副作用は、一部胆汁酸トランスポーターのin vitro阻害実験から予測可能なことが示唆された。Statinの薬物動態・効果に影響を与えるSNPsを同定した。さらに、迅速なSNPタイピング法を構築できた。

公開日・更新日

公開日
2006-04-18
更新日
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