新規γ・β線核種によるがん診断・治療の開発研究

文献情報

文献番号
200500224A
報告書区分
総括
研究課題名
新規γ・β線核種によるがん診断・治療の開発研究
課題番号
H17-ナノ-016
研究年度
平成17(2005)年度
研究代表者(所属機関)
藤林 康久(福井大学高エネルギー医学研究センター)
研究分担者(所属機関)
  • 徳永 雄次(福井大学工学部)
  • 古川 高子(福井大学高エネルギー医学研究センター)
  • 森 哲也(福井大学高エネルギー医学研究センター)
  • 米倉 義晴(福井大学高エネルギー医学研究センター)
  • 岡沢 秀彦(福井大学高エネルギー医学研究センター)
  • 富樫 かおり(京都大学医学研究科)
  • 谷森 達(京都大学理学研究科)
  • 窪 秀利(京都大学理学研究科)
  • 身内 賢太朗(京都大学理学研究科)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 厚生科学基盤研究分野 萌芽的先端医療技術推進研究【ナノメディシン分野】
研究開始年度
平成17(2005)年度
研究終了予定年度
平成19(2007)年度
研究費
22,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
本研究では,FDG-PETの保険適用により本邦に急速に普及しつつある超小型サイクロトロンを利用し,各病院・センターで実施可能な種々の放射性核種(RI)の製造技術を確立するとともに,それらを用いた新規な概念に基づくがん親和性薬剤の設計開発を行う。これにより,新しいがんの高感度診断法を確立するとともに,非侵襲的かつ最適化されたがん治療技術へと展開していく。
研究方法
超小型サイクロトロンと固体ターゲットシステムを用いた放射性Cuの製造技術の改良を行った。これまでの研究において放射性Cu標識薬剤Cu-ATSMによるがんイメージングと治療の可能性を明らかにしてきたが,特に腫瘍組織内に質的に異なる形質を持つがん細胞が混在していること,申請者らが開発したCu-ATSMがそれらを識別できることを明らかにした。また分子設計システムを本研究費により導入し,RDG配列をリードとする新規ペプチド型および非ペプチド型分子の設計を開始した。
 これらと並行して、がんへの移行性を有する放射性薬剤について、診断的見地からの臨床検討を行うための薬剤製造技術の確立ならびにそれらを用いた臨床検討を行い、診断から治療への展開の可能性を基礎的に考察した。
結果と考察
超小型サイクロトロンを用いて、がん内部放射線照射治療に適した放射性同位元素の製造が可能であることを明らかにした。
がん細胞に対して特異的に結合する薬剤として、RGDペプチドならびにその誘導体について構造計算による分子設計を行い、非ペプチド性分子プローブ設計に必要な知見を得ることができた。
低酸素がん集積性を持つCu-ATSMを高度に集積するがん組織は、血管誘導が未だ行われず低酸素環境にありながら、増殖を停止することで安定に生存しているがん細胞からなることが明らかとなった。このような部位は抗がん剤、放射線照射のいずれに対しても抵抗性を有することが考えられ、質的な治療方針の決定に重要な情報であることが示された。
F-18標識エストラジオール(FES)の合成法ならびにその臨床検討を行った。FESを用いた婦人科腫瘍診断において、近年増加傾向にある子宮筋腫と肉腫との鑑別診断に非常に有用な指標となることが示された。また、融合画像による婦人科腫瘍診断が治療方針の決定に重要であることを、明らかにできた。
結論
放射性同位元素の製造、その利用から検出技術の開発にいたる、一連の研究体制が構築され、有機的に連携できることが示された。次年度は、さらに具体的目標を設定し研究を推進する。

公開日・更新日

公開日
2006-04-12
更新日
-