がん特異的増殖機能を有するウイルス製剤と高感度GFP蛍光検出装置を用いた体外超早期がん診断および体内微小リンパ節転移診断システムに関する研究

文献情報

文献番号
200500222A
報告書区分
総括
研究課題名
がん特異的増殖機能を有するウイルス製剤と高感度GFP蛍光検出装置を用いた体外超早期がん診断および体内微小リンパ節転移診断システムに関する研究
課題番号
H17-ナノ-014
研究年度
平成17(2005)年度
研究代表者(所属機関)
藤原 俊義(岡山大学医学部・歯学部附属病院 遺伝子・細胞治療センター)
研究分担者(所属機関)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 厚生科学基盤研究分野 萌芽的先端医療技術推進研究【ナノメディシン分野】
研究開始年度
平成17(2005)年度
研究終了予定年度
平成19(2007)年度
研究費
24,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
本研究では、テロメラーゼ活性(hTERT遺伝子発現)依存性にがん細胞で選択的に増殖し、オワンクラゲ由来の蛍光遺伝子GFP (Green Fluorescence Protein)を発現する改変アデノウイルス製剤 Telomelysin-GFP (OBP-401)を標識薬剤とし、がん患者末梢血中に流れる浮遊がん細胞を高率に再現性をもって、かつ定量的に検出する体外的超早期がん診断システムを開発することを目的とする。また、外科手術前にOBP-401を腫瘍内に投与してリンパ流に乗せ、ペンプローブ型の高感度GFP蛍光検出装置を用いることで、微小リンパ節転移を手術中にリアルタイムに検出して切除範囲を同定する外科手術ナビゲーション・システムとしての有効性も検討する。
研究方法
1)血中浮遊癌細胞の検出感度、再現性の検討
健常人から提供された末梢血5mlに、各種ヒト培養癌細胞を段階的に希釈して浮遊させ、一定量のOBP-401ウイルスと24時間混合培養する。回収した細胞をPBSに浮遊させ、スライドガラス上で蛍光顕微鏡下に陽性細胞を確認、カウントする。

2)マウス同所性直腸癌モデルにおける微小転移リンパ節検出の検討
ヒト大腸癌細胞株をヌードマウスの直腸に移植して約4-6週間置くと、傍大動脈リンパ節に高率に転移が発生する。この大腸癌リンパ節転移モデルを用いて、OBP-401を直腸腫瘍内に投与し、開腹して転移リンパ節のGFP蛍光陽性率を観察する。
結果と考察
1)末梢血中の浮遊がん細胞の検出
健常人の末梢血に各種ヒト培養がん細胞(肺癌、乳癌、大腸癌、etc)を混じ、一定量のOBP-401ウイルス製剤を加えて24時間後に蛍光顕微鏡下に観察したところ、10-100個のがん細胞を加えたもので50-70%のがん細胞の蛍光を検出することが可能であった。

2)マウスモデルにおける微小リンパ節転移の検出
OBP-401ウイルス製剤を直腸腫瘍に直接投与し、5日後に開腹したところ、GFP陽性リンパ節では高頻度に微小転移が検出された。感度は、sensitivity 92.3%、specificity 86.6%であり、1 mm以下の微小転移巣を蛍光spotとして同定することが可能であった。
結論
テロメラーゼ活性依存性に癌細胞で選択的に増殖して蛍光遺伝子GFPを発現する改変アデノウイルス製剤OBP-401は、標識薬剤として末梢血中の浮遊癌細胞を高率に検出する体外的超早期癌診断システムおよび微小リンパ節転移検出外科手術ナビゲーション・システムに応用可能である。

公開日・更新日

公開日
2006-04-10
更新日
-