ナノ無機・有機複合塩を用いた遺伝子送達システムの開発

文献情報

文献番号
200500218A
報告書区分
総括
研究課題名
ナノ無機・有機複合塩を用いた遺伝子送達システムの開発
課題番号
H17-ナノ-008
研究年度
平成17(2005)年度
研究代表者(所属機関)
木村 剛(東京医科歯科大学 生体材料工学研究所)
研究分担者(所属機関)
  • 古薗 勉(国立循環器病センター研究所 先進医工学センター)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 厚生科学基盤研究分野 萌芽的先端医療技術推進研究【ナノメディシン分野】
研究開始年度
平成17(2005)年度
研究終了予定年度
平成19(2007)年度
研究費
5,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
ナノメディシン研究領域における遺伝子送達システムの開発の必要性は高く、低い細胞傷害性、高い遺伝子導入効率を兼ね備える遺伝子ベクターの創製が望まれている。本研究事業では、超高圧技術を用いて非電荷の水素結合性高分子と遺伝子との複合体を誘起し、pH応答性ナノ無機粒子を付与した「ナノ無機粒子/水素結合性高分子/遺伝子複合体」の創出により、低毒性、高遺伝子発現効率なナノ無機・有機複合型遺伝子ベクターの開発を目的とした。
研究方法
pH応答性ナノ無機粒子の創製を目的とし、異なる酸溶解性を示すナノスケールのハイドロキシアパタイト(ナノHAp)の調製を検討した。超高圧印加による合成高分子、タンパク質、多糖などの様々な水素結合性高分子と遺伝子との複合体形成について詳細に検討した。さらに、得られた知見をもとにナノHAp/高分子/遺伝子複合体を調製し、培養細胞への遺伝子導入を行い、細胞傷害性、遺伝子発現効率について検討した。
結果と考察
改良型マイクロエマルジョン法の仮焼行程の温度、時間を調節することで、サイズ、形態、結晶化度が制御されたナノHApを得た。合成高分子であるポリビニルアルコール(PVA)、ポリエチレングリコール、多糖であるデキストラン、タンパク質のヒトイムノグロブリンとDNAと混合液への超高圧印加により、水素結合を介在する複合体を得た。さらに、ナノHApを内包するナノHAp/PVA/DNA複合体の粒子が確認され、ナノ無機・有機複合型遺伝子ベクターの形成に成功した。複合体は、核酸分解酵素耐性を有し、無細胞系転写・翻訳システムでの転写・翻訳活性が示された。複合体を用いた細胞へのin vitro遺伝子導入では、細胞傷害性は示されず、また、細胞内取り込みと遺伝子発現の改善が示された。しかしながら、市販の遺伝子導入剤に比して遺伝子発現効率が低く、今後、効率の向上を主眼にナノ無機・有機複合型遺伝子ベクターの最適化の検討を要する。
結論
超高圧印加法による無機、有機ハイブリッド型遺伝子ベクターの創出について検討した。水素結合を介したナノHAp/水素結合性高分子/DNA複合体が得られ、細胞内送達が達成された。低毒性、高遺伝子導入効率な遺伝子ベクターとしての可能性が示唆された。

公開日・更新日

公開日
2006-04-07
更新日
-