マイクロロボティクスを応用したナノテク心筋の開発

文献情報

文献番号
200500216A
報告書区分
総括
研究課題名
マイクロロボティクスを応用したナノテク心筋の開発
課題番号
H17-ナノ-009
研究年度
平成17(2005)年度
研究代表者(所属機関)
白石 泰之(東北大学加齢医学研究所)
研究分担者(所属機関)
  • 山家 智之(東北大学加齢医学研究所)
  • 西條 芳文(東北大学加齢医学研究所)
  • 梅津 光生(早稲田大学理工学術院)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 厚生科学基盤研究分野 萌芽的先端医療技術推進研究【ナノメディシン分野】
研究開始年度
平成17(2005)年度
研究終了予定年度
平成19(2007)年度
研究費
5,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
本研究は、ナノテク形状記憶合金繊維を応用して、心筋の機能を補助する完全埋込型の心室補助装置を開発することを目的とする。心不全に対する補助循環の治療メタコンセプトは、低下した心臓ポンプ機能の心筋収縮をサポートすることによって達成されると考え、高度に生体と協働する機能をもった人工心筋システムの開発をすすめた。
研究方法
マイクロロボティクス制御技術を応用し、ナノ結晶マトリクス構造を有する微細径形状記憶合金繊維を用いて新しい機械式心筋の開発を進めた。平成17年度は、100マイクロメートル程度の直径を有する形状記憶合金の組み合わせによって実現できる心室補助装置の開発にとくに重点をおき、プロトタイプモデルの作成と、動物実験による血行力学的効果の基礎検討を行った。
結果と考察
①ロボティクスを応用した基本設計の提案 
 形状記憶合金繊維をアクチュエータ要素とした人工心筋を設計、試作した。共有結合性ナノ構造を有する形状記憶合金繊維は、高い電気的安定性を有し、従来困難と考えられてきた力学的な高精度変位制御を可能とした。
②定常流循環補助での血流拍動の有効性、心室内血栓形成の抑制効果を検証
 健常性山羊を用いた動物実験で、定常流型血液ポンプを用いた心室-大動脈送血補助循環モデルを作成し、超音波心エコー診断によって生体心臓拍動の効果が得られることを示した。定常流型ポンプの臨床試験が始まり、循環補助下においても心拍動の必要性が明らかとなれば、心室収縮を人工心筋で力学的に補助することも有効であると考えられた。
③動物実験による基礎的性能評価
 人工心筋を健常性山羊心臓心膜内に装着し、循環量約2.5L/minの心拍出量下においても左心室収縮期圧および大動脈圧の上昇が観察され、人工心筋駆動による拍動補助の基礎的な有効性が確かめられつつある。
また、心室壁挙動を新しい三次元的画像解析手法によって定量化するバイオロボティクス手法の開発を試み、動物実験によりその手法の有効性が確かめられた。
結論
微細形状記憶合金による人工心筋の臨床的知見に基づいた構造設計と試作を行い、有効な血行力学的支援システムの具現化(駆動部重量:15g)が達成された。これらの成果から、ナノテクを応用した生体制御システム、生体機能の定量モデル化、人工心臓・補助循環装置への応用のための基盤技術となるだけでなく、心不全患者の社会復帰支援システムとなりうることが期待できる。

公開日・更新日

公開日
2006-04-10
更新日
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