核酸をコアとするナノ微粒子による薬物・免疫治療システムの開発

文献情報

文献番号
200500206A
報告書区分
総括
研究課題名
核酸をコアとするナノ微粒子による薬物・免疫治療システムの開発
課題番号
H17-ナノ-011
研究年度
平成17(2005)年度
研究代表者(所属機関)
西川 元也(京都大学大学院 薬学研究科)
研究分担者(所属機関)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 厚生科学基盤研究分野 萌芽的先端医療技術推進研究【ナノメディシン分野】
研究開始年度
平成17(2005)年度
研究終了予定年度
平成19(2007)年度
研究費
5,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
プラスミドDNA(pDNA)をコアとするナノ粒子、およびナノサイズのデンドリマー様DNAを設計・構築し、これに免疫賦活型CpGモチーフを組み込むとともにドキソルビシンをインターカレートすることで、免疫機能の活性化と抗癌剤による殺細胞効果というメカニズムの異なる2つの戦略を融合した新規癌治療システムの開発を試みる。
研究方法
CpGモチーフを含有するDNAとしてルシフェラーゼ発現pDNAおよび26塩基からなる1本鎖CpG DNAを用いた。また、CpGモチーフを組み込んだY型DNA(Y-CpG DNA)を新たに開発した。B16-BL6/Lucおよびcolon26/Lucを移植した腹膜播種モデルマウスに対し、CpG DNAを単独またはDOTMA/Cholリポソーム複合体として投与することで腹膜播種抑制効果を判定した。別途、TNF-αを指標にDNA添加による免疫細胞の活性化を評価した。
結果と考察
CpG DNA複合体投与後のマウス腹腔中TNF-α、IL-12濃度は、ランダムDNA複合体投与群と比較して有意に高かった。そこで、担癌マウスを用いて抗腫瘍効果を評価したところ、CpG DNA複合体の投与により腹腔内臓器における癌細胞数が対照群の約0.1%にまで減少し、これに伴って生存日数も著明に延長した。この長期生存マウスに癌細胞を再移植したところ、多くのマウスが癌細胞を拒絶した。以上の結果から、複合体投与により一旦癌細胞の増殖が抑制されたマウスでは全身的な癌免疫が誘導されており、再移植した同種の癌細胞は免疫反応により拒絶されたものと推察された。一方、Y-CpG DNAをRAW264.7に添加することにより、同じ配列からなる2本鎖CpG DNAよりも有意に高いレベルのTNF-αが産生され、CpG DNAをY型構造にすることでその免疫活性化能が増強可能であることが示された。今後その詳細な機構を解明するとともに、ボトムアップ型DNAナノ粒子の設計・開発を進める。
結論
CpGモチーフを含むDNAを用いることでTNF-αやIL-12などのTh-1型サイトカインを誘導可能であり、特にカチオン性リポソームとの複合体とすることで高い抗腫瘍免疫効果を得た。またDNA立体構造に関する検討においては、CpG DNAをY型とすることで免疫活性化能が増大することを見出した。

公開日・更新日

公開日
2006-04-07
更新日
-