文献情報
文献番号
200500205A
報告書区分
総括
研究課題名
細胞結合性配列を用いた易吸収性ペプチド製剤の設計
課題番号
H16-ナノ-010
研究年度
平成17(2005)年度
研究代表者(所属機関)
矢野 明(財団法人 岩手生物工学研究センター 安全性評価研究部)
研究分担者(所属機関)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 厚生科学基盤研究分野 萌芽的先端医療技術推進研究【ナノメディシン分野】
研究開始年度
平成16(2004)年度
研究終了予定年度
平成17(2005)年度
研究費
4,835,000円
研究者交替、所属機関変更
-
研究報告書(概要版)
研究目的
近年、ガン細胞のみを攻撃させるペプチドガンワクチン等の開発が行われているが、ワクチンとして用いるためにはペプチドは抗原性が弱いという致命的な欠陥がある。本研究ではペプチド製剤そのものに生体組織への親和性、選択性を持たせ、ペプチドの免疫原性を高めることを目的とする。まず細胞結合配列を用い、その抗原性を増強する基本設計法の検証を進め、様々なペプチドに対して抗体誘導を可能にする手法の研究を行う。またペプチドの局所動態に関して細胞生物学的な知見を得、さらに化学合成効率が悪い40アミノ酸残基長のペプチドを生物学的に製造する方法に関して、低分子タンパク質の発現をモデル系として若干の検討を行う。
研究方法
N末端側から細胞結合配列の代表であるアルギニン、グリシン、アスパラギン酸(RGD)、MHC-II分子によって提示されT細胞に認識されるT細胞エピトープ配列(T epitope)、細胞内の消化小包で切断を受けると考えられるリジンリンカー(KK)、抗体を誘導するための任意のアミノ酸配列(B epitope)、すなわち「RGD-T epitope-KK-B epitope」という配列のペプチドを設計、合成し、マウスの免疫実験にて効果を検証する。研究の実用化を意識し、アルツハイマー病の治療、予防につながるペプチドワクチンの設計を行う。ペプチドの生物学的な生産法に関して、過去に実績のある植物培養細胞を用いた抗体生産系を軸に、モデルタンパク質としてFab等の生産を行う。
結果と考察
基本設計を使いアルツハイマー病に効果があると報告されているアミロイドβペプチドに対する抗体の誘導を試みた。抗体誘導能を高めるため3種混合ワクチン等に含まれるジフテリアトキソイド由来エピトープ等をT細胞エピトープとして用い免疫実験を行った。ペプチド投与2週間前に市販のジフテリア破傷風2種混合ワクチンを接種しておくことで、抗Ab抗体誘導が顕著に増強された。ペプチド生産系のモデルとしてFabのタバコ培養細胞による生産を細胞外へ分泌させることによって効率の良い生産が期待できることが明らかになった。
結論
細胞結合配列を用いたペプチド設計法を用いて抗アミロイドβペプチドに対する抗体を誘導することに成功した。これはヒトへの応用が可能だと考えられ、安価で効果の高いアルツハイマー病治療及び予防薬の開発に役立つと考えられる。
公開日・更新日
公開日
2006-04-07
更新日
-