間葉系幹細胞に由来するヒト肝細胞の移植に関する基盤開発研究

文献情報

文献番号
200500191A
報告書区分
総括
研究課題名
間葉系幹細胞に由来するヒト肝細胞の移植に関する基盤開発研究
課題番号
H17-再生-018
研究年度
平成17(2005)年度
研究代表者(所属機関)
落谷 孝広(国立がんセンター研究所・がん転移研究室)
研究分担者(所属機関)
  • 畑田 出穂(群馬大学・遺伝子解析施設)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 厚生科学基盤研究分野 ヒトゲノム・再生医療等研究【再生医療研究】
研究開始年度
平成17(2005)年度
研究終了予定年度
平成19(2007)年度
研究費
22,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
臓器移植に頼らず欠損した各臓器の機能を再生する方法として、胚性幹細胞(ES細)や間葉系幹細胞、それに組織幹細胞等のステム細胞をベースにした方法が注目されている。我々は独自に開発したサイトカインの組み合わせによる刺激から、骨髄組織由来の間葉系幹細胞からヒト肝細胞を誘導する系を開発した。本研究ではこのヒト肝細胞に関して、1)肝特異的遺伝子群の網羅的発現解析、2)肝不全動物への移植による肝機能回復能力の検証、3)発がん性の有無やメチル化の状態などの安全性に関する検討、に重点を置き、間葉系幹細胞由来ヒト肝細胞による新たな移植治療開発の基盤研究を行う。

研究方法
骨髄由来ヒト間葉系幹細胞から得られたヒト肝細胞の臨床応用に向けた基盤研究を、以下の項目に沿って行う。初年度は、(1)分化誘導したヒト肝細胞が肝細胞としての条件を満たしているかどうかを、DNAチップによる網羅的な遺伝子発現解析の観点から検証する。(2)間葉系由来のヒト肝細胞を移植医療に用いる場合の安全性に関して、初年度は小型動物への移植実験を行い、宿主の肝臓への生着の有無や、毒性が生ずるかどうかの観点を検討した。(3)分化誘導した肝細胞の分化度の評価をや、癌化につながるリスクの評価もおこなうための方法としてマイクロアレイを用いたDNAのメチル化を網羅的に行うシステムの準備を行った。
結果と考察
間葉系幹細胞から分化させたヒト肝細胞の形態観察,主要な肝臓特異的遺伝子の発現、アルブミン産生や糖代謝などの基礎的な解析を終了した。さらに初年度の重要な研究成果として、SCIDマウスに移植したヒト肝細胞は宿主の肝臓に無事生着し、周囲の肝組織に順化し、短期間での毒性等の問題は、移植マウスには生じなかった。また、メチル化の問題に関しては、MIAMI法というメチル化を網羅的に解析する独自のシステムの開発につとめ,その方法を完成するとともに,DNAの回収方法や主要な肝臓特異的遺伝子のメチル化の基礎検討を終了している。
結論
初年度の研究で,ステム細胞から分化したヒト肝細胞の形態観察,主要な肝特異的遺伝子の発現、アルブミン産生や糖代謝などの基礎的な情報の収集に成功し,ヒト肝細胞として多くの条件を満たしていた。さらに本研究の最重要課題である,移植細胞としての適合性の問題に関して,まずSCIDマウスへの細胞移植により、この細胞は宿主の肝臓組織へ問題なく組み込まれ、移植細胞として有用であることが推測できた。これらは当初の計画を十分に達成した成果である。またこの分化細胞の安全性を検討する一つの方法として,遺伝子のメチル化の状態を網羅的に検討する方法の整備も完了した。

公開日・更新日

公開日
2006-07-20
更新日
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研究報告書(紙媒体)

公開日・更新日

公開日
2006-09-27
更新日
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