准看護婦の看護婦への移行に関するカリキュラム開発

文献情報

文献番号
199700016A
報告書区分
総括
研究課題名
准看護婦の看護婦への移行に関するカリキュラム開発
課題番号
-
研究年度
平成9(1997)年度
研究代表者(所属機関)
田村 やよひ(看護研修研究センター)
研究分担者(所属機関)
  • 高橋弘子
  • 石渕夏子
  • 阿部泰子
  • 若松順子
  • 菅原文子
  • 和賀徳子
  • 林幸子
  • 関育子
  • 坪倉繁美(以上9名看護研修研究センター)
研究区分
厚生科学研究費補助金 行政政策研究分野 厚生行政科学研究事業
研究開始年度
平成9(1997)年度
研究終了予定年度
-
研究費
1,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
1)准看護婦と2年課程実践カリキュラムの現状および問題の明確化 2)移行教育に必要な教育内容の抽出 3)カリキュラム運用に必要な準備作業の検討
研究方法
研究目的1)調査対象:看護婦養成所2年課程(以下2年課程という)9校の教員9名、病院22施設の病院看護管理者22名、計31名 調査期間:平成9年5月26日~6月21日、調査方法:聞き取り調査、電話で調査協力の了解が得られた対象に対し、調査内容を記述した文書で再度依頼した後、電話で聞き取り調査を行なった。対象の抽出にあたっては本音を聞かせてもらうために、コンタクトのとりやすい当センターの卒業生である教員や看護部長を中心に協力を依頼した。病院は2年課程の卒業生が比較的多く就業している病院をできるだけ広い地域から選んだ。聞き取った内容を意味毎に分類し問題を明確化した。研究目的2)研究期間:平成9年4月~平成10年3月 研究方法:先の調査をふまえて、移行教育で強化すべき内容抽出を行い研究者間で検討を行った。3年課程カリキュラムの専門領域に限定して科目構成を行った。内容構成は?移行教育における各看護学の基本的な考え方、?各看護学における移行教育の目標、?各看護学における移行教育の内容とした。 研究目的3)研究期間:平成9年4月~平成10年3月 研究方法:准看護婦問題調査検討会報告を始めとする文献検討及び先の調査による准看護婦および2年課程学生、卒業生の実態をふまえて移行教育の展開に必要となる点を検討した。
結果と考察
結果:1)2年課程学生と2年課程卒業生の現状として、養成所の教員(以下教員という)が2年課程学生(以下学生という)がすぐれていると思っている点は(1)患者との関係づくりが上手である、(2)診療補助技術は手早くできる、(3)目的意識が強いなどであった。病院看護管理者が2年課程卒業生(以下卒業生という)がすぐれていると思っている点は(1)患者の対応に慣れている、(2)慣れている技術はうまく、即戦力になる、(3)向学心があり努力するなどがあった。弱いと思われる点は学生については(1)看護過程の展開ができない、(2)看護技術は勤務施設の現状を反映し個人差が大きい、(3)解剖生理・病態生理・薬理の理解が弱い、(4)書くことが苦手、(5)自分で調べようとしない等があった。卒業生については(1)看護がわかっていない、(2)看護過程の展開ができない、(3)ものの見方・考え方が浅い、(4)指示どおりに動くことが多く、伸びない、(5)知識不足で根拠づけができない、(6)リーダーシップ力・指導力が不足等があった。また教員、病院看護管理者の両者から、個人差が大きく一概には言えないという意見もあった。2)移行教育の教育内容と方法に対する期待について、教員からは教育内容として(1)人間の理解に関する内容、(2)看護技術に関する内容、(3)看護過程に関する内容(4)学習する姿勢を養う内容等があった。教育方法に関しては(1)成長体験が味わえる学習、(2)判断過程を丁寧に学習できるようにする、(3)既習学習を活かした教育方法等があった。病院看護管理者からは教育内容として(1)医学的知識に関する内容、(2)対象理解に関する内容、(3)物事の考え方に関する内容、(5)リーダーシップ力等があり、方法については、(1)適切な看護がなされている臨床で、(2)難しい理論よりも看護がわかる教材を用いる、(3)過去を否定しない教育の展開を、等があった。 3)2年課程で強化している内容は 人間を深くとらえさせたいというねらいで、基礎科目として生物学、文化人類学、宗教学、情報科学等を設定している。専門基礎科目では解剖生理学、病理学で身体の仕組みと疾病の関連、疾病の成り立ちと回復に力を
入れて指導している。専門科目では基礎看護学、臨床看護総論、および各看護学で専門職としての看護、看護過程の展開、健康障害をもつ対象に応じた看護の重要性を理解させるに力をいれているということであった。 4)病院の看護管理者が2年課程卒業生に配慮していることは以下であるが、職場配置では外来や手術室等、診療の補助業務が多いところに配置している。採用試験に合格しないことが多く採用は少なくなってきている。卒後研修では学習に対する刺激を与えたいとの意図で病院外の研修に参加するように働きかけている等があった。2)移行教育における教育内容の抽出は看護専門領域として基礎看護学、在宅看護論、成人看護学、老年看護学、小児看護学、母性看護学、精神看護学の7領域で内容抽出した。構成は(1)移行教育における各看護学の基本的な考え方、(2)各看護学における移行教育の目標、(3)各看護学における移行教育の内容とした。各看護学の教育内容は、対象の理解、看護の方法、事例学習である。3)移行教育に対する提言:准看護婦が看護婦に移行するにあたっての最大の課題は、従来指示を受けて行っていたことを、自らの判断で行うようにするという、思考の180度の転回である。この課題を達成するには?看護の根拠となる知識に重点をおいた内容を思考訓練ができるように学習方法に変化をつける?マルチメディア技術を活用することは必須であるが、双方向のコミュニケーションが成立する学習形態も欠くことができない?学習者が自らの能力に応じた学習計画が立てられるような柔軟なカリキュラムとする必要がある。考察:現在、准看護婦として就業している40万人の人たちに新しい看護婦への道を示すのは行政にとって緊急の課題である。効果的な学習の展開のためには学習者の背景を知り、教育内容の精選、多様な教育方法を実践可能なレベルで提示する必要があると考える。2年課程の教員は准看護婦の教育を受けてきた学生に対して新たな教育を付加することの難しさを語っている。2年課程卒業生に対する看護管理者の意見も教員と同じようなものであった。すなわち、2年課程で強化しているにもかかわらず、卒業生をみると同じような弱いところがあるのは積み上げ式教育の難しさが考えられる。「診療の補助はできるが看護の本質がわかっていない」や「行為はできるが根拠がわかっていない」「ものの見方、考え方が浅い」等の指摘は救命や安全性の確保という医療の基本的な使命の遂行を脅かすばかりでなく、人権の尊重や生活の質の保証等、より高次のニーズに対応することは期待できないことを示す。これらの指摘は超高齢社会、疾病構造の変化、医療の高度化に伴う高いレベルの看護を提供するために克服しなければならない重要な課題である。そこで、教育内容としては看護の対象に対する理解と看護の方法に関するものを事例学習を中心にして知識を深められるように抽出した。今までの体験を振り返りながら帰納的に学ぶことが効果的と考えたからである。准看護婦の中でも学習意欲の高い人たちがこの移行教育の対象になると考えられるので、今までの看護体験についての理解を深めながら学習が進められれば移行教育の目標が達成できると考える。さらに内容抽出にあたっては従来の医学モデル中心の考え方をあらため、看護婦3年課程の現行カリキュラムの考えをとりいれ、対象である人間を統合体としてとらえられるような内容構成にした。教育方法は働きながら履修可能であること、個人の経験やレベルが考慮され、レディネスにあわせて学習する内容が選択できるようにすること、また学習形態も選択できるようにして学習が継続できるようにする等いくつかの条件を加味して移行教育が開始されねばならないと考えられる。提言という形でまとめてみたが移行教育は准看護婦全てを対象にするのか、期間を限定するのか等、検討課題が残されているので実践可能なカリキュラム開発のための課題に提示に中心をおいた。
結論
1、移行教育の教育内容について1)看護の視点で対象と関わることができるような教育内容とする。 2)自立して看護の提供ができるように、看護の判断に
必要な知識を精選したものを内容とする。2、移行教育の教育方法について1)就業しながら、自宅でも学習が可能になるようにマルチメディアを活用した通信教育とする。 2)学習者がレディネスにあわせて、履修計画がたてられるように柔軟性のあるカリキュラムにする。

公開日・更新日

公開日
-
更新日
-

研究報告書(紙媒体)