シアロムチンPCLP1による脈管内皮幹細胞の分離とその培養系を用いた血管/リンパ管の再生医療の基盤技術の確立

文献情報

文献番号
200500187A
報告書区分
総括
研究課題名
シアロムチンPCLP1による脈管内皮幹細胞の分離とその培養系を用いた血管/リンパ管の再生医療の基盤技術の確立
課題番号
H17-再生-005
研究年度
平成17(2005)年度
研究代表者(所属機関)
宮島 篤(東京大学分子細胞生物学研究所)
研究分担者(所属機関)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 厚生科学基盤研究分野 ヒトゲノム・再生医療等研究【再生医療研究】
研究開始年度
平成17(2005)年度
研究終了予定年度
平成19(2007)年度
研究費
20,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
脈管内皮細胞は、血液/リンパと組織の境界で細胞や物質の出入りを調節するなど重要な働きを持つ。脈管内皮系は、造血系との共通前駆細胞であるヘマンジオブラストから発生/分化するとされ、成体でも骨髄由来の内皮前駆細胞が血中に存在し造血系と密接な関連がある。造血系の増殖/分化機構は詳細に研究されているが、脈管内皮系は細胞の分離/培養が難しく不明な点が多い。我々はヘマンジオブラストの表面抗原PCLP1により未分化で増殖性の高い脈管内皮前駆細胞を分離し、未分化性を維持して増殖させる培養系を確立した。また高度に分化した洞様毛細血管内皮に発現するStabilin-2(Stab2)の抗体を作成し、肝臓類洞内皮細胞を分離した。本研究は、脈管内皮系の増殖/分化の機構を、起点となる脈管内皮前駆細胞と終点の一つである洞様毛細血管との両面から解明し、脈管再生医療の基盤を確立することを目標とする。
研究方法
マウス胎児肝臓は、成体骨髄に相当する造血系/内皮系細胞の供給源である。そこでマウス胎生14.5日(E14.5)肝臓からPCLP1発現細胞を分離し、フローサイトメトリー(FCM)およびRT-PCRで性状を解析し、増殖分化を培養系および移植実験で検討した。また、抗Stab2抗体により胎児および成体肝臓から類洞内皮細胞を分離し、その性状を検討した。
結果と考察
マウスE14.5肝臓でPCLP1を強発現するPCLP1high細胞は、FCM/RT-PCRの結果、血球および既知の血管内皮細胞の性質を持たなかったが、マウスへ移植すると多くの臓器で血管内皮細胞となった。OP9ストローマ細胞と共培養すると内皮細胞様コロニーを形成して増殖した。共培養で増幅したPCLP1high細胞を移植すると、培養前と同様に多くの臓器で血管内皮細胞となった。またVEGFの添加でStab2を含む血管内皮分化抗原の発現を誘導できた。以上より、PCLP1high細胞は未分化な脈管内皮系前駆細胞として細胞分化階層のなかで重要な位置にあると考えられる。一方、抗Stab2抗体で分離した胎児および成体肝臓の類洞内皮細胞はリンパ管内皮細胞マーカー遺伝子のLyve1を発現していたが、Podoplaninを発現していないことでリンパ管内皮と区別できた。構造的にリンパ管に近い肝類洞の内皮細胞は、表面抗原からもリンパ管内皮細胞に近い性状を持つことが示された。
結論
PCLP1 high細胞は未分化な脈管内皮前駆細胞を含む細胞集団であり、脈管内皮再生医療に有用な細胞材料と考えられる。

公開日・更新日

公開日
2006-07-20
更新日
-