感染リスクの排除、同一性の確保、免疫反応、がん化等の抑制及び培地等による有害作用の防止に関する研究

文献情報

文献番号
200500184A
報告書区分
総括
研究課題名
感染リスクの排除、同一性の確保、免疫反応、がん化等の抑制及び培地等による有害作用の防止に関する研究
課題番号
H17-再生-022
研究年度
平成17(2005)年度
研究代表者(所属機関)
土屋 利江(国立医薬品食品衛生研究所 療品部)
研究分担者(所属機関)
  • 澤田留美(国立医薬品食品衛生研究所 療品部 )
  • 配島 由二(国立医薬品食品衛生研究所 療品部 )
  • 加藤幸夫(広島大学)
  • 辻紘一郎(株式会社ツーセル)
  • 篠崎尚史(東京歯科大学市川総合病院角膜センター)
  • 澤 芳樹(大阪大学大学院医学系研究科外科学講座心臓血・呼吸器外科)
  • 高橋恒夫(東京大学医科学研究所)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 厚生科学基盤研究分野 ヒトゲノム・再生医療等研究【再生医療研究】
研究開始年度
平成17(2005)年度
研究終了予定年度
平成19(2007)年度
研究費
31,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
再生医療を広く臨床応用可能な医療に発展させるには、培養担体の感染リスクの排除、間葉系幹細胞の安全性、同一性の確保およびガン化、(アロにおける)免疫反応等の抑制といった様々な問題をクリアーする必要がある。本研究ではこれらの検査法、評価法の確立を目的とする。
研究方法
hMSCのヌードマウスへの細胞移植試験及び幹細胞と腫瘍細胞における遺伝子発現を比較検討する。三次元培養基材の微生物学的安全性の評価にHCPAが適しているか検討する。DNA microarray 及びReal time RT-PCRを用いて、hMSC選択的に発現するマーカー遺伝子を同定する。幹細胞の安全性評価の手順を決定し、それに従い各種病原体及びエンドトキシンの検査を実施する。SCPFGEによりヒト精子を材料としたDSB,SSB観察法を検討する。心臓移植適応患者から登録時と移植後のPRA値を測定し、他の臨床的パラメーターの関係を検討する。臍帯血由来単核球を培養し増幅された細胞の、骨・軟骨への分化能を検討する。
結果と考察
幹細胞を移植しても直ちに癌化する可能性は低く、幹細胞と腫瘍細胞との違いを示す指標の候補遺伝子の一つを明らかにした。HCPA は感度的にリムルス試験と大差が無い上、種々の発熱性物質を探知できる利点がある。各骨由来の間葉系幹細胞で共通マーカーと部位特異的マーカーが存在することが判明した。検査手順において時間的要件と検査試料量を考慮し、移植前に評価できる方法と移植後に評価する方法の組み合わせを決定した。SCPFGEを指標としたDNA断片化精子の分画・除去後分離された運動精子のDNA 損傷比率は1%以下に低下した。同種細胞移植の安全かつ効果的な試行には、アロ免疫応答のモニタリングと制御が必要となる事が示唆された。臍帯血由来間葉系細胞の採取の最適条件を得、骨・軟骨細胞へ分化しうる細胞の存在を明らかにした。
結論
移植後幹細胞が直ちに癌化する可能性は低く、示した遺伝子は幹細胞癌化の危険性評価の指標の候補になりうる。HCPAは、三次元培養基材をヒトに適用した際の生体反応を予測する方法として有益。間葉系幹細胞のマーカーは移植用細胞の品質検査に役立つ。自家間葉系幹細胞移植の際の各検査の時期と方法を検討し病原体の否定試験等の手順を決定。ヒト精子のDNA損傷は多様であり、構造正常性、遺伝子など多面的な解析が必要。重症心不全に対する同種移植治療では、綿密なアロ免疫応答モニタリングと巧妙な拒絶反応治療が必要。臍帯血由来間葉系細胞は骨、軟骨の再生医療において間葉系細胞ソースとして期待大。

公開日・更新日

公開日
2006-07-20
更新日
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