霊長類ES細胞の品質管理と同種移植の安全性確保に関する研究

文献情報

文献番号
200500177A
報告書区分
総括
研究課題名
霊長類ES細胞の品質管理と同種移植の安全性確保に関する研究
課題番号
H16-再生-002
研究年度
平成17(2005)年度
研究代表者(所属機関)
寺尾 恵治(独立行政法人医薬基盤研究所霊長類医科学研究センター)
研究分担者(所属機関)
  • 仁藤 新治(田辺製薬先端医学研究所)
  • 久和 茂(東京大学大学院農学生命科学研究科)
  • 花園 豊(自治医科大学再生医療研究部)
  • 山元 恵(国立水俣病総合研究センター)
  • 中村 紳一朗(社団法人予防衛生協会)
  • 下澤 律浩(独立行政法人医薬基盤研究所霊長類医科学研究センター )
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 厚生科学基盤研究分野 ヒトゲノム・再生医療等研究【再生医療研究】
研究開始年度
平成16(2004)年度
研究終了予定年度
平成18(2006)年度
研究費
20,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
本研究は、ヒトを対象とした安全で有効な再生医療技術を確立するために、ヒトに近縁な霊長類のES細胞を対象として、幹細胞の品質管理技術、分化誘導技術、同種移植のリスク評価技術をヒトに先行して開発することを目的とする。
研究方法
カニクイザルの3種のES細胞株について神経幹細胞への分化誘導技術開発と遺伝子・タンパク質発現の解析を行った。ES細胞から分化誘導した前血液細胞の胎児への同種移植は霊長類医科学研究センターで交配、妊娠した胎齢の明らかな胎児を用いた。上記実験のうち個体レベルでの実験は、基盤研・動物実験委員会により審査・承認された後実施した。また、動物の取り扱いにあたっては動物に与える苦痛の軽減と排除に努めた。
結果と考察
(1)サルES細胞から神経幹細胞を効率的に分化誘導する技術として、アストロサイトの条件培地にFGF-2とEGFを高濃度添加して浮遊培養を行なう技術を確立した。(2)霊長類ES細胞の品質管理に適用可能な遺伝子マーカー、タンパク質マーカーを検索し、ES細胞に特異的に発現している遺伝子として新たにCaveolin1、CyclinA1遺伝子と4種の新規候補遺伝子を同定した。霊長類ES細胞に高発現するタンパク質として、Caveolin 1、DP103/Gemin、E-CadherinおよびMRP1の4種が確認された。(3)神経幹細胞への分化誘導技術を改良し、Astrocyte Conditioned Medium(ACM)中の液性因子により、ES細胞から分化誘導した神経幹細胞を、FGF-2とEGFを添加した神経細胞用無血清培地中で接着培養することによって、分裂をさらに促進することを明らかにした。(4)未分化ES細胞および前血液細胞に分化誘導培養した細胞をカニクイザル胎児に同種移植した場合には、全例にテラトーマ形成が認められた。一方、分化誘導細胞からSSEA-4陽性細胞を除去すると、テラトーマの形成は認められないことから、in vitro分化誘導では程度の差はあるが未分化なES細胞が残存し、テラトーマ形成のリスクが生じることが明らかになった。

結論
霊長類ES細胞から効率的に神経幹細胞を分化誘導する技術を確立した。霊長類ES細胞に特異的に発現している6種の新規候補遺伝子と4種のタンパク質を同定した。分化誘導細胞には未分化ES細胞が混在しており、テラトーマ形成リスクが存在する

公開日・更新日

公開日
2006-07-20
更新日
-