成体脳に内在する神経幹細胞の賦活化に関する開発的研究

文献情報

文献番号
200500165A
報告書区分
総括
研究課題名
成体脳に内在する神経幹細胞の賦活化に関する開発的研究
課題番号
H17-再生-002
研究年度
平成17(2005)年度
研究代表者(所属機関)
高坂 新一(国立精神・神経センター神経研究所)
研究分担者(所属機関)
  • 和田 圭司(国立精神・神経センター神経研究所)
  • 湯浅 茂樹(国立精神・神経センター神経研究所)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 厚生科学基盤研究分野 ヒトゲノム・再生医療等研究【再生医療研究】
研究開始年度
平成17(2005)年度
研究終了予定年度
平成19(2007)年度
研究費
18,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
 本研究の目的は、神経変性疾患の新たな治療手段として、内在性神経幹細胞を賦活化させる低分子化合物の薬剤を開発することにある。そのため、成体脳に内在する神経幹細胞の分裂や増殖、分化に関わる分子(例えば、NMDA受容体やその関連分子、G蛋白質共役型受容体(GPCR)等)に着目し、その分子基盤を解明するとともに、これらの分子を標的とする薬剤の開発を行う。
研究方法
個々の研究方法に関しては、添付した分担研究報告書を参照されたい。
結果と考察
1.成体脳神経幹細胞の賦活化を指標としたNMDA受容体阻害剤の探索ならびにその分子基盤の解明
 NMDA受容体阻害剤であるメマンチンを成体のマウスに投与することで、海馬歯状回における内在性神経幹細胞の増殖が亢進することを確認した。また、マイクロアレイを用いた網羅的な遺伝子発現解析から、脳発達期のNMDA受容体はNotchシグナル系を介して神経幹細胞の増殖を制御している可能性が示唆された。
2.成体脳神経幹細胞の分化増殖を制御するG蛋白質共役型受容体リガンドの探索
 定量的RT-PCRを用いて、ニューロスフェアと側脳室周囲の神経幹細胞局在領域において発現が高いGPCRを34個同定した。さらに、ニューロスフェアの増殖や運動性を亢進させるGPCRリガンドを10種類見出した。
3.成体脳神経幹細胞の増殖、分化、シナプス新生に関する形態学的基盤の解析
 転写因子であるPax6は、海馬歯状回顆粒細胞下層(SGZ)では神経前駆細胞のみに発現していることから、成体神経前駆細胞の新たなマーカーとなることを見出した。また、Pax6は成体脳における早期神経前駆細胞の維持ならびに引き続き起こる神経新生に重要であることが判明した。
結論
 メマンチンを成体マウスに投与することで、海馬歯状回における内在性の神経幹細胞の増殖が亢進することを確認した。また、脳発達期において、NMDA受容体はNotchシグナル系を介して神経幹細胞の増殖を制御している可能性が示唆された。
 成体脳内の神経幹細胞及びその周囲に存在する環境因子の受容体として発現が高いと考えられるGPCRを34種同定するとともに、ニューロスフェアの増殖や運動性を亢進させるGPCRリガンドを10種類見出した。
 海馬歯状回SGZにおける神経前駆細胞のマーカー分子としてPax6を見出した。

公開日・更新日

公開日
2006-07-20
更新日
-