個人情報の医学・生物学研究利用を支える法的・倫理的・社会的基盤について

文献情報

文献番号
200500160A
報告書区分
総括
研究課題名
個人情報の医学・生物学研究利用を支える法的・倫理的・社会的基盤について
課題番号
H16-生命-001
研究年度
平成17(2005)年度
研究代表者(所属機関)
宇都木 伸(東海大学専門職大学院実務法学研究科)
研究分担者(所属機関)
  • 大島 明(大阪府立成人病センター調査部)
  • 奥本 武城(三菱ウェルファーマ株式会社創薬企画部)
  • 河原 ノリエ(フリージャーナリスト)
  • 佐藤 雄一郎(横浜市立大学医学部)
  • 菅野 純夫(東京大学大学院新領域創成科学研究科メディカルゲノム専攻・ゲノム制御医科学分野、分子生物学)
  • 恒松 由記子(国立成育医療センター特殊診療部小児腫瘍科・血液科)
  • 増井 徹(独立行政法人 医薬基盤研究所 生物資源研究部門 JCRB細胞バンク)
  • 松村 外志張((株)ローマン工業細胞工学センター)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 厚生科学基盤研究分野 ヒトゲノム・再生医療等研究【ヒトゲノム遺伝子治療研究】
研究開始年度
平成16(2004)年度
研究終了予定年度
平成18(2006)年度
研究費
6,300,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
現代の医学・生物学研究にとって、その重要資源たる“人に由来する物質と情報”が、信頼のおける品質と、信頼をもって委ねられているという社会的安定性とを持つことがきわめて重要である。そのために必要なインフラストラクチャーが何であり、その整備のための条件が何かを、明確にすることを目的とする。
研究方法
自然・社会科学者、医療者、企業人、ジャーナリストなどという多様な領域の者から構成される本研究班では、医療および研究の現場、また外国の当該問題に取り組む現場への実地調査を踏まえて、班員それぞれの立場から、それぞれの問題に取り組み、その成果を班員外のメンバーも加えた研究会において検討するという方法を採った。
結果と考察
わが国の現下の電子カルテ化はきわめて不統一の形で進行しており、長期・抜本的視野をもったコントロールは、外国の情報などを参考にしながら、火急に為されるべき課題である。記録内容の充実、その自動サマリー化、医療間の情報の共有化をも含めた情報の利用のための工夫を早急に必要とする。地域的に情報の共有を図ろうとする努力は各地で為されているが、その内容・普及度などは限定的である。
 また医学・生物学研究に関する基本的スタンスを問い直し、透明性と公共性の高い科学研究とそれを支える共助主義に基づく社会を来たらせるには、精神論だけではなくそれなりの制度的工夫を要する。
結論
・医学・生物学研究におけるリスク・ベネフィット・バランスをめぐる原理を、時間的・空間的な限界を超えた視野をもって問い直す必要がある。
・電子カルテ化が甚だしい不統一の中で進行しているが、せめてサマリー化、統計・研究利用のための抽出方法などの統一化が必要であり、その成否は今後の我国の医学・生物学研究の成果を左右することになる。
・資料提供者の尊厳と権利を守るためには、現在の承諾と倫理委員会に全面依存の形では不十分であり、特有の制度的保証を必要とする。

公開日・更新日

公開日
2006-05-15
更新日
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