サル等を用いたウイルスベクターの安全性・有効性の評価に関する研究

文献情報

文献番号
200500158A
報告書区分
総括
研究課題名
サル等を用いたウイルスベクターの安全性・有効性の評価に関する研究
課題番号
H16-遺伝子-002
研究年度
平成17(2005)年度
研究代表者(所属機関)
倉田 毅(国立感染症研究所)
研究分担者(所属機関)
  • 神田 忠仁(国立感染症研究所 )
  • 俣野 哲朗(東京大学医科学研究所)
  • 西山 幸廣(名古屋大学医学部付属研究施設)
  • 近藤 一博(東京慈恵会医科大学医学部)
  • 北村 義浩(東京大学医科学研究所)
  • 佐多 徹太郎(国立感染症研究所 )
  • 寺尾 恵治(独立行政法人医薬基盤研究所霊長類医科学研究センター)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 厚生科学基盤研究分野 ヒトゲノム・再生医療等研究【ヒトゲノム遺伝子治療研究】
研究開始年度
平成16(2004)年度
研究終了予定年度
平成18(2006)年度
研究費
38,250,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
患者に直接投与されるウイルスベクターの安全性は、ベクター固有の性質と導入遺伝子の性質に依存する。ベクター固有の性質とは、標的細胞の特異性、感染効率、発現部位の選択、ベクターゲノムの複製、染色体への組み込みなどであり、モデルベクターで検討できる。本研究ではモデルベクターをサル等に接種し、安全性・有効性に関する情報を得るのが目的である。
研究方法
1)臨床試験で血流に漏出すると想定し、アデノ随伴ウイルス(AAV)ベクターをサルに経静脈接種し、7ヶ月後に各臓器のベクターDNAを調べた。サル末梢血単核球に対するAAVベクターの感染性を調べた。2)サル免疫不全ウイルス(SIV)遺伝子発現プラスミドDNAをサルに筋注した後、6週めにGag発現センダイウイルス(SeV)ベクターを経鼻接種し、さらに約3ヶ月後にSIVを感染させた。3)再発性頭頸部癌患者2名の皮膚と皮下の腫瘍内に単純ヘルペスウイルス(HSV)弱毒株HF10を3日連続接種するI/II相臨床試験を行った。HF10をヘルパーとして複製するマウスGM-CSF発現アンプリコンを作製し、HF10の抗腫瘍活性の増強をマウスモデルで調べた。
結果と考察
1)経静脈接種されたAAVベクターは、リンパ系組織に長期間留まった。末梢血単核球へのAAVベクターによる遺伝子導入効率は極めて低かったので、AAVベクターがリンパ球に感染するとは考えにくい。2)Gag発現Seベクター接種を受けた全てのサルに3ヶ月の時点でCTLメモリーが維持されており、SIV感染後にGag特異的CTLの2次反応が見られた。3)HF10接種患者に重篤な有害事象と抗HS抗体の誘導はなかった。HF10接種部位に癌細胞の死滅と核の消失、CD4/CD8陽性リンパ球の浸潤が認められた。マウスの固形腫瘍モデルにHF10と共にGM-CSF遺伝子発現アンプリコンを接種すると、抗腫瘍作用が増強された。
結論
1)静脈接種されたAAVベクターは、リンパ系組織に長期間留まるが、必ずしもリンパ球に感染しているわけではない。感染細胞種の同定と導入遺伝子の発現の有無を検討する必要がある。2)SeVベクターブーストにより誘導された抗原特異的CTLメモリーは、少なくとも3ヶ月間以上は維持される。3)HF10は再発性乳癌や頭頸部癌に対して安全で有効な治療効果を示した。アンプリコンの併用で、治療効果が増強されると期待できる。

公開日・更新日

公開日
2006-05-23
更新日
-