慢性疾患としての糖尿病の病期に注目した病態の解析と、新たな診断・治療法の探索

文献情報

文献番号
200500156A
報告書区分
総括
研究課題名
慢性疾患としての糖尿病の病期に注目した病態の解析と、新たな診断・治療法の探索
課題番号
H17-ゲノム-012
研究年度
平成17(2005)年度
研究代表者(所属機関)
安田 和基(国立国際医療センター 研究所・代謝疾患研究部)
研究分担者(所属機関)
  • 鏑木 康志(国立国際医療センター 研究所・代謝疾患研究部)
  • 大河内 仁志(国立国際医療センター 研究所・細胞組織再生医学研究部)
  • 浜崎 辰夫(国立国際医療センター 研究所・細胞修飾生体反応研究室)
  • 湯尾 明(国立国際医療センター 研究所・血液疾患研究部)
  • 岡村 匡史(国立国際医療センター 研究所・ヒト型動物開発研究室)
  • 江崎 治(独立行政法人国立健康・栄養研究所・生活習慣病研究部)
  • 浅島 誠(東京大学教養学部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 厚生科学基盤研究分野 ヒトゲノム・再生医療等研究【ヒトゲノム遺伝子治療研究】
研究開始年度
平成17(2005)年度
研究終了予定年度
平成19(2007)年度
研究費
300,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
 糖尿病は、長い慢性の経過をたどっての発症・進展する特徴がある。「成因」とともに、「病期」にも基づく新しい診断治療法の開発をめざし、糖尿病の真のオーダーメイド医療の実現を目標とする。
研究方法
 糖尿病の発症・進展の中でも特に解析が遅れていた、「環境因子の分子メカニズム」、「膵代償機序とその破綻」、「合併症」の3点に注目して解析を進めた。また個体レベルでは独自の動物モデル(Sendaiラット)を解析し、また重層的な解析を可能にするヒト臨床パネルを構築した。
結果と考察
 環境因子については独自の個体モデルを用い、運動の体脂肪減少効果にはAMPキナーゼが必要だが、糖代謝改善作用には他のメカニズムも関与すること、高フルクトース食がVLDL分泌増加・血中中性脂肪上昇をきたし、少量の魚油がこれを抑制しうること、などを示した。
 インスリン抵抗性に対する膵β細胞の代償について、まず「量的代償」メカニズムの解明のために、アクチビンとレチノイン酸を用いて、マウスES細胞およびツメガエルのアニマルキャップからのin vitro膵分化系を、それぞれ世界で初めて確立し、トランスクリプトーム解析により、膵分化にかかわる可能性のある重要な遺伝子を得た。さらに仔ブタ膵組織からのSP(side population)細胞を世界で初めて単離し、組織幹細胞、内分泌前駆細胞の候補を得、膵内分泌系への分化を試みた。一方、「質的代償」の観点からは、脂肪酸による脂肪毒性系を確立し、アディポネクチンがβ細胞機能を改善させることを見出した。世界で初めて膵β細胞完全長cDNAライブラリーを作成し、膵β細胞の特性をゲノム・転写レベルで解析した。
 糖尿病合併症については、血管内皮細胞を標的とした解析系を立ち上げ、また網膜色素上皮細胞から、網膜症の発症・進展に関連しうる興味深い分泌タンパクを得た。
 個体レベルでは、日本人糖尿病に酷似した、非肥満モデルSendaiラットについて耐糖能障害・膵ラ氏島障害を経時的に解析した。またヒト糖尿病患者800人以上から、ゲノム、血清・尿・硝子体、臨床情報などが完備したパネルを構築した。
 こうした個別の研究を、個体レベルの「病期」の概念へ統合し、ヒト検体を用いた重層的な解析を行う点が今後の課題である。
結論
 世界中で我々だけが保持する独自の解析系を駆使して、糖尿病の慢性の発症・進展で生じる現象を解析し、また個体レベルでの解析系も構築した。

公開日・更新日

公開日
2006-04-10
更新日
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