アルツハイマー病発症の危険因子であるコレステロール代謝関連遺伝子の機能解析

文献情報

文献番号
200500151A
報告書区分
総括
研究課題名
アルツハイマー病発症の危険因子であるコレステロール代謝関連遺伝子の機能解析
課題番号
H17-ゲノム-004
研究年度
平成17(2005)年度
研究代表者(所属機関)
道川 誠(国立長寿医療センター研究所 アルツハイマー病研究部)
研究分担者(所属機関)
  • 藤野貴広(愛媛大学)
  • 赤津裕康(福祉村病院 長寿医学研究所)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 厚生科学基盤研究分野 ヒトゲノム・再生医療等研究【ヒトゲノム遺伝子治療研究】
研究開始年度
平成17(2005)年度
研究終了予定年度
平成19(2007)年度
研究費
24,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
脳内コレステロール代謝に関連するApoE, ABCA1, CYP46などの遺伝子多型とアルツハイマー病(AD) 発症との関連が指摘されている。しかし、脳内のコレステロール代謝および上記遺伝子産物の機能は良くわかっていない。本研究班は、危険因子であるApoE4などの遺伝子多型の機能をコレステロール代謝の側面から解明すること、並びにAD脳病理発症におけるコレステロールの意義を明らかにすることを目的とする。更に、これらの知見を基盤に脳内コレステロール代謝調節法を開発することによってアルツハイマー病予防・治療法の開発を目指す。
研究方法
脳神経系細胞の培養法を用いて各種薬剤やApoE蛋白の作用を解析した。またマウスCYP46A1のcDNAを単離し、CYP46A1 cDNAをNSEプロモーター下流に連結したトランスジェニックマウス用のミニジーンを構築した。アルツハイマー病および正常加齢各4例の脈絡叢を取り出し、それらをプロテオーム解析した。
結果と考察
道川らは、(i) ApoE3に比しApoE4のHDL産生能は劣っているが、その原因は構造の違いによること、(ii)ApoEによるHDL新生はABCA1を介していること、(iii)コレステロール代謝変動が神経細胞のミトコンドリア機能障害・細胞死を招くこと等を明らかにした。これらの知見を基盤に、ABCA1の発現調節等によって脳内HDL産生を増加させ、Abeta除去並びにコレステロール代謝の改善を図り、ADの予防法の確立につなげる予定である。
藤野らは、脳内コレステロールの排出系として重要なコレステロール水酸化酵素(CYP46)を過剰発現させたマウス作製の開始した。また、脳脊髄液中のApoEのシアル酸修飾パターンが日本人と西洋人の間では異なること、加齢と共に変化する可能性を明らかにした。
赤津らは、ADの危険因子である各種コレステロール代謝関連因子を、ヒトのサンプルを用いて解析し、AD群で高発現する新規因子を得た。これら因子を同定し動態を解析することによって早期診断や予防法の開発に役立てられる可能性がある。
結論
1)ApoE3とApoE4の3次元構造の違いによってHDL新生能の違いが生じる。
2)ApoEによるHDL新生はABCA1を介している。
3)コレステロール代謝変動が神経細胞のミトコンドリア機能障害を誘導する。
4)アポEのシアル酸修飾は加齢によって変化する。
5)アルツハイマー病群で高発現している未知の蛋白がある。

公開日・更新日

公開日
2006-04-14
更新日
-