血液製剤の適正使用に関連した病院内体制整備等に関する調査研究

文献情報

文献番号
199700012A
報告書区分
総括
研究課題名
血液製剤の適正使用に関連した病院内体制整備等に関する調査研究
課題番号
-
研究年度
平成9(1997)年度
研究代表者(所属機関)
川口 毅(昭和大学)
研究分担者(所属機関)
  • 三浦宜彦(昭和大学)
  • 渡辺由美(昭和大学)
研究区分
厚生科学研究費補助金 行政政策研究分野 厚生行政科学研究事業
研究開始年度
平成9(1997)年度
研究終了予定年度
-
研究費
1,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
血液製剤は、人体の一部である血液を原料とするため、未知のウイルス等の混入の可能性を否定できないだけでなく、有限なものであり医療上は有効であっても安易に第一選択の治療法として用いるべきではない。また、貴重な血液を無駄にしないためにも適正な保管管理が必要不可欠であり、これを徹底することにより、輪血の安全性も確保される。また、使用の記録の保管管理も重要である。本研究においては、医療機関によってばらつきがあると思われる適正使用についての対応を調査するとともに、適正使用の徹底に向けた方策を検討することを目的とした。
研究方法
全国の一般病院8,764施設から病床規模別に無作為に抽出した1,460施設を対象に、血液製剤取り扱い部署、管理規則の有無、「血液製剤保管管理マニュアル」の使用状況、保管状況、輸血療法委員会等の設置状況、厚生省通知による「血液製剤管理簿」の使用状況などの実態を明らかにするために、血液製剤管理状況調査を実施した。
結果と考察
調査対象施設1,460のうち有効回答の得られたものは774施設で回収率は53.0%であった。開設者別回収率は、「社会保険関係団体」82.6%、「国」82.4%、「公的医療機関」79.7%、「その他」67.9%、「医療法人」50.5%、「個人」28.0%の順であった。「個人」の回収率が極めて低かったのは、個人病院では血液製剤を使用することが少ないためと考える。これは1年間の使用実績で「個人」が少なかったことからも推察できる。
全血製剤、血液成分製剤の取扱い部署は、「薬剤部」が61.6%と最も多く、次いで「中央検査部」37.1%、「その他」8.0%、「輸血部」2.2%の順であった。「薬剤部」が最も多かったが、病床規模が大きくなるにしたがって「輸血部」を取扱い部署とする病院が多くなっており、大病院ほど血液製剤の専門取扱い部署として「輸血部」を設置する傾向があることを示していると考える。これは、「医育機関(再掲)」の47.8%が「輸血部」を取扱い部署としていたことからも推察できる。
アルブミン製剤やグロブリン製剤の取扱い部署は「薬剤部」が90%以上であった。ほとんどが「薬剤部」であったことは、これらの製剤は治療薬であるので当然の結果と考えるが、病床規模の小さい病院で「中央検査部」や「その他」での取扱いが多かったことは、薬剤部そのものがないことが理由と考える。
全血製剤、血液成分製剤について、在庫管理規則を含めた何らかの管理規則を定めていた病院は25.9%で、検討中の21.3%を含めても、定めていない病院52.4%の方が多かった。また、血漿分画製剤についても、定めていた病院23.7%、検討中の病院20.6%で、定めていない病院が55.4%であった。このように全血製剤、血液成分製剤や血漿分画製剤の管理規則等を定めていない病院が半数以上もあり、「医育機関(再掲)」や「700床以上」の病院でも5~6割しか定めていなかったことは、血液製剤の適正な保管管理を推進する上で障害となるものであろう。
平成5年に厚生省薬務局が発行した「血液製剤保管管理マニュアル」の使用状況については、「頻繁に使用している」35.9%、「ほとんど使用していない」48.5%、「病院にない」14.6%であった。「血液製剤保管管理マニュアル」をほとんど使用していない病院が約半数もあり、院内に備えていない病院が約15%もあったことは重大であると考える。その結果としてマニュアルに基づいた輸血療法委員会を設置している病院が19.4%と少なかった。その中で、「700床以上」の大病院や「医育機関(再掲)」では7~8割の設置率であったこと、また、設置された委員会はかなりの頻度で開催されていたことなどは好ましいことである。血液製剤の安全かつ適正な使用の推進に当ってさらなるマニュアルの普及が望まれる。
血液製剤の保管に自記温度計記録計並びに警報装置つき冷蔵庫・冷凍庫の使用については、約3/4の病院が冷蔵庫、冷凍庫の少なくともいずれかを使用していた。これらの冷蔵庫・冷凍庫を使用してない病院が1/4あったが、これらは、「個人」、「医療法人」や200床未満の小規模病院であったことを考慮すると、長期保存の必要のない患者が多い病院であると考える。しかしながら,「血液製剤保管管理マニュアル」に沿った使用のためには100%の普及が望まれる。
平成7年,平成3年の調査結果と比較してみると,全血製剤,血液成分製剤や血漿分画製剤の管理規則は,近年になるほど定めている病院が多くなっていたこと。さらに,「血液製剤保管管理マニュアル」の使用頻度も若干多くなっていたこと。などは血液製剤の適正使用に向けて改善の方向にあることを示唆するものである。
厚生省薬務局からの血液製剤管理簿作成の通知については、96.5%の病院が知っていて、血液製剤管理簿の作成についても予定を含めると98%が作成していることになる。このことは、薬務局の意向が浸透していることを示すものであるが、血液製剤管理簿の記録方法では「コンピュータ」によるものが1/4で、「手書き」が約3/4であった。血液製剤管理簿を使用するに当っては、迅速かつ正確な検索が必要であることを考慮すると、コンピュータ化をさらに推進することも重要であると考える。
また、血液製剤管理簿の作成率が高かったことは、血液製剤管理簿の作成理由が周知徹底されていたことにもよるのであろう。
結論
わが国の血液製剤の保管管理状況は、厚生省薬務局の施策によって次第に改善されていることが明らかとなった。しかしながら未だ保管管理規則を定めている病院が少ないことを考慮すると、血液製剤保管管理マニュアル等の更なる普及が不可欠であろう。

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