サル完全長cDNAの配列決定とヒト遺伝子との比較解析および配列情報に基づくcDNAアレイ作製と応用に関する研究

文献情報

文献番号
200500145A
報告書区分
総括
研究課題名
サル完全長cDNAの配列決定とヒト遺伝子との比較解析および配列情報に基づくcDNAアレイ作製と応用に関する研究
課題番号
H15-ゲノム-003
研究年度
平成17(2005)年度
研究代表者(所属機関)
橋本 雄之(国立感染症研究所病原体ゲノム解析研究センター)
研究分担者(所属機関)
  • 楠田 潤(独立法人医薬基盤研究所生物資源部)
  • 平井 百樹(東京女子医科大学国際統合医科学インスティテュート)
  • 菅野 純夫(東京大学大学院新領域創成科学研究科)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 厚生科学基盤研究分野 ヒトゲノム・再生医療等研究【ヒトゲノム遺伝子治療研究】
研究開始年度
平成15(2003)年度
研究終了予定年度
平成17(2005)年度
研究費
60,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
1)カニクイザルcDNAを分離し、ヒト参照遺伝子に相当するクローンの全長塩基配列を決定してヒトとの比較解析を行う。2)カニクイザルのオリゴおよびcDNAチップ作製を行う。
研究方法
1)カニクイザルcDNAを分離し、ヒト参照遺伝子に相当するクローンの全長塩基配列を決定する。ヒトとの配列比較を行い、配列比較に適宜チンパンジーcDNAを加えて、種間での配列保存度を比較、種特異的進化を示す遺伝子の探索を行う。3)このcDNAおよび配列情報をもとに、オリゴおよびcDNAチップを作製する。
結果と考察
カニクイザルサ脳,精巣、肝臓からのcDNA約9万クローンのうち、9,000以上の全長配列を決定し公共データベースに登録した。1) ヒト転写物ではみられない400以上のカニクイザルcDNAを見いだした。種特異的遺伝子候補50以上を精査した。2)ヒト相同遺伝子をもつカニクイザルcDNAの5'UTRのうち,通常のヒト転写物にみられない変化型5'UTRが精巣cDNAで27%、脳cDNAで14%存在した。チンパンジー精巣cDNAの全長配列解析を行い、ヒト参照遺伝子に相同な1,077配列について、5'UTRエキソンに注目すると全体で16.8%に5'UTRの変化が見られた。3)チンパンジー脳,皮膚由来cDNA87クローンの全長配列と対応するヒト参照遺伝子配列と種間比較を行った。塩基置換でみた種間差は、cDNA全体で0.73%,アミノ酸置換率0.58%で、さらに、塩基挿入/欠失(indel)を算入すると、配列の種間差は1.36%となり、種間差にはindelの算入の必要性が示された。4)約1,500個の疾患遺伝子に相補的なカニクイザルおよびチンパンジー遺伝子、それぞれ300個及び1025個を見いだした。そのうち,ヒトの病因となるアミノ酸置換をもつものがカニクイザルで8遺伝子、チンパンジーで27遺伝子みつかった。これらのアミノ酸置換の64%はカニクイザル、チンパンジーともに疾病型で,祖先型となっていた。5)上記カニクイザルcDNA配列情報をもとに、オリゴヌクレオチドを設計し、約2,000の遺伝子についてオリゴチップ作製を試作し、評価実験を行った。
結論
カニクイザルcDNAについて、85,894のESTおよび9,407の全長cDNA配列が得られた。チンパンジーcDNAについては約2,000の全長配列決定を行った。ヒト、マカク、チンパンジー相同遺伝子の配列比較により、塩基置換率の程度、5’UTRの構造変化、ヒト疾病遺伝子変位部位の祖先型出現などの新知見を得た。種特異的遺伝子候補7クローンを得ている。

公開日・更新日

公開日
2006-04-06
更新日
-

文献情報

文献番号
200500145B
報告書区分
総合
研究課題名
サル完全長cDNAの配列決定とヒト遺伝子との比較解析および配列情報に基づくcDNAアレイ作製と応用に関する研究
課題番号
H15-ゲノム-003
研究年度
平成17(2005)年度
研究代表者(所属機関)
橋本 雄之(国立感染症研究所病原体ゲノム解析研究センター)
研究分担者(所属機関)
  • 楠田 潤((独)医薬基盤研究所生物資源研究部)
  • 平井 百樹(東京女子医科大学国際統合医科学インスティテユート)
  • 菅野 純夫(東京大学大学院新領域創成科学研究科)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 厚生科学基盤研究分野 ヒトゲノム・再生医療等研究【ヒトゲノム遺伝子治療研究】
研究開始年度
平成15(2003)年度
研究終了予定年度
平成17(2005)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
1)カニクイザルcDNAを分離し、ヒト参照遺伝子に相当するクローンの全長塩基配列を決定してヒトとの比較解析を行う。2)カニクイザルのオリゴおよびcDNAチップ作製を行う。
研究方法
1)カニクイザルcDNAを分離し、ヒト参照遺伝子に相当するクローンの全長塩基配列を決定し,ヒトとの配列比較を行い、適宜チンパンジーcDNAを加えて、種間での配列保存度を比較、種特異的進化を示す遺伝子の探索を行う。3)このcDNAと配列情報をもとに、オリゴおよびcDNAチップを作製する。
結果と考察
カニクイザルサ脳,精巣、肝臓からのcDNA約9万のうち、9,000以上の全長配列を決定し公共データベースに登録した。ヒトとの比較解析で、1)脳で発現している遺伝子は全体として遺伝子の変化速度が遅くなっている。2) ヒト転写物ではみられない、400以上のカニクイザルcDNAを見いだした。種特異的遺伝子候補50以上を精査した。3)ヒト相同遺伝子をもつカニクイザルcDNAの5'UTRのうち,変化型5'UTRが精巣cDNAで27%、脳cDNAで14%存在した。チンパンジー精巣cDNAの全長配列解析を行い,1,077配列について5'UTRエキソンに注目すると、16.8%に5'UTRの変化が見られた。4)チンパンジー脳,皮膚由来cDNA87クローンの全長配列とヒト参照遺伝子との配列比較を行った。塩基置換でみた種間差はcDNA全体で0.73%,アミノ酸置換率0.58%で,さらに,塩基挿入/欠失を算入すると、配列の種間差は1.36%となり、挿入・欠失の算入の必要を示した。5)約1,500個の疾患遺伝子に相補的なカニクイザルおよびチンパンジー遺伝子それぞれ300個及び1025個を見いだした。そのうち,ヒトの病因となるアミノ酸置換をもつものがカニクイザルで8、チンパンジーで27遺伝子みつかった。これらの64%はともに疾病型で,祖先型となっていた。6)チンパンジーで約400,カニクイザルで約300の遺伝子転写開始部位をマップした。7)カニクイザルcDNA約2,000についてオリゴチップを作製し評価実験を行うとともに、cDNAチップのために6,000クローンを増幅した。
結論
カニクイザルcDNAについて、85,894のESTおよび9,407の全長cDNA配列が得られた。チンパンジーcDNAについては約2,000の全長配列決定を行った。ヒト、マカク、チンパンジー相同遺伝子の配列比較により、塩基置換率の程度、5’UTRの構造変化、ヒト疾病遺伝子変位部位の祖先型出現などの新知見を得た。種特異的遺伝子候補7クローンを得ている。

公開日・更新日

公開日
2006-04-07
更新日
-

行政効果報告

文献番号
200500145C

成果

専門的・学術的観点からの成果
本研究ではヒトゲノム解析に重要な研究資材を提供する成果を得た。特に、ヒトに近いサルの完全長 cDNAクローンを整備して、機能を探ることは疾患の成立を研究するうえで有効であること、また、既知ヒトmRNAにないサルcDNA配列から、ヒト新規遺伝子の分離を可能とした。
臨床的観点からの成果
作製したオリゴまたはcDNAチップをカニクイザルを用いた前臨床試験での代替法として検討することにより、新薬の薬効や毒性試験の簡素化を図ることができる。
ここで得た結果は成人病の多くの原因が生活習慣にあり、病的遺伝子型をもつ人はサルやチンパンジーの生活を手本とすれば健康でいられることを示唆するものである。このような情報は疾病予防にとって有用である。
ガイドライン等の開発
特になし
その他行政的観点からの成果
特になし
その他のインパクト
DNA Data Bank of Japan(DDBJ)のニュースにカニクイザルcDNAデータベースが紹介された。

発表件数

原著論文(和文)
0件
原著論文(英文等)
13件
その他論文(和文)
1件
その他論文(英文等)
1件
学会発表(国内学会)
13件
学会発表(国際学会等)
5件
その他成果(特許の出願)
0件
「出願」「取得」計0件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
0件
その他成果(普及・啓発活動)
0件

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限ります。

原著論文1
Mesak, F.M. , Osada, N., Hashimoto, K. et al.
Molecular cloning, genomic characterization and over-expression of a novel gene, XRRA1,identified from human colorectal cnacer cell HCT116clone2_XRR and macaque testis
BMC Genomics 4:32, 2003. , 4 (32) , 1-17  (2003)
原著論文2
Sakate R., Hida, M., Sugano,S. et al.
Analysis of 5'-end sequences of chimpanzee cDNAs
Genome Research , 13 , 1022-1026  (2003)
原著論文3
Osada,N., Hirata, M., Tanuma, R. et al.
Substitution rate and structural divergence of 5’UTR evolution: Comparative analysis between human and cynomolgus monkey cDNAs
Moleculer Biololgy and Evolution , 22 (10) , 1976-1982  (2005)
原著論文4
Wang HY, Chien HC, Osada N, et al.
Rate of evolution in brain-expressed genes in humans and other primates
PLoS Biology , 5 (2) , 1-7  (2007)
原著論文5
Osada,N., Hashimoto,K., Hirai,M. et al.
Aberrant termination of reproduction-related TMEM30C transcripts in the hominoids
Gene , 392 , 151-156  (2007)

公開日・更新日

公開日
2015-05-26
更新日
-