遺伝子組み換え薬用植物の環境に与える影響に関する研究

文献情報

文献番号
200500143A
報告書区分
総括
研究課題名
遺伝子組み換え薬用植物の環境に与える影響に関する研究
課題番号
H15-ゲノム-001
研究年度
平成17(2005)年度
研究代表者(所属機関)
木内 文之(独立行政法人医薬基盤研究所 薬用植物資源研究センター)
研究分担者(所属機関)
  • 関田 節子(徳島文理大学香川薬学部)
  • 飯田 修((独)医薬基盤研究所薬用植物資源研究センター筑波研究部)
  • 吉松 嘉代((独)医薬基盤研究所薬用植物資源研究センター筑波研究部)
  • 渕野 裕之((独)医薬基盤研究所薬用植物資源研究センター筑波研究部)
  • 柴田 敏郎((独)医薬基盤研究所薬用植物資源研究センター北海道研究部)
  • 香月 茂樹((独)医薬基盤研究所薬用植物資源研究センター種子島研究部)
  • 佐竹 元吉(お茶の水女子大学生活環境研究センター)
  • 大塚 譲(お茶の水女子大学生活環境研究センター)
  • 酒井 英二(岐阜薬科大学薬用植物園)
  • 水上 元(名古屋市立大学大学院薬学研究科)
  • 鎌田 博(筑波大学大学院生命環境科学研究科)
  • 野口 博司(静岡県立大学薬学部)
  • 神田 博史(広島大学医学部総合薬学科)
  • 佐藤 文彦(京都大学大学院生命科学研究科)
  • 正山 征洋(九州大学大学院薬学研究院)
  • 鈴木 幸子(東京都健康安全研究センター薬用植物園)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 厚生科学基盤研究分野 ヒトゲノム・再生医療等研究【ヒトゲノム遺伝子治療研究】
研究開始年度
平成15(2003)年度
研究終了予定年度
平成17(2005)年度
研究費
31,500,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
遺伝子組換え薬用植物を作出して遺伝子組換えが薬用植物の成分にどのように影響するかを評価するとともに、遺伝子組換え薬用植物の第1種使用に際して実施する環境影響評価項目としてのアレロパシー試験等の手法を検討する。また、薬用植物の生育・栽培特性等を調査し、遺伝子組換え薬用植物の環境への影響を最小限にするための研究の基礎資料を作る。
研究方法
セリバオウレン,ベラドンナ等の遺伝子組換え薬用植物の作出を行うとともに,薬用植物成分の生合成遺伝子の組込みが植物の成分にどのように影響するかを評価した.また,野生薬用植物の遺伝的多様性の調査,花粉の飛散距離の調査,アレロパシー試験等を検討した.更に,薬用植物の生育・栽培・増殖特性を調査し,薬用植物に関する基礎資料を作成した.
結果と考察
セリバオウレンを材料として効率的遺伝子組換え体作出法を確立し,ベルベリン輸送タンパク遺伝子を導入した再生植物体では,コサプレッションによる遺伝子発現抑制が起こり,これに伴ってベルベリンの含量も低下することを明らかにした.ニチニチソウの配糖化酵素遺伝子を導入したシロイヌナズナ再生植物体を作出したが,培養細胞で見られた著しく多量のコニフェリンの蓄積は見られなかった.また,ケシのリゾビウム菌による形質転換体に於けるテバイン含量の増加は,一つの遺伝子の変化のような単純な原因で起こったものではないことが示唆された.遺伝子組換えにより植物体の二次代謝産物の量を改変するためには,目的とする二次代謝産物の代謝制御に関与する様々な因子を考慮する必要がある.遺伝子組換え薬用植物の環境影への響評の価項目を設定するため,ノラニンジンをモデル材料して花粉の寿命と花粉を媒介する主たる昆虫の特定を行い,その行動様式の解析並びに昆虫の行動パターンのシュミレーションソフトの改良により,虫媒花に於ける花粉の最大飛散距離の推定法を開発した.また,遺伝子組換え農作物用に開発されたサンドイッチ法を一部改変してベラドンナを用いたアレロパシー試験を行い,この方法が薬用植物にも適用可能であることを示した.更に,エンゴサク等の栽培試験を行うとともにゲンノショウコ等の受粉様式を検討し,薬用植物に関する基礎資料とした.
結論
遺伝子組換え薬用植物の作出,成分変化の評価,環境への影響評価項目に付いての具体的な成果を上げるとともに,問題点を明らかにすることができた.

公開日・更新日

公開日
2006-05-08
更新日
-

文献情報

文献番号
200500143B
報告書区分
総合
研究課題名
遺伝子組み換え薬用植物の環境に与える影響に関する研究
課題番号
H15-ゲノム-001
研究年度
平成17(2005)年度
研究代表者(所属機関)
木内 文之(独立行政法人医薬基盤研究所 薬用植物資源研究センター)
研究分担者(所属機関)
  • 関田 節子(徳島文理大学香川薬学部)
  • 飯田 修((独)医薬基盤研究所薬用植物資源研究センター筑波研究部)
  • 吉松 嘉代((独)医薬基盤研究所薬用植物資源研究センター筑波研究部)
  • 渕野 裕之((独)医薬基盤研究所薬用植物資源研究センター筑波研究部)
  • 柴田 敏郎((独)医薬基盤研究所薬用植物資源研究センター北海道研究部)
  • 香月 茂樹((独)医薬基盤研究所薬用植物資源研究センター種子島研究部)
  • 佐竹 元吉(お茶の水女子大学生活環境研究センター)
  • 大塚 譲(お茶の水女子大学生活環境研究センター)
  • 酒井 英二(岐阜薬科大学薬用植物園)
  • 水上 元(名古屋市立大学大学院薬学研究科)
  • 鎌田 博(筑波大学大学院生命環境科学研究科)
  • 野口 博司(静岡県立大学薬学部)
  • 神田 博史(広島大学医学部総合薬学科)
  • 佐藤 文彦(京都大学大学院生命科学研究科)
  • 正山 征洋(九州大学大学院薬学研究院)
  • 鈴木 幸子(東京都健康安全研究センター薬用植物園)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 厚生科学基盤研究分野 ヒトゲノム・再生医療等研究【ヒトゲノム遺伝子治療研究】
研究開始年度
平成15(2003)年度
研究終了予定年度
平成17(2005)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
遺伝子組換え薬用植物を作出して遺伝子組換えが薬用植物の成分にどのように影響するかを評価するとともに、遺伝子組換え薬用植物の第1種使用に際して実施する環境影響評価項目とその手法を検討する。また、薬用植物の生育・栽培特性等を調査し、遺伝子組換え薬用植物の環境への影響を最小限にするための研究の基礎資料を作る。
研究方法
セリバオウレン等の組換え体の作出を通して,薬用植物での遺伝子組換え技術の確立するとともに,薬用植物成分の生合成遺伝子の組込みが植物の成分にどのように影響するかを評価した.また,野生薬用植物の遺伝的多様性の調査,花粉の飛散距離の調査,アレロパシー試験等を検討した.更に,薬用植物の生育・増殖特性等を調査し,薬用植物に関する基礎資料を作成した.
結果と考察
リゾビウムの感染条件を検討することにより,高い形質転換効率で組換えセリバオウレンの作出に成功したが,マルバダイオウでは不定芽形成効率が悪く,組換え植物作出には至らなかった.ここでは植物体再生のステップが障害になっていることから,植物体再成功率を上げる技術或はこのステップを必要としない種子への遺伝子導入技術の確立が今後の重要な課題である.ニチニチソウの配糖化酵素遺伝子を導入したシロイヌナズナ培養細胞では,野生型では蓄積が見られないコニフェリンの蓄積が見られたが,再生植物体では野生株と比較して顕著に変化した代謝物は認められなかった.高等植物における二次代謝物の生産能を思い通りに改変するためには,生合成経路に関わる酵素・遺伝子群の十分な理解とそれらを制御する技術が必要である.ベラドンナとノラニンジンの花粉の寿命を決定するとともに,主たる花粉媒介昆虫を同定し,ノラニンジンについては花粉媒介昆虫の行動パターン解析を行い,虫媒花に於ける花粉最大飛距離の推定法を確立した.これらの手法は他の植物にも適用可能であり,今後遺伝子組換え薬用植物の環境影響評価手法として活用しうるものと思われる.また,アレロパシー活性については,サンドイッチ法を一部改変してベラドンナを用いて実施し,この方法が薬用植物においても有効であることを明らかにした.更に,薬用植物の栽培特性,受粉様式の調査を行った.
結論
遺伝子組換え薬用植物を実用化するために必要な,組換え体作成技術,組換え体の成分評価,環境影響評価等に関しての具体的な成果を上げるとともに,今後の課題を明らかにした.

公開日・更新日

公開日
2006-04-03
更新日
-

行政効果報告

文献番号
200500143C

成果

専門的・学術的観点からの成果
遺伝子組換え農作物の開発は世界的に急速に進んでおり,主な農産物については組換え体作出並びに環境影響評価の具体的な手法の検討が行われているが,遺伝子組換え薬用植物に関して,その作出から環境影響評価までを総合的に扱った研究は世界的にも他に例がなく,遺伝子組換え薬用植物の実用化に向けたパイオニア研究としての意義は大きい.本研究ではまた,遺伝子組換え薬用植物の実用化に向けて解決しなければならない問題点を明らかにしており,今後の研究の発展に大きく貢献するものである.
臨床的観点からの成果
高い品質の生薬の供給を確保する基盤となる薬用植物の栽培法等に関するデータが得られた.
ガイドライン等の開発
遺伝子組換え薬用植物の環境に与える影響を評価するための具体的評価手法を,虫媒花に於ける花粉飛散距離の推定並びにアレロパシー試験法について設定可能とした.
その他行政的観点からの成果
特記事項なし
その他のインパクト
薬用植物の栽培に関する研究成果が「薬用植物●栽培と品質評価 Part 11」として出版され,広く一般に利用可能となった.

発表件数

原著論文(和文)
11件
原著論文(英文等)
23件
その他論文(和文)
1件
その他論文(英文等)
1件
学会発表(国内学会)
46件
学会発表(国際学会等)
9件
その他成果(特許の出願)
0件
「出願」「取得」計1件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
0件
その他成果(普及・啓発活動)
1件
「薬用植物●栽培と品質評価 Part 11」出版

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限ります。

原著論文1
I. Abe, T. Watanabe, H. Noguchi
Chalcone Synthase Superfmaily of Type III Polyketide Synthases from Rhubarb (Rheum palmatum),
Proc. Japan Acad. Ser. B , 81 , 434-440  (2005)
原著論文2
I. Abe, T. Watanabe, H.Morita, et al.
Engineered Biosynthesis of Plant Polyketides: Manipulation of Chalcone Synthase
Org. Lett. , 8 (3) , 499-502  (2006)
原著論文3
Shitan, N., Kiuchi, F., Sato, F, et al.
Establishment of Rhizobium-mediated transformation of Coptis japonica and molecular analyses of transgenic plant
Plant Biotechnology , 22 (2) , 113-118  (2005)
原著論文4
I. Abe, T. Watanabe, W. Lou, H, et al.
Active site residues governing substrate selectivity and polyketide chain length in aloesone synthase
FEBS Journal , 273 , 208-218  (2006)

公開日・更新日

公開日
2015-05-26
更新日
-