遺伝子治療を目指した新規バキュロウイルスベクターの開発

文献情報

文献番号
200500140A
報告書区分
総括
研究課題名
遺伝子治療を目指した新規バキュロウイルスベクターの開発
課題番号
H17-遺伝子-002
研究年度
平成17(2005)年度
研究代表者(所属機関)
松浦 善治(大阪大学微生物病研究所分子ウイルス分野)
研究分担者(所属機関)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 厚生科学基盤研究分野 ヒトゲノム・再生医療等研究【ヒトゲノム遺伝子治療研究】
研究開始年度
平成17(2005)年度
研究終了予定年度
平成19(2007)年度
研究費
40,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
遺伝子治療の成否を握るのは、安全に効率よく標的細胞へ遺伝子を導入でき、しかも大きな組み込み容量を持った遺伝子導入ベクターの開発である。本研究はバキュロウイルスの特性を高度に利用して、持続感染症やがんに対する遺伝子治療用のベクターの開発を目的とする。
研究方法
1)バキュロウイルス粒子表面へのリガンド分子の取り込み機構を解析し、広範なリガンドを複数搭載可能なベクターの可能性を検討した。2)バキュロウイルスベクターを用いて、ヒト肝臓由来細胞でC型肝炎ウイルス(HCV)様粒子(HCV-LP)を作製し、その性状を解析した。3)これまでに我々が報告してきた、バキュロウイルスゲノムによるToll-like receptor 9(TLR9)を介した抗ウイルス活性の誘導とは異なり、TLR9非依存的なIFNの誘導機構を解析した。4)3型E型肝炎ウイルス(HEV)のウイルス様中空粒子(HEV-LP)の作製を試みた。
結果と考察
1) バキュロウイルス粒子表面に目的分子を自在に搭載する方法論を確立できた。2)組換えバキュロウイルスを用いてヒト肝臓で作製したHCV-LPは、昆虫細胞で作製したHCV-LPとは異なり、ヒトCD81依存性に結合することから、HCV-LPのヒトCD81への結合には哺乳動物細胞における何らかの翻訳後修飾の関与が示唆された。3) バキュロウイルスによる自然免疫誘導には、TLR9非依存的なシグナル経路の存在が示唆された。バキュロウイルスの特性を活用した新しいウイルスベクターの開発は、遺伝子治療用ベクターとしてばかりでなく、新規DNAワクチンとしての可能性が示唆された。4)遺伝子型3のHEV-LPを作成することができた。今後、解離と再構成、外来遺伝子の取り込み効率、そして、投与経路を検討して、消化器や呼吸器系の粘膜をターゲットとした遺伝子治療用ベクターとしての可能性を検討する。
結論
1)バキュロウイルスのエンベロープ蛋白質を目的のリガンドに完全に置き換え組換えウイルスの作製系を構築し、ターゲッティングが可能なウイルスベクター系を開発した。2)組換えバキュロウイルスを用いてヒト肝臓細胞でHCV-LPを作製した。3) バキュロウイルスによる自然免疫の誘導には、TLR9非依存的なシグナル経路の存在が示唆された。4)組換えバキュロウイルスで遺伝子型3のHEV-LPを作製することができた。

公開日・更新日

公開日
2006-04-06
更新日
-