AAVベクターを用いた筋ジストロフィーに対する遺伝子治療のpre-clinical study-筋ジス犬骨格筋で認められた免疫応答の克服

文献情報

文献番号
200500137A
報告書区分
総括
研究課題名
AAVベクターを用いた筋ジストロフィーに対する遺伝子治療のpre-clinical study-筋ジス犬骨格筋で認められた免疫応答の克服
課題番号
H16-遺伝子-003
研究年度
平成17(2005)年度
研究代表者(所属機関)
武田 伸一(国立精神・神経センター神経研究所遺伝子疾患治療研究部)
研究分担者(所属機関)
  • 埜中 征哉(国立精神・神経センター武蔵病院)
  • 鈴木 友子(国立精神・神経センター神経研究所遺伝子疾患治療研究部)
  • 山元 弘(大阪大学大学院薬学研究科)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 厚生科学基盤研究分野 ヒトゲノム・再生医療等研究【ヒトゲノム遺伝子治療研究】
研究開始年度
平成16(2004)年度
研究終了予定年度
平成18(2006)年度
研究費
40,500,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
我々は,組換えアデノ随伴ウイルス(AAV)を用いて,短縮型でありながら,筋ジストロフィーの表現型を改善する能力を持つmicro-dystrophin遺伝子を用いた遺伝子治療についての研究を行ってきた。ジストロフィン欠損のDuchennne型筋ジストロフィーに対する臨床応用を図るために,ジストロフィン欠損の中型モデル動物である筋ジストロフィー犬を用いて組換えAAVの有効性を検証すると共に,カニクイザル骨格筋へ遺伝子を導入し,この方法論の安全性を検討する。
研究方法
1.正常対照犬の前・後肢筋に対し,LacZ遺伝子を組換えた血清Ⅱ型あるいはⅧ型の組換えAAVを導入し, 2,4,8週後に導入筋を採取し,組織学的に導入遺伝子の発現を検討する。さらに,組換えAAV導入の5日前より免疫抑制剤シクロスポリンとミコフェノレイト・モフェティルを毎日経口投与し,遺伝子発現及び細胞浸潤が改善されるかどうか検討する。

2.カニクイザルの左右の上腕筋及び前脛骨筋の計4箇所にLacZ遺伝子を組換えたⅡ型のAAVを直接注入し、1,2,4,週後に生検により解析する。
結果と考察
1.
(1)AAV8-CMVLacZを用いたイヌ骨格筋への導入では、AAV2-CMVLacZを用いた場合と比較して導入遺伝子の発現が高く、細胞浸潤についても減少傾向があった。なお、Ⅷ型AAVを用いたα-サルコグリカン欠損マウス骨格筋への導入では、遺伝子発現は導入部に留まらず、広い 範囲の骨格筋から検出された。
(2) cyclosporineにmycophenolate mofetilを併用して、Ⅱ型の組換えAAVをイヌ骨格筋に導入した場合には、免疫応答が軽減していた。
(3) 筋ジストロフィー犬骨格筋に導入するために、Ⅱ型およびⅧ型AAVにヒト型及びイヌ型マイクロ・ジストロフィン遺伝子を組み換えた。

2.カニクイザル骨格筋への組換えAAVの導入では、導入量依存的に遺伝子発現が観察されたが、導入量が多い場合には、比較的早くから免疫応答が検出された。

結論
1.組換えAAVを用いたイヌ骨格筋への遺伝子導入では、免疫抑制剤の併用およびⅧ型AAVの利用により、遺伝子発現効率が改善し、免疫応答が軽減する傾向があった。

2.カニクイザル骨格筋への組換えAAVの導入では、遺伝子導入産物の発現と、イヌの場合より軽い程度の免疫応答が検出された。

公開日・更新日

公開日
2006-04-07
更新日
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