文献情報
文献番号
200500135A
報告書区分
総括
研究課題名
ユビキチンシステムの多機能性を活用した脳神経系加齢性病態の克服
課題番号
H17-ゲノム-009
研究年度
平成17(2005)年度
研究代表者(所属機関)
和田 圭司(国立精神・神経センター神経研究所疾病研究第4部)
研究分担者(所属機関)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 厚生科学基盤研究分野 ヒトゲノム・再生医療等研究【ヒトゲノム遺伝子治療研究】
研究開始年度
平成17(2005)年度
研究終了予定年度
平成19(2007)年度
研究費
45,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-
研究報告書(概要版)
研究目的
ユビキチンシステムが不用蛋白質の分解系として機能するだけでなく、多数の蛋白質の活性制御に関与し様々な生命現象に深く係わるという多機能性を活用し、脳神経系の老化ならびに老化がもたらす痴呆などの病態について、ユビキチンシステム、特に脱ユビキチン化酵素から見た克服法を開発する。
研究方法
マウス胎仔脳における脱ユビキチン化酵素UCH-L1の発現を免疫組織化学的に解析した。また神経系上皮細胞を培養し野生型ならびに変異型UCH-L1が与える効果を遺伝子導入法により解析した。さらに各UCH-L1を大腸菌発現系を用いて精製し、その水溶液中の性状を中性子散乱法にて解析した。他方、脱ユビキチン化酵素UCH-L3の遺伝子欠損マウス網膜における神経細胞の変性を組織化学的、生化学的に解析した。(倫理面への配慮)動物を使用する研究計画はすべて国立精神・神経センター神経研究所動物実験倫理問題検討委員会で審議され承認を受けた。
結果と考察
結果
脱ユビキチン化酵素UCH-L1はマウス神経系前駆細胞にも発現し、UCH-L1が発現する細胞ではネスチン陽性神経突起の長さが短かった。UCH-L1を遺伝子導入した神経系前駆細胞は対照遺伝子の導入に比べネスチン陽性神経突起の長さが短かくなった。UCH-L1のこの活性は酵素活性に非依存的であった。また、中性子散乱法の結果、UCH-L1は水溶液中では二量体として存在することが示された。変異、多型に応じてその蛋白質の形状は変化することを検出した。UCH-L3欠損マウス視細胞では神経細胞死が亢進していることが示された。
考察
脱ユビキチン化酵素が神経系の形成とその機能維持を制御することが初めて示された。神経細胞老化がもたらす痴呆などの病態の修復法を開拓するには、UCH-L1とUCH-L3を機軸にした神経細胞老化の分子メカニズムの解明と脱ユビキチン化酵素の機能モニタリングによる神経系老化の評価系の構築が要求されるが今回の成果はその基盤形成に貢献するものである。また水溶液中で蛋白質を非破壊的に構造解析出来る手段が構築されたことで、脱ユビキチン化酵素を標的にした新たな創薬研究が展望できるようになった。
脱ユビキチン化酵素UCH-L1はマウス神経系前駆細胞にも発現し、UCH-L1が発現する細胞ではネスチン陽性神経突起の長さが短かった。UCH-L1を遺伝子導入した神経系前駆細胞は対照遺伝子の導入に比べネスチン陽性神経突起の長さが短かくなった。UCH-L1のこの活性は酵素活性に非依存的であった。また、中性子散乱法の結果、UCH-L1は水溶液中では二量体として存在することが示された。変異、多型に応じてその蛋白質の形状は変化することを検出した。UCH-L3欠損マウス視細胞では神経細胞死が亢進していることが示された。
考察
脱ユビキチン化酵素が神経系の形成とその機能維持を制御することが初めて示された。神経細胞老化がもたらす痴呆などの病態の修復法を開拓するには、UCH-L1とUCH-L3を機軸にした神経細胞老化の分子メカニズムの解明と脱ユビキチン化酵素の機能モニタリングによる神経系老化の評価系の構築が要求されるが今回の成果はその基盤形成に貢献するものである。また水溶液中で蛋白質を非破壊的に構造解析出来る手段が構築されたことで、脱ユビキチン化酵素を標的にした新たな創薬研究が展望できるようになった。
結論
UCH-L1ならびにUCH-L3は神経細胞の機能と生存に関して重要な調節因子であることを示した。また中性子小角散乱法を活用しUCH-L1の水溶液中における蛋白構造を世界で初めて決定した。
公開日・更新日
公開日
2006-04-04
更新日
-