輸入食品の寄生虫汚染制御に関する緊急研究

文献情報

文献番号
200501405A
報告書区分
総括
研究課題名
輸入食品の寄生虫汚染制御に関する緊急研究
課題番号
H17-特別-060
研究年度
平成17(2005)年度
研究代表者(所属機関)
遠藤 卓郎(国立感染症研究所 寄生動物部)
研究分担者(所属機関)
  • 川中正憲(国立感染症研究所 寄生動物部)
  • 小川和夫(東京大学 大学院 農学生命科学研究科)
  • 良永知義(東京大学 大学院 農学生命科学研究科)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 行政政策研究分野 厚生労働科学特別研究
研究開始年度
平成17(2005)年度
研究終了予定年度
平成17(2005)年度
研究費
9,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
平成17年の夏以降、中国産中間種苗由来の養殖カンパチにおけるアニサキス幼虫寄生や韓国産及び中国産キムチ中の回虫卵汚染等、諸外国から輸入される食品等の寄生虫汚染が問題となっている。カンパチについては中国の種苗地における生産の実態把握とそれを踏まえた輸入種苗の汚染状況の把握が求められ、ロット試験等に対応できる検査法が必要である。また、輸入キムチの寄生虫・原虫汚染に関しては、検査体制の充実に向けて検査方法の改良・開発を行うとともに、これまでに発生した輸入食品等の寄生虫汚染事例とその健康影響について検討し、健康影響の判断基準の設定に資すべき科学的な調査情報の充実を図る。
研究方法
中国のカンパチ種苗生産地において、養殖方法の検討からアニサキス汚染の可能性を調査するとともに、現地の監督官庁・研究機関との意見交換を行った。既存の検査方法を整理し、新たに生鮮魚に対するアニサキス検査法を開発し、その精度評価(添加・回収実験)を行った。キムチを対象とした寄生虫卵・原虫オーシストの検査法を改良・考案した。併せて、食品由来の寄生虫・原虫症に係る情報整理を行った。農産物生産における堆肥の熟成管理方法を検討した。
結果と考察
カンパチ種苗生産地の調査より、中国側関係者はアニサキス汚染問題に高い関心を寄せており、日本の要請を受けてカンパチ種苗養殖に冷凍餌等への転換が図られるなど、科学的根拠に基づいた要請は十分反映されることが示された。種苗、および生鮮食品からのアニサキス検査法を改良・開発し、7地研で添加・回収実験により実効性を検証したところ、筋肉から平均で88%、内臓から93%と良好な成績を得た。輸入キムチを対象とした回虫卵・原虫汚染に係る迅速・簡便な検査方法を確立し、キムチへの回虫卵添加実験で60~70%程度と高い回収率を得た。糞尿の堆肥化による温度上昇とそれに伴う病原微生物の殺滅・低減は慎重な検討が必要である.また、食品由来の寄生虫・原虫症に係る情報の充実を図るべくファクトシートを作成した。
結論
中国における、カンパチ種苗養殖において、アニサキス寄生に対する取り組みを確認した。種苗魚、生鮮魚を対象としたアニサキス検査及び食品における寄生虫卵等の検査法を改良した。さらに食品由来の寄生虫・原虫症のファクトシートならびにこれまでの汚染状況等にかかる資料の整理がなされた。

公開日・更新日

公開日
2009-04-03
更新日
-

行政効果報告

文献番号
200501405C

成果

専門的・学術的観点からの成果
アニサキスの検出方では紫外線照射下で線虫類の角皮が発する自家蛍光を観察する方法がとられる.その際、魚体の熱処理(電子レンジ加熱)工程を加えることで作業の効率化と迅速化が達成された.
キムチ等を対象とした寄生虫卵検査において、連続遠心法ならびに厚層塗抹法を適用することで著しい迅速化が図られた.また、密度勾配遠心法を適用することで、原虫類の検査にも適用できるよう設計した.
臨床的観点からの成果
食品中に混入したアニサキスを含めた寄生虫の食品を介して感染する恐れのある寄生虫・原虫類に関する情報をファクトシートにまとめた.
近年のアニサキス症発生事例の定点評価と食品混入異物の依頼鑑定にみるアニサキス幼虫の検出状況を整理した.
キムチ漬けの中での回虫卵の発育を確認した.
ガイドライン等の開発
これまでに報告されている魚体からのアニサキス幼虫の検出方法を整理し、改良点を加えて手引書にまとめた.
キムチ等の輸入食品からの寄生虫卵等の検出方法を整理・改良して手引書にまとめた.
食品を介して感染する恐れのある寄生虫・原虫類に関する情報をファクトシートにまとめた.
その他行政的観点からの成果
カンパチ種苗生産地の中国海南島を視察し、アニサキス汚染に至った経緯を調査し、問題点を整理した.
キムチ漬けの中での回虫卵の発育を確認し、生産過程で汚染があった場合の危険性を指摘した.
その他のインパクト
作成した手引書を関係機関に配布した.また、インターネット上に公開した.

発表件数

原著論文(和文)
2件
原著論文(英文等)
0件
その他論文(和文)
0件
その他論文(英文等)
0件
学会発表(国内学会)
3件
報告予定
学会発表(国際学会等)
0件
その他成果(特許の出願)
0件
「出願」「取得」計0件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
2件
厚生労働省が指導するアニサキスおよび輸入キムチの検査への利用を前提としている.
その他成果(普及・啓発活動)
2件
衛生微生物協議会で手引書を紹介した. 手引書を関係機関に配布.インターネット上で公開

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限ります。

原著論文1
川中正憲、荒木潤
アニサキス症 -発生状況とその予防-
食品衛生研究 , 56 (6) , 17-22  (2006)
原著論文2
川中正憲、杉山広、森嶋康之、荒川京子
カンパチなど養殖魚に寄生したアニサキス幼虫とその検査法について
食品衛生研究 , 56 (6) , 23-34  (2006)

公開日・更新日

公開日
2015-06-22
更新日
-