文献情報
文献番号
200501402A
報告書区分
総括
研究課題名
渡航移植者の実情と術後の状況に関する調査研究
課題番号
H17-特別-056
研究年度
平成17(2005)年度
研究代表者(所属機関)
小林 英司(自治医科大学分子病態治療研究センター臓器置換研究部)
研究分担者(所属機関)
- 福嶌 教偉(大阪大学大学院医学系研究科)
- 高原 史郎(大阪大学大学院医学系研究科)
- 江川 裕人(京都大学大学院医学研究科 附属病院 臓器移植医療部)
- 長谷川 友紀(東邦大学 医学部 社会医学講座 医療政策・経営科学分野)
- 篠崎 尚史(東京歯科大学 市川総合病院 角膜センター 眼科学)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 行政政策研究分野 厚生労働科学特別研究
研究開始年度
平成17(2005)年度
研究終了予定年度
平成17(2005)年度
研究費
5,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-
研究報告書(概要版)
研究目的
現在の我が国の渡航移植者の実情を把握し、今後の移植医療の改善のための基盤情報収集を目的に行った。
研究方法
海外渡航移植の実態を、臓器別の移植専門家(心臓-小児循環器疾患研究会、肝臓-日本肝移植研究会、腎臓-日本臨床腎移植学会)へのアンケートで行った。心臓移植調査は国内心臓移植施設7施設を含む 17施設に、肝移植の調査は、日本肝移植研究会施設会員(123施設)に質問調査を行った。質問項目は、現在の肝移植患者通院数、渡航移植通院患者数、渡航先・移植施設、斡旋・紹介の有無について。腎移植の調査は、平成17年度に日本臨床腎移植学会が行った腎移植集計に登録された腎移植施設(154 施設)を対象とし肝移植と同様の質問調査を行った。
結果と考察
1984年から2005年末までに103例が海外渡航心臓移植を受けた。男が64例、女性が39例。移植時年齢は、10才未満が32例、10-17歳が22例、18歳以上が49例であった。法制定までは、1995年に9例施行された以外は1-4例であったのが、法制定後施行数は増加し、2000年以降は毎年7例以上となり、2005年は15例の海外渡航心臓移植が施行された。渡航先は米国85例、ドイツ9例、英国7例、カナダ1例、フランス1例で、法制定後はイギリス、フランスでの受入はなかった。斡旋・紹介は全例明確であった。肝移植の調査は、120施設〔97.6%〕から回答を得た。83施設において2982名の肝移植患者が外来通院し、うち43施設において221名が海外で肝移植を受けていた。渡航先は12カ国にわたり、オーストラリア(20施設。術後我が国における通院施設数。以下同じ。)アメリカ(19施設)中国(14施設)が最も多かった。斡旋紹介に関しては、回答が得られないものがあった。腎移植の調査は、138施設〔90.0%〕から回答があった。136施設において8297名の腎移植患者が外来通院し、うち63施設において198名が海外で腎移植を受けていた。渡航先は9カ国にわたり、中国(48施設)フィリピン(20施設)アメリカ合衆国(18施設)が最も多かった。斡旋・紹介に関しては、回答が得られない例があった。
結論
我が国においては、生体移植成功率が高い医療水準にあるが、国内の脳死移植の体制が不十分な為に多額の医療費と生命のリスクをかけて他国民からの臓器提供を求めて渡航する現状を速やかに改善しなければならない。また肝や腎移植の一部でみられる不透明な状況は当事者が入手している医療情報の担保ができない。これらの不十分な情報を改善するためには学術的交流を続ける必要がある。
公開日・更新日
公開日
2006-06-06
更新日
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