文献情報
文献番号
199700008A
報告書区分
総括
研究課題名
諸外国における認定医制度・専門医制度に関する研究
課題番号
-
研究年度
平成9(1997)年度
研究代表者(所属機関)
酒井 紀(東急病院)
研究分担者(所属機関)
- 古瀬彰(JR東京総合病院)
- 村山正博(聖マリアンナ医大第二内科)
- 杉本恒明(公立学校共済組合関東中央病院)
研究区分
厚生科学研究費補助金 行政政策研究分野 厚生行政科学研究事業
研究開始年度
平成9(1997)年度
研究終了予定年度
-
研究費
800,000円
研究者交替、所属機関変更
-
研究報告書(概要版)
研究目的
諸外国における認定医制度・専門医制度に関しては体系的にまとまった資料が不足していた。このため米国を中心に英国、フランス、ドイツ、スウェーデンの5ケ国で現在実施している専門医制度の概要について調査し、わが国で昨年来検討が進められている医療提供体制の改革案に示されている「専門医制度の明確化、統一化された上で専門医の表示を広告事項に追加する」とする課題の参考にすることを目的とした。
研究方法
諸外国のなかで米国、英国、フランス、ドイツおよびスウェーデンの5ケ国の専門医制度を調査するために、以下の調査項目を設立した。 調査内容:(1)システム―診療科別の制度か、専門領域が上積み方式か、学会から独立した事業か、制度の運営など、(2)資格―専門医受験資格、更新制度の有無、専門医表示.(3)認定方法― 書類審査、試験の規模など。調査方法:学会認定医制協議会幹事、医学教育学会堀原一名誉教授、米国ロチェスター大学内科秋山俊雄教授および内科学会、外科学会、小児科学会の理事、さらに欧米に留学した医師に依頼、一部はインターネットにより情報を収集した。
結果と考察
1.米国の専門医認定制度の概要:米国の専門医制度は充実した卒後の医師研修制度の上に位置づけられ、研修医制度と専門医認定制度が密接に連携している。現在、24の診療科目の専門医を認定する機構と専門医養成のために臨床研修制度を認定する機構とがあり、それぞれ異なった機関で運営されている。(1)専門医の認定機関と専門医養成の臨床研修制度の認定機関;専門医を認定する診療科目は、24に大きく区分され、それぞれの診療科領域に一つの研修医制度と専門医認定制度をもっている。さらに、各診療科の専門医認定制度のなかには細分化した領域の専門医が存在し、それらの認定はその細分化した領域が属している大区分の診療科の専門医認定制度のなかに位置づけられている。米国のSpecialty Boardは合同で米国専門医認定機関【American Board of Medical Specialties(ABMS)】を組織しているが、ABMSは、さらにある特定の診療科の boardを発足させるためには米国医師会との合同の委員会の認可を受ける必要がある。このように、専門医認定機関は少なくとも機構上は学会や他の団体とは独立した存在となっていて、非営利的私的機関として設立されている。 各診療科の専門医養成のための臨床研修制度は、卒後臨床教育認定評議会【Accreditation Council for Graduate Medical Education(ACGME)】が認定するが、この評議会は?米国専門医認定機関?米国病院協会?米国医師会 ?米国医科大学協会?各専門医学会の評議員会の代表からなる委員と連邦政府の代表者や一般人などを含むメンバーで構成されている。実際に個々の臨床研修制度を調査し評価する実務はACGMEの下部組織である専門医養成研修制度評価委員会【Residency Review Committee (RRC)】が行い、それぞれのboardが担当する専門分野に該当する複数のRRCが存在する。専門医をめざす研修医はACGMEが承認した施設で研修を開始し、RRCが認定したtraining program(内科・小児科は3年、外科は4年)を終了しなければ専門医の認定資格を取得することはできない。さらに細分化した領域の専門医試験を受ける資格を取るためには大区分の基本診療科の専門医を取得後2~4年間の専門領域の研修を受けなければならない。(2)専門医申請資格と認定方法;専門医の申請資格はそれぞれの分野の専門医制度によって受験資格や審査方法が異なる。米国の医学教育課程を修了した資格をもち、医師免許を取得していると共にACGMEが認めた臨床研修を滞りなく終了していることが必須条件である。研修プロ
グラムを終了したか否かの最終判断は、診療科のProgram Directorにより判断が下されるが、それぞれの分野のtraining directorが、研修医を毎年評価することが義務づけられている。 専門医の認定方法は書類審査と試験である。書類審査では経験すべき疾患の種類・症例数などについて、各分野で詳細に規定されているので、研修医受け入れが認可された施設で充分な数の症例が経験できたかが審査される。試験は口頭(面接)試問と筆記試験であるが、24の大区分による専門医の認定には全て筆記試験が行われているが、口頭試問は外科・婦人科など15の区分の試験に課されている。合格率は、50~80%である。米国では医師総数の約65%が専門医資格を有し、専門医資格は自由に表示ができる。専門医資格の更新は、Boardによって違いがあり一般に7~10年で更新が義務づけられている。2.イギリスの専門医:卒前医学教育を終了した卒業生の多くは、general practitioner(GP)になる。GPの資格を取るためには3年間の卒後研修を受け、GP協会が実施するGP認定試験に合格する必要がある。専門医をめざす医師はSpecialist trainingに進むが、現在53の専門分野がある。専門医のtrainingはBasic specialist trainingとHigher specialist trainingの2つのstageに分けられている。基礎的trainingとして、各専門領域を3年間ローテートした後、Membership取得のための試験に合格し、内科系はMRCP、外科系はMRCSの資格を取得後、それぞれの専門分野のtraining progrumを4年~6年間にわたって研鑽して専門医となる。最後にJoint Training Committeeが審査し、パスすればCCST(Certificate of Completion of Specialist Training)の資格が与えられ専門医としての表示ができる。 3.フランスの専門医:卒後教育は一般医養成コースと専門医コースの2つに大きく分けられている。一般医養成コースは、国家試験に合格後2年間Residantの研修が義務づけられ、終了後論文審査に合格すると開業資格が得られる。卒業生の50~60%がこのコースに進む。専門医コースへの進学は、医学部最終学年時に難易度および競争率の高い専門医選抜試験に合格し進路が決まるが、成績順に6つの卒後の専門医コースへ分けられる。研修医は、Internatと呼ばれ、内科系は4年間、外科系は5年間の研修が必要で、内科系は18診療科、外科系は6診療科に細分化されている。研修終了時には論文審査によって医学国家博士が与えられ、施設長から専門研究証書(CES)をもらうと専門医資格が得られ、専門医として表示できる。 4.ドイツの専門医:二種類の卒業後の研修制度がある。 一つは卒業直後に行うAiP【Arzt im Prakutikumu(臨床研修医)】ともう一つは専門医としての研修コースである。 AiPは連邦の医師法によって規定され、医師国家試験合格後に18ヶ月間の臨床研修を行い、AiPの終了が認められると医師免許が交付される。 専門医としての研修コースは連邦医師会が規則を作り、専門医制度の運営は州医師会が行っている。卒後最低5年間の臨床研修が義務づけられている。専門科目は41に分けられているが、さらに専門科の重点領域の専門医をめざす場合には、最低2年以上の専門研修が必要となる。専門医の認定は、研修内容などの書類審査と口頭試問で行う。専門医の表示は必ず行われるが、一つの専門科に対して、原則として2個を超える重点領域の名称を併記することは禁止されている。 5.スウェーデンの専門医:卒業後21ヶ月の臨床研修が課せられ、研修終了の時点で施設指導医の評価を受け、合格すればNational Board of Health and Welfareから開業免許が与えられる。専門医研修は開業免許取得後開始される。現在60の専門医が認可されているが、専門医研修プログラムは医師会と医学会の代表で構成する委員会で作成する。研修期間は最低5年間で、専門医研修目標を達成した時、診療科の長が発行する資格証明書を取得し、専門医としての公的資格証明書を得る。補:近年、EU諸国間では相互に医師免許を認め、専門医資格は、相互承認に関する基本規定が通用する。
グラムを終了したか否かの最終判断は、診療科のProgram Directorにより判断が下されるが、それぞれの分野のtraining directorが、研修医を毎年評価することが義務づけられている。 専門医の認定方法は書類審査と試験である。書類審査では経験すべき疾患の種類・症例数などについて、各分野で詳細に規定されているので、研修医受け入れが認可された施設で充分な数の症例が経験できたかが審査される。試験は口頭(面接)試問と筆記試験であるが、24の大区分による専門医の認定には全て筆記試験が行われているが、口頭試問は外科・婦人科など15の区分の試験に課されている。合格率は、50~80%である。米国では医師総数の約65%が専門医資格を有し、専門医資格は自由に表示ができる。専門医資格の更新は、Boardによって違いがあり一般に7~10年で更新が義務づけられている。2.イギリスの専門医:卒前医学教育を終了した卒業生の多くは、general practitioner(GP)になる。GPの資格を取るためには3年間の卒後研修を受け、GP協会が実施するGP認定試験に合格する必要がある。専門医をめざす医師はSpecialist trainingに進むが、現在53の専門分野がある。専門医のtrainingはBasic specialist trainingとHigher specialist trainingの2つのstageに分けられている。基礎的trainingとして、各専門領域を3年間ローテートした後、Membership取得のための試験に合格し、内科系はMRCP、外科系はMRCSの資格を取得後、それぞれの専門分野のtraining progrumを4年~6年間にわたって研鑽して専門医となる。最後にJoint Training Committeeが審査し、パスすればCCST(Certificate of Completion of Specialist Training)の資格が与えられ専門医としての表示ができる。 3.フランスの専門医:卒後教育は一般医養成コースと専門医コースの2つに大きく分けられている。一般医養成コースは、国家試験に合格後2年間Residantの研修が義務づけられ、終了後論文審査に合格すると開業資格が得られる。卒業生の50~60%がこのコースに進む。専門医コースへの進学は、医学部最終学年時に難易度および競争率の高い専門医選抜試験に合格し進路が決まるが、成績順に6つの卒後の専門医コースへ分けられる。研修医は、Internatと呼ばれ、内科系は4年間、外科系は5年間の研修が必要で、内科系は18診療科、外科系は6診療科に細分化されている。研修終了時には論文審査によって医学国家博士が与えられ、施設長から専門研究証書(CES)をもらうと専門医資格が得られ、専門医として表示できる。 4.ドイツの専門医:二種類の卒業後の研修制度がある。 一つは卒業直後に行うAiP【Arzt im Prakutikumu(臨床研修医)】ともう一つは専門医としての研修コースである。 AiPは連邦の医師法によって規定され、医師国家試験合格後に18ヶ月間の臨床研修を行い、AiPの終了が認められると医師免許が交付される。 専門医としての研修コースは連邦医師会が規則を作り、専門医制度の運営は州医師会が行っている。卒後最低5年間の臨床研修が義務づけられている。専門科目は41に分けられているが、さらに専門科の重点領域の専門医をめざす場合には、最低2年以上の専門研修が必要となる。専門医の認定は、研修内容などの書類審査と口頭試問で行う。専門医の表示は必ず行われるが、一つの専門科に対して、原則として2個を超える重点領域の名称を併記することは禁止されている。 5.スウェーデンの専門医:卒業後21ヶ月の臨床研修が課せられ、研修終了の時点で施設指導医の評価を受け、合格すればNational Board of Health and Welfareから開業免許が与えられる。専門医研修は開業免許取得後開始される。現在60の専門医が認可されているが、専門医研修プログラムは医師会と医学会の代表で構成する委員会で作成する。研修期間は最低5年間で、専門医研修目標を達成した時、診療科の長が発行する資格証明書を取得し、専門医としての公的資格証明書を得る。補:近年、EU諸国間では相互に医師免許を認め、専門医資格は、相互承認に関する基本規定が通用する。
結論
米国、英国、フランス、ドイツ、スウェーデンの専門医制度を調査した。
専門医の認定制度は国による違いが大きいが、制度は学会から独立し、医師会との密接な関連をもって運営されている。専門医表示は各国共に広く認められ、 EU諸国間では専門医資格を相互承認している。米国の専門医制度は最も充実した内容をもち、広く社会に容認されている。
専門医の認定制度は国による違いが大きいが、制度は学会から独立し、医師会との密接な関連をもって運営されている。専門医表示は各国共に広く認められ、 EU諸国間では専門医資格を相互承認している。米国の専門医制度は最も充実した内容をもち、広く社会に容認されている。
公開日・更新日
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