E型肝炎ウイルスの献血者スクリーニング法の開発研究

文献情報

文献番号
200500127A
報告書区分
総括
研究課題名
E型肝炎ウイルスの献血者スクリーニング法の開発研究
課題番号
H17-特別-035
研究年度
平成17(2005)年度
研究代表者(所属機関)
池田 久實(北海道赤十字血液センター)
研究分担者(所属機関)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 行政政策研究分野 厚生労働科学特別研究
研究開始年度
平成17(2005)年度
研究終了予定年度
平成17(2005)年度
研究費
5,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
わが国では輸血を介したHEV感染が複数例確認され、輸血によるHEV感染リスクが問題視されている。輸血によるHEV感染防止対策を講じるには、献血者におけるHEV感染実態を明らかにすることが必要不可欠であり、これにはHEVスクリーニングに応用可能な検査システムが必要である。本研究は感度・特異性に優れ、かつ短時間に大量検体を処理可能なHEV-RNA検査システムの構築を目的とする。
研究方法
核酸抽出工程については、半自動核酸抽出装置QIAGEN BioRobot 9604の検体処理能力を評価した。核酸増幅・検出工程については、HEV-RNAを特異的かつ高感度に検出可能なリアルタイムRT-PCR法のプライマー・プローブを設計・合成し、その感度・特異性について評価した。以上の二つの工程を統合したHEV-RNA検査システムの性能を評価するために、北海道の献血者検体(総数約10万検体)を対象に、使用済みNATスクリーニング用検体を用いて、20本プールによるHEV NATを試験的に実施した。HEV NAT陽性が判明した検体については、Nested RT-PCR法で確認検査を行い、陽性が確認できた検体については、HEV抗体検査(IgM、IgG)、HEV-RNAの定量、分子系統樹解析を実施した。
結果と考察
核酸抽出に関しては、BioRobot 9604の検出感度を高めるために、専用キットの試薬構成を一部変更し、使用検体量も増量した。これに伴い新たに抽出プロトコールを作成した。また、核酸増幅・検出に関しては、ORF2/3の高度保存配列中にワンステップ・リアルタイム RT-PCR用のプライマー・プローブ配列を設定し、反応条件を決定した。このシステムの95%検出感度は約35 copies/mLと高感度で、他のウイルス(HBV、HCV、HIV-1)との交差反応は見られなかった。また96検体の検査所要時間は約6時間(用手時間は約2時間)で、1.5-2.0日掛かっていた従来法(AGPC法→Nested RT-PCR法→ゲル電気泳動法)に比べて大幅に短縮された。本システムを用いた献血者のHEV-RNA陽性頻度は約1/5000人と高く、19名の陽性者が確認された。このうち3名の陽性血は異なる3名の患者に輸血され、そのうち1名において感染が確認された。
結論
献血者のHEVスクリーニングに応用可能なHEV-RNA検査システムを構築し、これを用いて北海道内献血者のHEV-RNA陽性頻度調査を行ったところ、高いHEV陽性率が確認された。

公開日・更新日

公開日
2009-07-23
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

公開日・更新日

公開日
2007-01-19
更新日
-

行政効果報告

文献番号
200500127C

成果

専門的・学術的観点からの成果
献血者スクリーニングに応用可能なE型肝炎ウイルス(HEV)検査システムを構築した。本システムは感度・特異性に優れ、かつ短時間に大量検体を処理することが可能である。このシステムを用いて北海道地区の献血者約5万名を対象にHEV-RNAスクリーニングを実施したところ、高い陽性率が確認され、同地区でHEVが蔓延していることがわかった。世界的に見てもこれほど大規模に献血者におけるHEV-RNA陽性率を調査した例はなく、HEV感染の実態を知る上で極めて貴重かつ重要なデータである。
臨床的観点からの成果
これまで輸入感染症と考えられてきたHEV感染がわが国でも蔓延している実態が確認されるとともに、調査期間中に3例のHEV陽性血が患者に輸血され、詳細な経過観察がなされた。HEVの感染率、発症率、感染直後の臨床経過については世界的に見ても詳細なデータはなく、HEV感染の臨床経過を知る上で極めて貴重かつ重要なデータである。
ガイドライン等の開発
該当なし
その他行政的観点からの成果
今回構築したHEV検査システムによって、北海道地区の献血者のHEV陽性率が高いことが確認されたことから、同地区では本システムによる試験研究的なHEV NATスクリーニングを継続して実施中である。また、本システムによってHEV感染が判明した献血者の多くは動物内臓肉を摂取しており、今後、HEVの食物感染経路を解明し、HEV感染防御策を講じる上でも本調査データは極めて重要な資料となり得る。
その他のインパクト
北海道地区のHEV感染率が高いことが判明したことから、北海道赤十字血液センターでは献血推進用パンフレット『Donor Recruit No.26』でE型肝炎について紹介し、献血者のE型肝炎に対する認識を高める啓蒙活動を行った。

発表件数

原著論文(和文)
0件
原著論文(英文等)
0件
その他論文(和文)
0件
その他論文(英文等)
0件
学会発表(国内学会)
0件
学会発表(国際学会等)
0件
その他成果(特許の出願)
0件
「出願」「取得」計0件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
0件
その他成果(普及・啓発活動)
0件

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

公開日・更新日

公開日
2015-06-17
更新日
-