文献情報
文献番号
199700007A
報告書区分
総括
研究課題名
健康づくりのための休養の普及に資する基盤に関する研究
課題番号
-
研究年度
平成9(1997)年度
研究代表者(所属機関)
野崎 貞彦(日本大学医学部)
研究分担者(所属機関)
研究区分
厚生科学研究費補助金 行政政策研究分野 厚生行政科学研究事業
研究開始年度
平成9(1997)年度
研究終了予定年度
-
研究費
1,200,000円
研究者交替、所属機関変更
-
研究報告書(概要版)
研究目的
健康づくりの3要素うち休養は運動や栄養に比べて研究な課題であると考えられる。その方策の具体的な方向性を示し普及していく基盤を整備するために社会的なニーズや資源を調査検討していくことが必要となる。本研究では休養に対する具体的な方策を決定していくために必要な基盤について明らかとし、休養についての政策決定のうえでの方向性を提示することで健康づくりの推進に資することを目的とし、今回は特に対象者の属性による休養のあり方とその阻害要因より、休養の啓発やサービスを展開していくうえでの基礎資料とするための調査を実施した。
研究方法
調査対象者は都市近郊に在住の年齢、就労形態の異なる男女各100名の計200名とした。年齢について29歳以下、30より49歳まで、50歳以上の3カテゴリーに分け、就労形態は「就労」「主婦」「学生」「高齢」の4カテゴリーに分けた。用意した質問票を用いて面接またに電話による聞き取りにて調査した。質問項目は主に属性に関する質問群、休養指針内容の実践状況に関する質問群、休養の阻害要因に関する質問群とし、すべての項目に対し中間のない4段階の回答を用意した。これらの回答について単純集計とクロス集計により回答の特徴を検索した。さらに対象者属性と休養の実践状況との間の関連を調べ、どの属性で休養の実施状況が段階毎に分類されるかをχ自乗に基づく自動交互作用検出法により分析した。また、休養実践状況と阻害要因の関係も検索し、休養の推進における問題点についても検討した。
結果と考察
休養実践状況において、実践度が最も高いのは自由時間や入浴など自己完結型のものが主体で、逆に低いものは地域社会活動への参加や長期の休暇など周囲との関わりが必要とされるものであった。このことより、休養は個人的なものという考え方が支配的であり、休養を通じてソーシャル・サポートの形成を図るという人は少ないものと考えられる。休養実践状況と対象者の属性では、まず就労形態が、ついで年代が関連して影響があり、休養推進の標的採用集団としてのセグメンテーションには就労形態という社会性を配慮する必要性が示唆された。このことは、より有効な休養プログラムや休養の意義の普及活動に必要なものと考えられる。 ストレスの経験と他の休養指針項目と休養阻害要因との関連からは、ストレスの経験が健康への心配を促し、ソーシャル・サポートを大切にしている人にはストレスの経験が少ないという関連が成立することを示唆する結果となり、休養普及への動機づけとしてのストレス対策の意義とソーシャル・サポートの有効性が考慮されるべきと考えられた。 休養阻害要因は大きく「休養取得の環境」、「休養に対する態度」、「休養と健康意識」に分けられるが、このうちでも特に「体が丈夫なら休養なんていらない」という否定的な回答が多かったことは休養の一次予防としての必要性を今後もさらに訴えていく必要性があることを感じさせられた。休養に対する態度では、休養に対してかなり積極的である結果が認められた一方で、休養環境については、金銭的問題と時間的問題であまり自由にならないというような、やや否定的回答が多かった。阻害要因のうち回答の4つの選択肢の分布が比較的平均化している阻害要因について、休養実践状況との関係を見てみると、時間的要因では休養環境に関連する項目との関係が特に深かった。「現在いたって健康である」という質問項目は、ストレス経験の有無や体への自信、地域社会活動への参加など自分の健康状態への認識と社会との関わりという項目が関係していた。休養と病気とが関連あると考えている者では、自由時間の取得とともに活動仲間などの休養環境や体への自信という項目との関係が深かった
。このように、阻害要因については自分の健康状態や休養の必要性の認識とともに休養環境、とりわけ社会との関わりに関する項目に関係が深く、将来的な健康状態への予防という点よりの休養の必要性の認識を高めるとともに、ソーシャル・サポートの形成を促すことが重要であると考えられた。
。このように、阻害要因については自分の健康状態や休養の必要性の認識とともに休養環境、とりわけ社会との関わりに関する項目に関係が深く、将来的な健康状態への予防という点よりの休養の必要性の認識を高めるとともに、ソーシャル・サポートの形成を促すことが重要であると考えられた。
結論
従来よりの健康づくり対策においては、主として年齢を軸にした施策が実施されてきたが、今回のわれわれの研究では、健康づくりのための休養においては就労形態を配慮することが大切であり、これを機軸とした方策が効果的であることを示唆するものであった。阻害要因に対する対処の目標としては、休養の一次予防的重要性の認識を高めるとともに、ソーシャル・サポートの形成など休養環境の確立を促すことが最適であると考えられた。 今回の研究結果は健康づくりのための休養を効果的に推進していくのに必要となるソーシャル・マーケッティングを実施する際の基礎資料として意義のあるものと考えられる。
公開日・更新日
公開日
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更新日
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