脱法ドラッグの構造修飾特性とその依存性および神経毒性発現の関連性

文献情報

文献番号
200500107A
報告書区分
総括
研究課題名
脱法ドラッグの構造修飾特性とその依存性および神経毒性発現の関連性
課題番号
H17-特別-033
研究年度
平成17(2005)年度
研究代表者(所属機関)
舩田 正彦(国立精神・神経センター精神保健研究所薬物依存研究部)
研究分担者(所属機関)
  • 浅沼 幹人(岡山大学大学院医歯薬学総合研究科脳神経制御学講座神経情報学)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 行政政策研究分野 厚生労働科学特別研究
研究開始年度
平成17(2005)年度
研究終了予定年度
平成17(2005)年度
研究費
4,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
特定の違法ドラッグ(いわゆる脱法ドラッグ)を規制しても、その化学構造の一部を置換した薬物が登場し、乱用が繰り返されている。本研究では、MDMAのbenzylic positionがケトン基に置換されたメチロンの精神依存性および細胞毒性の発現を検討した。違法ドラッグの化学構造から、乱用危険度を推測するシステム構築を試みた。
研究方法
行動解析:マウスを使用して、運動量測定による中枢興奮作用およびconditioned place preference (CPP)法による精神依存性の評価を行った。細胞毒性の評価:セロトニン系培養神経細胞B65細胞およびドパミン系培養神経細胞CATH.a細胞を用いて、細胞毒性(LDH放出量測定)と形態学的変化を検討した。
結果と考察
行動解析:メチロン(5 mg/kg)により、運動促進作用が発現した。メチロン(2.5 mg/kg)により報酬効果が発現し、精神依存形成能を有することが確認された。メチロンは乱用される危険性が極めて高い薬物であることが判明した。細胞毒性の評価:B65細胞およびCATH.a細胞において、メチロンおよびMDMA (2 mM)単独暴露により、有意なLDH放出量の増加が確認された。併用実験では、B65細胞においてメチロンとMDMAの併用により、LDH放出量の増加、細胞死ならびにアポトーシス様形態変化の増強が確認された。一方、CATH.a細胞では、こうした相乗効果は認められなかった。メチロンはMDMAと同様に、モノアミン系培養神経に対して毒性を示し、MDMAとの同時乱用では強いセロトニン神経毒性をもたらす危険性があると考えられる。
結論
MDMA類似誘導体であるメチロンの解析より、MDMAのbenzylic positionがケトン基に修飾されても、MDMA同等の依存性および毒性を発現することが明らかになった。MDMA類似誘導体において、この部分の構造修飾に僅少の差異があっても、MDMAと類似した効果を発現する危険性がある。CPP法による依存性評価と培養細胞による毒性評価という一連の解析システムは、違法ドラッグの僅少修飾構造の差に基づいた、乱用危険度および毒性発現を推測する評価システム簡易版として利用可能である。このシステムによる危険度予測が可能になれば、新規違法ドラッグの出現を未然に防ぎ、乱用の悪循環を断つことができるものと期待できる。

公開日・更新日

公開日
2007-09-20
更新日
-

行政効果報告

文献番号
200500107C

成果

専門的・学術的観点からの成果
MDMA類似誘導体であるメチロンの解析より、MDMAのbenzylic positionがケトン基に修飾されても、MDMA同等の依存性および毒性を発現することが明らかになった。MDMA類似誘導体において、この部分の構造修飾に僅少の差異があっても、MDMAと類似した効果を発現する危険性がある。CPP法による依存性評価と培養細胞による毒性評価という一連の解析システムは、違法ドラッグの僅少修飾構造の差に基づいた、乱用危険度および毒性発現を推測する評価システム簡易版として利用可能である。
臨床的観点からの成果
特記事項なし。
ガイドライン等の開発
違法ドラッグであるMDMA類似誘導体の、薬物依存性および毒性に関する評価システム簡易版を作成した。今後、ガイドライン作成の基本資料として活用可能である。
その他行政的観点からの成果
CPP法による依存性評価と培養細胞による毒性評価という一連の解析システムは、違法ドラッグの僅少修飾構造の差に基づいた、乱用危険度および毒性発現を推測する評価システム簡易版として利用可能である。わが国の違法ドラッグ規制のための、科学的証拠を迅速に提供することができる。このシステムによる危険度予測が可能になれば、新規違法ドラッグの出現を未然に防ぎ、乱用の悪循環を断つことができるものと期待できる。
その他のインパクト
東京新聞(平成17年5月27日):「脱法ドラッグ.都条例罰則適用へ‐下‐」にて、違法ドラッグの依存性および毒性を警告するためのデータおよび資料を提供した。また、週間SPA(平成18年2月22日):「脱法&違法ドラッグの事情を追う!」にて、違法ドラッグの乱用現状と薬物の危険性を警告するためのデータおよび資料を提供した。解析データを使用して、違法ドラッグの危険性に関する講演(コミュニティーセンターakta平成18年3月19日)を行った。

発表件数

原著論文(和文)
0件
原著論文(英文等)
10件
その他論文(和文)
6件
その他論文(英文等)
0件
学会発表(国内学会)
15件
学会発表(国際学会等)
1件
その他成果(特許の出願)
0件
「出願」「取得」計0件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
0件
その他成果(普及・啓発活動)
3件

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限ります。

原著論文1
Sato M, Wada K, Funada M.
Barium potentiates the conditioned aversion to, but not the somatic signs of, morphine withdrawal in mice.
Eur J Pharmacol , 519 , 215-222  (2005)
原著論文2
舩田正彦,佐藤美緒,青尾直也他
依存性薬物による脳内遺伝子群の発現調節.
生体の科学 , 56 , 323-327  (2005)
原著論文3
Diaz-Corrales, F.J., Asanuma, M., Miyazaki, I. et al.
Rotenone induces aggregation of gamma-tubulin protein and subsequent disorganization of the centrosome: Relevance to formation of inclusion bodies and neurodegeneration.
Neuroscience , 133 , 117-135  (2005)
原著論文4
Asanuma, M., Miyazaki, I., Diaz-Corrales, F.J. et al.
Pramipexole has ameliorating effects on levodopa-induced abnormal dopamine turnover in parkinsonian striatum and quenching effects on dopamine-semiquinone generated in vitro.
Neurol. Res. , 27 , 533-539  (2005)
原著論文5
Miyazaki, I., Asanuma, M., Diaz-Corrales, F.J. et al.
Dopamine agonist pergolide prevents levodopa-induced quinoprotein formation in parkinsonian striatum and shows quenching effects on dopamine-semiquinone generated in vitro.
Clin. Neuropharmacol. , 28 , 155-160  (2005)
原著論文6
Ogawa, N., Asanuma, M., Miyazaki, I. et al.
L-DOPA treatment from the viewpoint of neuroprotection: Possible mechanism of specific and progressive dopaminergic neuronal death in Parkinson's disease.
J. Neurol. , 252 , 23-31  (2005)
原著論文7
Diaz-Corrales, F.J., Asanuma, M., Miyazaki, I. et al.
Centrosome overduplication induced by rotenone treatment affects the cellular distribution of p53 tumor suppressor protein in the neuroblastoma B65 cell line.
Psychiat. Clin. Neurosci. , 60 , 26-34  (2006)

公開日・更新日

公開日
2015-06-17
更新日
-