飲料水中のウイルス等に係る危機管理対策に関する研究

文献情報

文献番号
200500106A
報告書区分
総括
研究課題名
飲料水中のウイルス等に係る危機管理対策に関する研究
課題番号
H17-特研-027
研究年度
平成17(2005)年度
研究代表者(所属機関)
国包 章一(国立保健医療科学院 水道工学部)
研究分担者(所属機関)
  • 遠藤 卓郎(国立感染症研究所 寄生動物部)
  • 片山 浩之(東京大学大学院 工学系研究科)
  • 西尾 治(国立感染症研究所 感染症情報センター)
  • 矢野 一好(東京都健康安全研究センター 微生物部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 行政政策研究分野 厚生労働科学特別研究
研究開始年度
平成17(2005)年度
研究終了予定年度
平成17(2005)年度
研究費
2,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
 水道水等飲料水を介した、もしくはそのことが疑われるウイルス感染の事例、その他海外での感染事例などについて調査を行い、どのような場合に感染が発生するかを解析するとともに、水道等における現実的なウイルス対策のあり方及び方向性について総合的に取りまとめる。
研究方法
 既存知見などにつき主として文献調査を行った。
結果と考察
 水道水等飲料水において問題となる腸管系ウイルスを主な対象として取り上げ、以下の事項につき検討・整理した。
  1.水系感染の可能性がある腸管系ウイルスに関する基礎情報の整理
  2.最近重大な社会問題となっているウイルスに関する基礎情報の整理並びにその水道との関連に関する検討
  3.ウイルスによる過去の水系感染事例の整理・解析
  4.水道水のウイルス汚染の健康影響評価に関する検討
  5.浄水処理によるウイルスの除去・不活化に関する検討
  6.水中ウイルスの検査法に関する検討
  7.水道水等飲料水のウイルス汚染に係る危機管理対策の今後のあり方に関する検討
 水道水のウイルス汚染による感染症の発生は、食品のウイルス汚染による感染症の発生に比べてはるかに少ない。わが国では水道水の塩素消毒が義務づけられており、これが確実に行われている限りは、水道水のウイルス汚染による感染症の発生は基本的に防ぐことができると考えられる。しかし、今日、わが国の水道では下水処理水などの影響を受ける水域から原水を取水していることが多く、水道原水は腸管系ウイルスによって広く汚染されていると考えなければならない。
結論
 ウイルスによる感染症の発生を防ぐため、水道では塩素消毒を確実に行うだけでなく、万一汚染事故が起きた場合に備えて、最新の正しい科学知識に基づいてあらかじめ十分な対策を講じておくことが重要である。また、水道水等飲料水中のウイルスに関する知見はまだ非常に限られており、今後の研究にまたなければならないところが多い。

公開日・更新日

公開日
2006-04-27
更新日
-

行政効果報告

文献番号
200500106C

成果

専門的・学術的観点からの成果
 水道水等飲料水のウイルス汚染とそれに起因する感染症の発生は、今なお科学的に未解明の分野であり、保健衛生行政や水道行政における対策も十分とは言えないことから、現状における内外の最新知見や過去の汚染事例につき総合的に検討・整理し、水道水等のウイルス汚染に係る危機管理対策のあり方並びに今後の重要な研究課題を明らかにした。
臨床的観点からの成果
 水道水等飲料水のウイルス汚染による感染症の発生につき、最新の研究成果や過去の事例をもとに、ヒトへの健康影響、環境中での挙動、感染経路、わが国における感染実態、飲料水との関連性、検査法、予防、治療等につき網羅的・系統的に整理した。これらの情報は、今後における水道水等飲料水のウイルス汚染に係る危機管理対策を策定する上で、有効かつ重要な指針となるものである。
ガイドライン等の開発
 本研究では、上記のようにウイルスによる過去の水系感染事例等に関する情報を整理したほか、水道水等飲料水のウイルス汚染に係る危機管理対策のあり方を明らかにしており、これらの成果は今後におけるガイドライン策定の重要な基礎資料となるものである。
その他行政的観点からの成果
 これまで、水道水等飲料水のウイルス汚染に係る危機管理対策については、国によるガイドライン等が全く整備されていなかったことから、厚生労働省健康局水道課では、万一の場合に備えるためのガイドラインに準じた資料として、本研究の成果報告書を全国の主な自治体等に配布してその活用を促すことにしている。また、これとは別に、厚生労働省が新たに計画している飲料水危機管理ホームページに、本研究の成果を登載することも予定されている。
その他のインパクト
 近年、細胞培養が困難なウイルスであっても、分子生物学的手法の採用によって水道水中からもその遺伝子が検出されるようになり、全国の水道では水道水の安全性に関して新たな不安が高まっているが、本研究の成果は、このような問題についての正しい知識の普及に大いに貢献している。

発表件数

原著論文(和文)
1件
原著論文(英文等)
0件
その他論文(和文)
4件
その他論文(英文等)
0件
学会発表(国内学会)
0件
学会発表(国際学会等)
0件
その他成果(特許の出願)
0件
「出願」「取得」計0件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
1件
ガイドラインに準じた資料としての活用
その他成果(普及・啓発活動)
5件
全国主要自治体等への成果報告書配布。厚生労働省飲料水危機管理HPへの登載予定。著書分担執筆3件。

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

公開日・更新日

公開日
2016-05-25
更新日
-