文献情報
文献番号
200500103A
報告書区分
総括
研究課題名
わが国における日本脳炎の現状と日本脳炎ワクチンの必要性の評価に関する緊急研究
課題番号
H17-特別-024
研究年度
平成17(2005)年度
研究代表者(所属機関)
倉根 一郎(国立感染症研究所 ウイルス第一部)
研究分担者(所属機関)
- 岡部 信彦(国立感染症研究所 感染症情報センター)
- 竹森 利忠(国立感染症研究所 免疫部)
- 小林 睦生(国立感染症研究所 昆虫医科学部)
- 高崎智彦(国立感染症研究所 ウイルス第一部)
- 多屋 馨子(国立感染症研究所 感染症情報センター)
- 小西 英二(神戸大学 医学部 )
- 堀内 善信(国立感染症研究所 細菌第二部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 行政政策研究分野 厚生労働科学特別研究
研究開始年度
平成17(2005)年度
研究終了予定年度
平成17(2005)年度
研究費
8,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-
研究報告書(概要版)
研究目的
日本脳炎は高い致死率を示す重篤なウイルス性脳炎である。平成17年6月厚生労働省により現行マウス脳由来活化日本脳炎ワクチン接種の積極的勧奨が中止された。本研究においては、わが国における日本脳炎の現状を明らかにし、さらにワクチンの有効性と安全性に関する科学的基盤に基づき、日本脳炎ワクチンの必要性を明らかにすることを目的とした。
研究方法
主任研究者、分担研究者計8名の計9名で遂行した。研究は(1)日本脳炎および他の急性脳炎の患者サーベイランス、(2)日本脳炎ウイルスの活動状況、(3)日本脳炎ワクチンの必要性、(4)日本脳炎ワクチンの安全性、の4つの大テーマに分けて遂行した。
結果と考察
以下の結果を得た。(1)わが国における急性脳炎、髄膜炎患者においては約7割が病原体不明として届けられており、日本脳炎ウイルスの病原体としての検索は十分にはなされていない、(2)現在でも夏季日本脳炎ウイルス感染蚊が検出される、またイヌ、ネコにも抗体陽性が認められることから、ヒトの生活圏においてウイルス感染蚊が活動している、(3)病原体が同定されていない急性脳炎、無菌性髄膜炎患者の髄液検体に日本脳炎遺伝子が検出される例がある、また東京都において年間自然感染数%と推計される、(4)わが国における小児の急性散在性脳脊髄炎(ADEM)の発生が年間60-120と推計され、日本脳炎ワクチンの接種が集中する5-8月に発生が集中することはない、また、マウスモデルにおいてはマウス脳由来日本脳炎ワクチンによって直接的に実験的自己免疫性脳脊髄炎を誘導することはできない、という結果を得た。以上の結果は、わが国においては日本脳炎ウイルス感染が臨床の現場で十分に診断されていないこと、また我々は今日でも日本脳炎ウイルス感染の危険性にさらされていることを示している。
結論
日本脳炎ウイルス感染が臨床現場で十分に検査の対象となっていない。一方、今日でも日本においては夏季日本脳炎ウイルス感染媒介蚊が存在し、ヒトは日本脳炎ウイルスに定期的に感染している。日本脳炎は発症すれば致死率20%、また50%は死を免れても精神神経に後遺症を残す重篤な感染症であり、予防にはワクチン接種が最も有効な方策である。従って、日本脳炎ワクチンは今日でもわが国にとり公衆衛生上重要でありわが国にとって必要なワクチンといえる。
公開日・更新日
公開日
2009-04-08
更新日
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