スギヒラタケの有害成分に関する研究

文献情報

文献番号
200500101A
報告書区分
総括
研究課題名
スギヒラタケの有害成分に関する研究
課題番号
H17-特別-037
研究年度
平成17(2005)年度
研究代表者(所属機関)
米谷 民雄(国立医薬品食品衛生研究所 食品部)
研究分担者(所属機関)
  • 穐山 浩(国立医薬品食品衛生研究所 食品部)
  • 近藤 一成(国立医薬品食品衛生研究所 食品部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 行政政策研究分野 厚生労働科学特別研究
研究開始年度
平成17(2005)年度
研究終了予定年度
平成17(2005)年度
研究費
7,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
平成16年秋に、東北・北陸地方を中心に原因不明の急性脳症が疑われる患者の報告が多数あり、共通因子を検索していくと、スギヒラタケ摂取と腎透析(腎障害)が浮上した。そこで、スギヒラタケ摂取が急性脳症の原因であるとの前提にたち、昨年度後半に緊急的にスギヒラタケに関連した有害成分について、農薬やカビ等も含めて、分析を開始した。研究期間が短いこともあり、原因化学物質の究明には至らなかった。今年度は、スギヒラタケに元々含まれている成分に的をしぼり、有害成分の分析を継続した。
研究方法
①スギヒラタケ成分の天然物化学的研究においては、スギヒラタケ中のUV検出成分につき、患者発生地域からの試料に特異的な成分を単離し同定した。②スギヒラタケ成分の衛生学的研究においては、スギヒラタケ中のシアンイオン及びチオシアン酸イオンを定量し、また、スギヒラタケレクチンの特異性を検討し、さらに、メタボロ-ム手法を用いてスギヒラタケ中に含まれる代謝産物を網羅的に分析した。
結果と考察
①UV検出成分として、新規の3種の共役ケトン型脂肪酸を単離した。16年産試料と比較して、17年産では分子量610と考えられる成分の減少以外に、低分子化合物の年度による差はほとんどなかった。有毒成分ムシモール、イボテン酸、5-ヒドロキシトリプタミン、カイニン酸、ドーモイ酸、α-アマニチンは含まれていなかった。冷水エキスのイオン交換カラム画分である酸性・中性画分に、マウス(ddY雄)致死活性が認められた(60g/kg i.p.)。また、この毒性には年度差が見られた。一方、脂溶性、アルカロイド両画分には活性はなかった。今後、同一産地での成分の年度間差を精査することで、原因物質解明の手がかりが得られる可能性があると考えられた。②シアンイオンは17年産に比べ16年産で比較的高値で検出された。急性脳症の症例報告の病態を考慮すると、原因の候補としてシアン中毒の可能性も考えられた。また、新規スギヒラタケレクチンについて詳細に糖結合特異性を解析し、さらに、メタボロ-ム手法を用いてスギヒラタケ中に含まれる代謝産物を網羅的に分析し、採取地域による代謝産物の差を検出し、原因成分の推測を行った。
結論
急性脳症の関与物質として、シアンイオンなどいくつかの候補が浮上してきたが、さらに今後の検討が必要である。

公開日・更新日

公開日
2006-04-25
更新日
-

行政効果報告

文献番号
200500101C

成果

専門的・学術的観点からの成果
平成16年秋に東北・北陸地方を中心に原因不明の急性脳症患者が多数報告され、スギヒラタケ摂取が共通因子として浮上してきた。そこで、スギヒラタケに含まれている成分について分析した。その結果、急性脳症の関与物質としてシアンイオンなどいくつかの候補が浮上してきたが、さらに今後の検討が必要である。これまでの成果の一部は、J. Health Scienceに掲載し、また、日本薬学会や日本食品衛生学会学術講演会において4回発表した。
臨床的観点からの成果
急性脳症の症例報告による病態を考慮すると、急性脳症の原因の候補としてシアン中毒の可能性も考えられた。また、メタボロ-ム手法を用いてスギヒラタケ中に含まれる代謝産物を網羅的に分析し、採取地域による代謝産物の差を検討した結果、原因成分としてプロビタミンD関連化合物も候補として考えられた。しかし、いずれの場合も、今後のさらなる検討が必要である。
ガイドライン等の開発
特になし。
その他行政的観点からの成果
平成17年5月11日の平成17年度食品安全行政講習会において、都道府県等の食品行政担当者にそれまでの経過と成果について説明した。
その他のインパクト
今年度は2回目の特別研究であるが、前回の研究班が編成された際には、平成16年11月5日付の読売新聞などに、研究班が編成された記事が掲載された。

発表件数

原著論文(和文)
0件
原著論文(英文等)
1件
Journal of Health Science, 52(1), 73-77 (2006)
その他論文(和文)
0件
その他論文(英文等)
0件
学会発表(国内学会)
4件
日本食品衛生学会第90回学術講演会(1件),日本薬学会第126年会(3件)
学会発表(国際学会等)
0件
その他成果(特許の出願)
0件
「出願」「取得」計0件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
0件
その他成果(普及・啓発活動)
1件
平成17年度食品安全行政講習会

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限ります。

原著論文1
Kondo K., Watanabe A., Maitani T., et al.
Analysis of agaritine in mushrooms and in agaritine-administered mice using liquid chromatography-tandem mass spectrometry.
J.Chromatography. , 834 , 55-61  (2006)
原著論文2
渡邉敬浩、笠間菊子、米谷民雄、他
遺伝子組換えトウモロコシ(Mon810系統)の定量PCR法を対象とした外部精度管理試験
食品衛生学雑誌 , 47 (1) , 15-27  (2006)
原著論文3
Megumi Hamano Nagaoka, Hiroaki Nagaoka, Tamio Maitani, et al.
Measurement of a genotoxic hydrazine, agaritine, and its derivatives by HPLC with fluorescence rivatization in the Agaricus mushroom and its products.
Chemical and Pharmaceutical Bulletin , 6  (2006)
原著論文4
T. Tsutsumi, Y. Amakura, T. Maitani, et al.
Screening for dioxins in retail fish using a combination of a PCB ELISA and an aryl hydrocarbon receptor immunoassay (Ah-immunoassay).
Organohalogen Compounds , 67 , 42-45  (2005)
原著論文5
Y. Amakura, T. Tsutsumi, T. Maitani, et al.
Interaction of the aryl hydrocarbon receptor with several constituents from spinach and komatsuna extracts determined using in vitro bioassay.
Journal of Health Science , 51 (6) , 715-719  (2005)
原著論文6
笠間菊子、渡邉敬浩、米谷民雄、他
遺伝子組換えダイズ(ラウンドアップ・レディー・大豆40-3-2系統)の定量検査法の外部精度管理試験
食品衛生学雑誌 , 46 (6) , 270-276  (2005)
原著論文7
Y. Amakura, T. Tsutsumi, T. Maitani, et al.
Contamination levels of PCDDs, PCDFs and Co-PCBs in commercial baby foods in Japan.
J. Food Hyg. Soc. Japan , 46 (4) , 148-152  (2005)
原著論文8
Matsuda R, Tsutsumi T, Maitani T., et al.
The proficiency testing of determination of dioxins in food.
Organohalogen Compounds , 66 , 587-592  (2004)
原著論文9
穐山 浩、中村健人、米谷民雄、他
特定原材料(落花生)測定の厚生労働省通知ELISA法確立のための複数機関による評価研究
食品衛生学雑誌 , 45 (6) , 325-331  (2004)
原著論文10
穐山 浩、中村健人、米谷民雄、他
特定原材料(そば)測定の厚生労働省通知ELISA法確立のための複数機関による評価研究
食品衛生学雑誌 , 45 (6) , 313-318  (2004)
原著論文11
佐藤恭子、植松洋子、米谷民雄、他
標準添加法を用いたヘッドスペースGCによる天然香料中残留溶媒分析
食品衛生学雑誌 , 45 (6) , 302-306  (2004)
原著論文12
T. Watanabe, H. Kuribara, T. Maitani, et al.
New qualitative detection methods of genetically modified potatoes.
Biol. Pharm. Bull. , 27 (9) , 1333-1339  (2004)
原著論文13
中尾朱美、真子俊博、米谷民雄、他
学校給食用食品中の特定原材料「卵」の検出に関する研究
日本食品化学学会誌 , 11 (2) , 75-80  (2004)
原著論文14
穐山 浩、五十鈴川和人、米谷民雄、他
特定原材料(小麦)測定の厚生労働省通知ELISA法確立のための複数機関による評価研究
食品衛生学雑誌 , 45 (3) , 128-134  (2004)
原著論文15
穐山 浩、五十鈴川和人、米谷民雄、他
特定原材料(牛乳)測定の厚生労働省通知ELISA法確立のための複数機関による評価研究
食品衛生学雑誌 , 45 (3) , 120-127  (2004)
原著論文16
C. Wakui, H. Akiyama, T. Maitani, et al.
A Histochemical method using a substrate of β-glucuronidase for detection of genetically modified papaya.
J. Food Hyg. Soc. Japan , 45 (1) , 19-24  (2004)
原著論文17
Hiroshi Akiyama, Toshihiko Toida, Tamio Maitani, et al.
Determination of cyanide and thiocyanate in Sugihiratake mushroom using HPLC method with fluorometric detection.
Journal of Health Science , 52 (1) , 73-77  (2006)

公開日・更新日

公開日
2015-06-22
更新日
-