高度放射線治療施設の整備計画に関する研究

文献情報

文献番号
200500099A
報告書区分
総括
研究課題名
高度放射線治療施設の整備計画に関する研究
課題番号
H17-特別-019
研究年度
平成17(2005)年度
研究代表者(所属機関)
森山 紀之(国立がんセンターがん予防・検診研究センター)
研究分担者(所属機関)
  • 池田 恢(国立がんセンター中央病院)
  • 江角 浩安(国立がんセンター東病院臨床開発センター)
  • 中川 恵一(東京大学医学部)
  • 井上 俊彦(蘇生会病院)
  • 信友 浩一(九州大学大学院医学研究科)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 行政政策研究分野 厚生労働科学特別研究
研究開始年度
平成17(2005)年度
研究終了予定年度
平成17(2005)年度
研究費
3,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
手術療法と比較して低侵襲でありQOLを保つことが可能な放射線治療が注目を浴びている。特に陽子線、重イオン線に代表される粒子線がん治療については線量のピークを患部合わせることが可能なことより今後の全国的な普及に期待が寄せられている。本研究においては我が国におけるこれらの高度放射線治療施設の整備計画について現状の把握、適応の検討、支援体制の分析、費用面での検討を行い問題点、今後解決すべき問題点を明らかとし、これらを総合して我が国における高度放射線治療施設の適正配備についての一定の見解を得る
研究方法
放射線治療専門医、画像診断医およびがん臨床研究開発に携わっている専門家により粒子線治療の現況の把握調査と粒子線治療を検討中の施設の調査を行いこの調査結果と支援体制の現状に基づき我が国における粒子線治療施設の適正整備に関する意見交換を粒子線治療の適応、支援体制、費用面の観点を中心に行い一定の見解を得る
結果と考察
陽子線、重イオン線を用いた高度放射線治療施設の適正な整備計画については現状の配置状況、陽子線治療への適応、支援体制の分析、患者確保、費用面での検討を行った。今後新たに設立される施設については施設運営についての財源、運営を行う上での患者獲得数の確保の可能性、高度の技術を有する放射線治療医、医学物理士、治療専任診療放射線技師の確保についての基準を明らかとし適切な審査が行われるようにすべきと考える。粒子線治療への適応については各臓器の専門医と放射線治療医からなる班研究を開始し、医学的な適応に加え治療効果、生存率、QOL、他治療との効果および費用の比較についてのデータに基づいた適応条件を確立させるべきと考える
結論
現時点における陽子線、重イオン線を主体とした高度放射線治療施設の適正配置については適応条件の確定および他治療方法との効果、侵襲、費用および医療政策についての検討が不十分であり、現状では現在稼働中の6ヶ所に加えて北海道1、東北1、九州1、四国1を加えた計10?12ヶ所程度が限界と考える。現状ではこの程度の数の施設で粒子線治療に対する臨床研究をさらに続けデータの集積を行うべきと考える。今後専門医と放射線治療医との班研究を開始すること、放射線治療の人的支援対策を具体的に進めることと紹介システムの構築が急務と考える

公開日・更新日

公開日
2006-10-17
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

公開日・更新日

公開日
2006-09-27
更新日
-

行政効果報告

文献番号
200500099C

成果

専門的・学術的観点からの成果
高度放射線治療施設の整備計画について現状の把握,適応の検討,支援体制の分析,費用面での検討を行い,適正配備についての一定の見解を得た.配備数については現在稼働中の6ヶ所に加えて北海道1,東北1,九州1,四国1を加えた計10~12ヶ所程度が限界と考える.今後の対策としては適応を厳格にするために各臓器における臨床の専門医と放射線治療医との班研究を開始すること,粒子線治療を含めた放射線治療が適正に行われるための人的支援対策を進めることと放射線治療が必要な患者の紹介システムの構築が急務と考える
臨床的観点からの成果
に他の治療方法でも治療可能であるが、粒子線治療法でも行えるもの、粒子線治療法によってより効果のある治療が行えるもの、粒子線治療法でなければいけないものが明確に区別されていない現状と考えられた。陽子線と重イオン線との比較については同量照射線量において、対腫瘍効果においては重イオン線が優れているが、陽子線と重イオン線との棲み分けは不鮮明である。解決するためには臨床に携わる各臓器別の専門医を主体としこれに放射線治療医を加えた粒子線治療の適応と効果判定に関する研究班を早急に立ち上げるべきと考える
ガイドライン等の開発
現状の粒子線治療における問題点と今後の設置に際して解決すべき問題の整理を行った.粒子線の適応については他の治療法との比較を臨床的,QOL,対費用効果の観点から見直し適応を明らかとすることが必要と考えた.支援体制としては放射線治療医,物理士,技師の確保・育成と身分の保証が不可欠と考えられた.患者の確保については診療連携を含めた患者供給体制システムの構築が必要と考えられた。新施設の設置に関しては高度の専門的知識を有する職員,安定した患者数の確保,運営に対する財源等に基づいて厳しい審査が必要と考える
その他行政的観点からの成果
現在放射線診断医が約400名,医学物理士が約70名,医学物理士においてはその身分さえも確立していない.放射線治療専任医の常勤施設は30%程度,治療専任放射線技師の常勤施設は50%で,行政的に人的支援体制での育成,身分の保証,教育,訓練等の人材養成のインフラの充実が急務である.患者の確保についてはシステムの構築が不可欠と考える.新たな粒子線施設の設置については人材,患者の確保,施設整備,運用に関する財源等の審査が必要と考えられた.現状では粒子線施設数は稼働中のものを含め10~12施設が適切と考える
その他のインパクト
粒子線治療の適応と考えられる症例数は年間32,977人推定されており一施設が年間600~800名の患者の治療を行うとすれば我が国では40~55の粒子線施設が必要との意見が提出されている。しかしながらこれらのデータの基となった粒子線治療の適応は放射線治療医が中心となった決定したものであり必ずしも臨床の要求を反映したものとは言えず病期、他治療法、予後、QOL、対費用効果の面から各臓器の専門医と放射線治療とからなる班研究を立ち上げるべきであり、放射線治療医の中にもこの意見に同調する医師は数多く存在する

発表件数

原著論文(和文)
0件
原著論文(英文等)
6件
その他論文(和文)
0件
その他論文(英文等)
3件
学会発表(国内学会)
1件
学会発表(国際学会等)
2件
その他成果(特許の出願)
0件
「出願」「取得」計0件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
0件
その他成果(普及・啓発活動)
0件

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

公開日・更新日

公開日
2015-05-26
更新日
-