行政処分を受けた医師に対する再教育モデル事業に関する研究

文献情報

文献番号
200500097A
報告書区分
総括
研究課題名
行政処分を受けた医師に対する再教育モデル事業に関する研究
課題番号
H17-特別-016
研究年度
平成17(2005)年度
研究代表者(所属機関)
加藤 則子(国立保健医療科学院 研修企画部)
研究分担者(所属機関)
  • 曽根 智史(国立保健医療科学院 公衆衛生政策部)
  • 小泉 俊三(佐賀大学 医学部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 行政政策研究分野 厚生労働科学特別研究
研究開始年度
平成17(2005)年度
研究終了予定年度
平成17(2005)年度
研究費
5,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
「行政処分を受けた医師に対する再教育に関する検討会」の報告書の方針に沿って、現行制度のもとで行政処分を受けた医師に対する再教育助言指導のあり方を検討し、今後再教育が義務化された時に必要となる具体的な運用の問題点を洗い出し、その解決策について検討を行う。
研究方法
厚生労働省と充分な連携を取りながら以下の内容について検討を行った。
助言指導者の養成について:助言指導者養成カリキュラムの作成、助言指導者講習会の開催。
再教育の実施主体について:再教育を提供する実施主体に関する調査(誰が、いつ、どこで、どのような内容を提供するのか)、被処分者へどのように情報提供するか
再教育の提供について:技術研修、倫理研修実施の問題点の整理。
検討の実施に当たり、各都道府県医師会の医療安全等の担当理事を参加者として招聘しワークショップを開いて以上の論点について議論を行った。実際には、都道府県医師会から11名の参加者を得てワークショップが行われた。グループワークによりブレーンストーミングが行われ、様々な意見が吸い上げられた。
結果と考察
助言指導者のあり方として、被処分医にどう接するべきかについては、高圧的態度はとらない、心情を聴取する、なぜこの様な結果になったのか被処分医師の悩みを共有し一緒に考える、亡くなった人や家族の気持ちを思いやってもらう、等が重要である事が分かった。
医療事故に対する再教育助言指導の目標として、手術適応や技能・技術および社会との関わりの確立を設定し、医療理論を自覚し自己の医療水準を再確認する一方、被害にあった患者への視点および注意義務違反に関する目標も必要と思われた。
不正請求事例に対する再教育助言指導の目標として、自らの行為の違法性を認識し、関係規則・法規を理解する事、および職業倫理講座や医の倫理網領を理解する事により高い倫理観を身につける事が設定された。
プログラム実施の方略については、懲罰的プログラムになり過ぎないほうがよく、社会奉仕活動を組み込む事については、医師のプライドを損なうようなものよりは一度アイスブレーキングする事を狙ってゆくのがよいと思われた。
結論
再教育をどのようにするかは個々のケースによっても違い、難しい問題である。個別性に応じた目標を立て、被処分医の心情に沿ってアイスブレーキングを狙ってゆく等の解決策が示唆された。

公開日・更新日

公開日
2006-10-17
更新日
-

行政効果報告

文献番号
200500097C

成果

専門的・学術的観点からの成果
行政処分を受けた医師への再教育のあり方というこれまでにない観点の研究課題について取り組み、その指針という成果を得ることが出来た。米国並びに英国では行政処分の一環として再教育を実施しているため、本研究成果により我が国においても、当該分野に置いて諸外国と同等の水準に近づくことが出来た。
臨床的観点からの成果
医療事故、不正請求といった臨床現場に直結した事項について行政処分を受けた事例について検討を行ったため、臨床方面からも関心の高い研究成果が得られている。
ガイドライン等の開発
平成17年4月、厚生労働省の「行政処分を受けた医師に対する再教育に関する検討会」において、医業停止処分を受けた医師に対して「再教育を義務づけることが必要である」とする報告書がまとめられた。その再教育の具体的な内容については、指針となるものが示されることが求められていた。本研究によって再教育が義務化されたときに必要となる具体的な運用の問題点をブレインストーミングによって洗い出し、その解決策について指針を得ることが出来た。
その他行政的観点からの成果
平成17年4月、厚生労働省の「行政処分を受けた医師に対する再教育に関する検討会」において、被処分医の再教育の必要性が明らかにされた。本研究によって再教育が義務化されたときに必要となる具体的な運用の事項についての問題点を具体的に整理できた。これにより平成18年度に行われる被処分医への指導助言者養成のための予算獲得の必要性について明らかにすることが出来た。また、医師法の改正によって平成19年度に被処分医の再教育が義務化されることに向けての基礎資料とすることが出来た。
その他のインパクト
現在、医業停止を受けた医師(被処分者)の場合は、医業停止期間を過ぎれば、特段の条件なく医業に復帰している。しかし、被処分者は職業倫理の欠如や医療技術の未熟さ等があって、行政処分のみでは反省や適正な医業の実施が期待できない。近年では、医療事故等、医師の資質の向上に関する報道が多く、医師の行政処分の在り方についても、国民から重大な関心を寄せられているところである。本研究により、被処分医師の再教育によってこういった国民のニードに答えてゆく方向性が明らかにされた。

発表件数

原著論文(和文)
0件
原著論文(英文等)
0件
その他論文(和文)
0件
その他論文(英文等)
0件
学会発表(国内学会)
0件
学会発表(国際学会等)
0件
その他成果(特許の出願)
0件
「出願」「取得」計0件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
3件
平成18年度に行われる再教育助言指導者養成へ向けての契機となった  平成19年度に被処分医の再教育義務化に向けての布石となった  被処分医の助言指導のあり方についての指針を示した
その他成果(普及・啓発活動)
2件
行政処分を受けた医師を再教育をして現場に返すことについて検討したことで、謝意に対する責任を果たすことが出来た。  国民が安心して医療を受けられる礎を作ることが出来た

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

公開日・更新日

公開日
2015-05-26
更新日
-