多施設共同臨床研究:自己骨髄細胞を用いた肝臓再生療法の開発(LRCT study)

文献情報

文献番号
200500096A
報告書区分
総括
研究課題名
多施設共同臨床研究:自己骨髄細胞を用いた肝臓再生療法の開発(LRCT study)
課題番号
H17-特別-015
研究年度
平成17(2005)年度
研究代表者(所属機関)
沖田 極(山口大学医学部)
研究分担者(所属機関)
  • 坂井田 功(山口大学医学部)
  • 寺井 崇二(山口大学医学部)
  • 葛西 眞一(旭川医科大学)
  • 渡辺 守(東京医科歯科大学)
  • 河田 純男(山形大学医学部)
  • 仁科 博史(東京医科歯科大学)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 行政政策研究分野 厚生労働科学特別研究
研究開始年度
平成17(2005)年度
研究終了予定年度
平成17(2005)年度
研究費
25,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
(自己骨髄細胞を用いた肝臓再生療法)の早期実用化のために、平成16年度までに施行したPhaseI臨床研究により開発した基盤技術を、他の施設においても施行可能にすることは重要である。本研究では多施設による臨床研究実施体制(Liver Regeneration with Cell Transplantation (LRCT) Study Group)の確立、実際の実施を目指した。
研究方法
対象は75歳以下、非代償性肝硬変症,ビリルビンの値は3mg/dl以下、肝癌はコントロールされていること、また心肺機能正常の患者である。全身麻酔下にて、自己骨髄細胞を400ml採取し骨髄液は濃縮器セルプロセッサーCytomateを使用し骨髄細胞を濃縮・洗浄し、患者の末梢静脈より投与する。血液検査を施行し,肝機能についてモニターしていく。画像的にも腹部エコー、CT検査等にて,肝再生の促進の有無について評価する。患者の同意の上エコー下肝生検を行い肝臓の状態について,組織学的検討をしていく。
結果と考察
合計14症例に施行した。施行症例のうち長期に経過観察可能であった9症例について、骨髄細胞投与後、血清アルブミン値、総蛋白値、Child-Pugh Scoreの有意な改善効果が明らかになった(p<0.05)。平成18年2月10日山形大学にて山口大学山形大学合同チームで平成18年2月10日、骨髄細胞を用いた再生療法を実施した。実施症例は、59才男性、アルコール性肝硬変症であった。血液検査上、血清アルブミン値2.5g/dLから3.5g/dLの上昇、また肝線維化の指標のICG R15値が、術前40%であったものが、術後33%に改善した。本治療法に対する興味は高く、第9,10例(韓国Yonsei大学)、第13例(信州大学)、第14例(昭和大学)から医師が派遣され、実際の治療法について見学した。
結論
実際に山口大学で施行した臨床研究(自己骨髄細胞を用いた肝臓再生療法)のプロトコールを実際に山形大学で施行した。技術移転を実際に行えたことにより、技術移転に関するノウハウを得ることができた。山形大学の症例も改善効果がみられ、また長期観察例において、肝機能改善効果があきらかになってきており、本治療法の臨床上の有効性のエビデンスがよりさらに明確化できると考える。さらに実際の治療をLRCT study参加施設以外の大学からの見学があり本治療法の理解は高くなっており、さらなる多施設臨床研究を推進できる。

公開日・更新日

公開日
2006-10-17
更新日
-

行政効果報告

文献番号
200500096C

成果

専門的・学術的観点からの成果
6ヶ月以上長期観察可能であった最初の10症例の経過を評価した。1例は経過観察中のアルコール摂取のため脱落例とした。9施行症例については、骨髄細胞投与後、血清アルブミン値、総蛋白値、Child-Pugh Scoreの有意な改善効果が明らかになった(p<0.05)。この結果は、自己骨髄細胞を用いた肝臓再生療法が有用な治療法になる可能性を示した成果である。
臨床的観点からの成果
山口・山形大学合同チームで平成18年2月10日山形大学にて骨髄細胞を用いた再生療法を実施した。症例は59才男性、アルコール性肝硬変症。血清アルブミン値2.5g/dLから3.5g/dLの上昇、肝線維化の指標のICG R15値も術前40%から術後33%に改善した。また韓国Yonsei大学、信州大学、昭和大学)から医師が派遣され、実際の治療法について見学した。これらの成果は、本治療法の開発を推進し、臨床上の効果のエビデンスを得る上において重要な成果と考えられた。
ガイドライン等の開発
特になし
その他行政的観点からの成果
本治療法については過去、多くの大学の医師が実際に見学し評価を行ってきた。韓国のYonsei大学からも医師派遣があり、本治療法の開発は、日本国内のみならず、海外においても求められている。より多くの肝不全患者を救命する意味において、本臨床研究は成果があったと考える。
その他のインパクト
医療イン・フォーカス
第2部 ここまできた再生医療 ③「肝臓」再生
2005年5月18日 宇部日報 

骨髄細胞移植の可能性
2005年5月23日 週間医学界新聞

(山形大学で施行した多施設臨床研究に関連して多くの報道があった)
肝臓再生治療を実施 山形大、世界で2施設目
2006年3月6日(月)Yahoo, Japan, 東奥日報、2006年3月6日 徳島新聞、2006年3月6日 山陰中央新報、四国新聞社,岩手日報,山陽新聞,下野新聞,西日本新聞

発表件数

原著論文(和文)
1件
沖田 極、寺井 崇二、坂井田 功 医学と医療の最前線 骨髄幹細胞移植による肝疾患の治療 日本内科学会誌 2005 94(4):163-168
原著論文(英文等)
6件
その他論文(和文)
4件
最新医学 2005, 79(4): 837-841 実験医学 2006, 24(2):268-273 など
その他論文(英文等)
0件
学会発表(国内学会)
8件
DDW-Japan 2005 Kobe シンポ1件、ワーク2件  日本再生医療学会総会 4件、産業・知的クラスター合同成果発表会(3月8,9日2006)シンポ1件
学会発表(国際学会等)
4件
AASLD 2005, Symposium on Liver Disease in Yamaguchi March 3, 2006
その他成果(特許の出願)
0件
「出願」「取得」計1件
その他成果(特許の取得)
0件
坂井田 功、寺井 崇二 肝再生用骨髄細胞画分 特願2005-286546(出願日平成17年9月30日)
その他成果(施策への反映)
0件
その他成果(普及・啓発活動)
1件
市民公開講座(肝臓病は怖くない) 海峡メッセ下関(2005年11月20日)

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限ります。

原著論文1
Shen J, Sakaida I, Uchida K et al.
Leptin enhances TNF-alpha production via p38 and JNK MAPK in LPS-stimulated Kupffer cells.
Life Sci. , 77 (13) , 1502-1515  (2005)
原著論文2
Terai S, Sakaida I, Okita K.
Lesson from the GFP/CCl4 model- Translational Research Project: The development of the cell therapy using autolougous bone marrow cells in liver cirrhosis patients. 
J Hepatobiliary Pancreat Surg. , 12 (3) , 203-207  (2005)
原著論文3
Sakaida I, Terai S, Okita K.
Use of bone marrow cells for the development of cellular therapy in liver diseases.
Hepatology Resaerch , 31 , 195-196  (2005)
原著論文4
Ishikawa T, Terai S, Urata Y et al.
Fibroblast growth factor 2 facilitates the differentiation of transplanted bone marrow cells into hepatocytes.
Cell Tissue Res. , 323 , 221-231  (2006)
原著論文5
Yokoyama Y, Terai S, Ishikawa T et al.
Proteomic analysis of serum marker proteins in recipient mice with liver cirrhosis after bone marrow cell transplantation.
Proteomics, in press  (2006)
原著論文6
Sakaida I, Terai S, Nishina H et al.
Development of cell therapy using autologous bone marrow cells for liver cirrhosis.
Med Mol Morphol. , 38 (4) , 197-202  (2005)

公開日・更新日

公開日
2015-05-26
更新日
-