文献情報
文献番号
200500088A
報告書区分
総括
研究課題名
集団交通災害における救急医療および精神保健活動のあり方について
課題番号
H17-特別-001
研究年度
平成17(2005)年度
研究代表者(所属機関)
加藤 寛(財)21世紀ヒューマンケア研究機構兵庫県こころのケアセンター)
研究分担者(所属機関)
- 廣常 秀人(財)21世紀ヒューマンケア研究機構兵庫県こころのケアセンター )
- 飛鳥井 望(東京都精神医学総合研究所)
- 前田 正治(久留米大学 医学部)
- 金 吉晴(国立精神神経センター精神保健研究所成人精神保健部)
- 小西 聖子(武蔵野大学 人間関係学部)
- 高岡 道雄(尼崎市保健所)
- 守田 嘉男(兵庫医科大学 精神科神経科学教室)
- 鵜飼 卓(兵庫県災害医療センター)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 行政政策研究分野 厚生労働科学特別研究
研究開始年度
平成17(2005)年度
研究終了予定年度
平成17(2005)年度
研究費
10,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-
研究報告書(概要版)
研究目的
平成17年4月25日のJR福知山線事故後に行われた救急医療活動と精神保健活動について検討し、今後の大規模事故発生時の医療および保健活動の充実を図ることを目的とする。
研究方法
救急医療に関しては、①消防関係者や医療機関を対象とした聞き取り調査②各病院のカルテ調査、を実施した。精神保健活動に関しては①早期の地域保健活動の検討②半年後に行われた訪問相談活動の分析③負傷者を対象としたアンケート調査④1996年に発生したガルーダインドネシア航空機負傷者を対象としたアンケート調査などを行った。
結果と考察
救急医療活動に関しては、①効果的なトリアージと応急処置が行われた②搬送協力が円滑に行われヘリ搬送も積極的に行われた③負傷者のデータ解析からは、「避けられる外傷死」はなかったと判断された④災害現場に参集した医療チーム相互の連絡が不十分で明確な医療のコマンド体制を確立することができなかった、などの結果が抽出された。
精神保健活動に関しては、①直後から電話相談が行われたが、利用は限定的で、直接の被害者より家族や関係者からの相談が多かった。②電車が激突したマンション住民に対しては保健所が訪問活動を継続的に行った。居住場所が把握しやすかった住民には、地域保健活動の方法が適応可能だった。③乗客名簿を得た半年後から、保健師が負傷者103名を自宅訪問した。その結果、保健所などが継続して関与していくことになったのは合計して45名であった。④被害者を対象とした質問紙調査の結果からは、PTSDのハイリスク者は44.3%であった。⑤ガルーダインドネシア航空機事故の乗客調査では、全般的な精神健康度の悪い者は50%、PTSDのハイリスク者は27.8%であった。
精神保健活動に関しては、①直後から電話相談が行われたが、利用は限定的で、直接の被害者より家族や関係者からの相談が多かった。②電車が激突したマンション住民に対しては保健所が訪問活動を継続的に行った。居住場所が把握しやすかった住民には、地域保健活動の方法が適応可能だった。③乗客名簿を得た半年後から、保健師が負傷者103名を自宅訪問した。その結果、保健所などが継続して関与していくことになったのは合計して45名であった。④被害者を対象とした質問紙調査の結果からは、PTSDのハイリスク者は44.3%であった。⑤ガルーダインドネシア航空機事故の乗客調査では、全般的な精神健康度の悪い者は50%、PTSDのハイリスク者は27.8%であった。
結論
いずれの活動でも、阪神大震災などの過去の経験が活かされたという点では、肯定的な評価を行うことができる。課題としては、被害者の情報が個人情報保護の観点から制限されたために、救急医療に関しては事後検証の妨げとなり、精神保健活動においては長期的な関与の限界となったことが、まず挙げられる。第二に、それぞれの活動全体のコーディネートを円滑に行うためのシステムが脆弱であり、救急医療の現場においては医療チーム相互の連携が十分に出来なかったこと、精神保健活動に関しては活動を行うための根拠そのものが不明確であったため継続してサービスを提供する体制作りに苦心したことが指摘された。今後、ガイドラインを作り、地域防災計画にも大規模交通災害を想定した医療・保健に関する項目を充実させるなどの制度面での対策が必要である。
公開日・更新日
公開日
2015-05-29
更新日
-