痘そうワクチンの備蓄戦略の為の品質向上、生産性向上に関する研究

文献情報

文献番号
200500085A
報告書区分
総括
研究課題名
痘そうワクチンの備蓄戦略の為の品質向上、生産性向上に関する研究
課題番号
H17-国際-103
研究年度
平成17(2005)年度
研究代表者(所属機関)
大隈 邦夫(財団法人化学及血清療法研究所品質管理部)
研究分担者(所属機関)
  • 倉根一郎(国立感染症研究所ウイルス第一部)
  • 佐多徹太郎(国立感染症研究所感染病理部)
  • 森川茂(国立感染症研究所ウイルス第一部第一室)
  • 金谷泰宏(防衛医科大学校防衛医学研究センター)
  • 高瀬凡平(防衛医科大学校防衛医学研究センター)
  • 横手公幸(財団法人化学及血清療法研究所第一製造部 )
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 行政政策研究分野 国際健康危機管理ネットワーク強化研究
研究開始年度
平成17(2005)年度
研究終了予定年度
平成19(2007)年度
研究費
6,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
乾燥細胞培養痘そうワクチンLC16m8は、有効性を保持しながら弱毒に成功した世界で唯一のワクチンである。近年の生物テロ対策の一環として、LC16m8の生産再開が必要となり、本ワクチンの品質向上、生産性向上に関する研究並びに、安全性及び有効性に関する評価研究を行った。
研究方法
有効性は、霊長類におけるサル痘の発症を阻止するか否かを検討し、LC16m8のヒトでの天然痘の発症阻止力を検討する。マウスやサルなどの動物を用いた感染防御実験並びに人での使用実績に基づく調査解析を行う。
安全性は、痘そうウイルスの中枢神経系組織への病理学的検査並びにウイルス検査による影響の評価、また抑制療法を受けている患者等を想定した免疫不全SCIDマウス等の評価を行う。
生産性の向上に関しては、現在製造法が生産効率の点で改善・改良すべき各条件に関する研究を行う。有効な保存方法と有効期限についての知見により、長期的なワクチン備蓄戦略に資する基礎資料を得る。
結果と考察
1)カニクイザルを用いたLC16m8の1回接種免疫サル群でサル痘の発症は完全阻止された。
2)LC16mO株を解析し、非許容温度では感染早期にアポトーシスを誘導し、温度感受性のリバータントはなかった。
3)LO株による脳内接種後のカニクイザルの中枢神経系組織について追加検索を行い、神経細胞におけるウイルス増殖はなかった。LC16m8株接種群ではウイルス抗原は検出されなかった。
4)LC16m8は、成人でも安全性が高く、その有効性は未接種世代に対する接種で善感率94.4%と高い値を示し、中和抗体価も93%に陽転が得られた。
5)免疫不全SCIDマウス等を用いて評価を行い、LC16m8の安全性を確認した。
6)生産性向上に関して、ウイルス吸着条件、ハーベストタイミング等の工程条件について検討を行った。
7)原液の24ヶ月までの安定性を確認した。製剤については試験を継続し確認する。
8)プラック法による力価試験の検討を行い、現行ポック法と同等以上の精度を確認した。
結論
痘そうワクチンLC16m8の品質向上、生産性向上に関する研究並びに安全性、有効性に関する評価研究を行った。動物モデル実験、また健康成人の使用における疫学研究により、安全性と有効性が確認された。生産性向上に関しては、製造条件の検討を実施した結果、更なる検討の必要性が示唆された。安定性に関しては、原薬は2年間の安定性が確認されたが、製剤については、継続して確認する必要がる。その他、ウイルス株の温度感受性の評価及び力価試験法について検討し、成果を得た。

公開日・更新日

公開日
2006-04-17
更新日
-