急性呼吸器感染症の感染メカニズムと疫学、感染予防・制御に関する研究

文献情報

文献番号
200500081A
報告書区分
総括
研究課題名
急性呼吸器感染症の感染メカニズムと疫学、感染予防・制御に関する研究
課題番号
H17-国医-008
研究年度
平成17(2005)年度
研究代表者(所属機関)
鈴木 宏(新潟大学教育研究院医歯学系)
研究分担者(所属機関)
  • 荒川 宜親(国立感染症研究所)
  • 河岡 義裕(東京大学医科学研究所)
  • 田代 眞人(国立感染症研究所)
  • 山中 昇(和歌山県立医科大学)
  • 伊藤 康彦(三重大学医学部)
  • 大石 和徳(大阪大学微生物研究所)
  • 小田切 孝人(国立感染症研究所)
  • 喜田 宏(北海道大学大学院獣医学研究所)
  • 中山 哲夫(北里生命科学研究所)
  • 西野 武志(京都薬科大学)
  • 森島 恒雄(岡山大学大学院医歯学総合研究科)
  • 横田 俊平(横浜市立大学大学院医学研究科)
  • 黒崎 知道(千葉市立海浜病院)
  • 齋藤 玲子(新潟大学教育研究院医歯学系)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 行政政策研究分野 国際医学協力研究
研究開始年度
平成17(2005)年度
研究終了予定年度
平成17(2005)年度
研究費
14,827,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
急性呼吸器感染症(acute respiratory infection; ARI)関連疾患の予防・制御を目的とし、医学部と獣医学部の学際的分担者により基礎と臨床面からの検討を行う。特に、ウイルス性では例年発生するインフルエンザを含め国際的に最大の関心事となっている高病原性トリ型インフルエンザA/H5N1、細菌性では薬剤耐性の疫学、遺伝子変異動向を検討する。
研究方法
ARIの病因ウイルス、細菌、マイコプラズマなどについて、罹患患者、動物からの材料を用いウイルス、細菌の分離による疫学的検討に加え、それらの抗原性、遺伝子性状、病原性などからの分子疫学的検討、耐性株の動向、更には持続感染細胞、リバースジェネッティク法により作成されたウイルス株、細菌感染のマウスモデルなどを検討した。
結果と考察
1)2005年のモンゴルと中国の野生水禽から近縁のH5N1インフルエンザウイルスが分離され、遺伝子解析よりベトナムの家禽は何度も異なるH5N1ウイルスによる侵襲を受けてことがわかった。
2)16HA亜型と9NA亜型の144組み合わせ中126がワクチンと診断に利用できるウイルス株として系統保存され、鳥由来のヒトH5N1ウイルスによるアジュバント添加プロトタイプワクチンは免疫原性が低く更なる改善が求められた。
3)インフルエンザ関連脳症発症早期のステロイド・パルス療法が予後の改善に効果的であり、オセルタミビルはA型とB型インフルエンザ治療に有効である事が示された。
4)2000年以降マクロライドに耐性を獲得したマイコプラズマが全国各地で分離され、小児の中耳炎起炎菌である肺炎球菌とインフルエンザ菌の薬剤耐性化が高率に進行している事が判明した。一方、インフルエンザ菌のBLNARが急増しているが、ペニシリン系薬剤で臨床的に対応しても問題は無かった。
5)マウスモデルにおいて、インフルエンザ菌(Non-typable Haemophilus influenzae: NTHi)株による菌特異的な肺感染防御獲得機構について検討、株の違いと接種法により異なった肺感染防御能が示された。
結論
動物インフルエンザの継続的なグローバルサーベイランスは、動物とヒトのインフルエンザ対策に有益な情報であり、16のHA亜型と9のNA亜型の組み合わせ144中126通りがワクチンおよび診断に利用できるウイルス株として系統保存は確実に進行している。インフルエンザの治療には抗ウイルス剤とステロイド療法も考えるべきとの示唆を得た。細菌感染では薬剤耐性株の増加があり、サーベイランス強化と適正薬剤使用が求められた。

公開日・更新日

公開日
2007-04-03
更新日
-

行政効果報告

文献番号
200500081C

成果

専門的・学術的観点からの成果
 2005年のモンゴルと中国の野生水禽からの近縁H5N1インフルエンザウイルス分離とベトナムの家禽への複数H5N1ウイスル感染が、遺伝子解析より確認された。
 新型インフルエンザワクチンと診断用ウイルス株とし、HAとNA亜型の全144組み合わせ中126株が保存された。
 インフルエンザ関連脳症発症早期のステロイド・パルス療法が予後改善に効果的であり、パンデミック時の応用が示唆された。
 小児中耳炎起炎菌である肺炎球菌とインフルエンザ菌の薬剤耐性遺伝子を検討し、高率薬剤耐性化の進行が判明した。
臨床的観点からの成果
1)インフルエンザ関連脳症発症早期のステロイド・パルス療法が予後の改善に効果的であり、オセルタミビルはA型とB型インフルエンザ治療に有効である事が示された。

2)2000年以降マクロライドに耐性を獲得したマイコプラズマが全国各地で分離され、小児の中耳炎起炎菌である肺炎球菌とインフルエンザ菌の薬剤耐性化が高率に進行している事が判明した。一方、インフルエンザ菌のBLNARが急増しているが、ペニシリン系薬剤で臨床的に対応しても問題は無かった。
ガイドライン等の開発
なし
その他行政的観点からの成果
なし
その他のインパクト
マスコミに伝えられたのは以下の二つである。
1)2005年のモンゴルと中国の野生水禽から近縁のH5N1インフルエンザウイルスが分離された。
2)インフルエンザ関連脳症発症早期のステロイド・パルス療法が予後の改善に効果的である。

発表件数

原著論文(和文)
3件
原著論文(英文等)
39件
その他論文(和文)
6件
その他論文(英文等)
0件
学会発表(国内学会)
0件
学会発表(国際学会等)
0件
その他成果(特許の出願)
0件
「出願」「取得」計0件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
0件
その他成果(普及・啓発活動)
0件

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

公開日・更新日

公開日
2015-06-08
更新日
-