環境中の発がん及び発がん抑制要因の検索とその作用機構の解明に関する研究

文献情報

文献番号
200500075A
報告書区分
総括
研究課題名
環境中の発がん及び発がん抑制要因の検索とその作用機構の解明に関する研究
課題番号
H17-国医-002
研究年度
平成17(2005)年度
研究代表者(所属機関)
若林 敬二(国立がんセンター研究所がん予防基礎研究プロジェクト)
研究分担者(所属機関)
  • 中釜 斉(国立がんセンター研究所生化学部)
  • 安仁屋 洋子(琉球大学大学院医学研究科感染制御医科学専攻分子機能薬理学分野)
  • 葛西  宏(産業医科大学産業生態科学研究所職業性腫瘍学教室)
  • 能美 健彦(国立医薬品食品衛生研究所変異遺伝部)
  • 椙村 春彦(浜松医科大学医学部病理学第一講座)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 行政政策研究分野 国際医学協力研究
研究開始年度
平成17(2005)年度
研究終了予定年度
平成17(2005)年度
研究費
14,827,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
がん発生の原因となる遺伝子変化を引き起こすものには多くの外的及び内的要因があり、中でも喫煙、食事性要因及び感染症が大きな役割を果たしている。これらの要因に加えて、遺伝的背景も発がんに多大な影響を及ぼしている。本研究においては、ヒトのがん発生要因及びがん感受性要因を総合的に把握し、最終的にはヒトのがんの第一次予防推進のための基礎的研究成果をあげることを目的とする。
研究方法
がん発生の外的要因の検索として、河川水中及び脂質過酸化産物中の変異原物質の同定を行った。内的要因の検索としては、サルモネラ菌の損傷乗り越え型DNAポリメラーゼを系統的に破壊し、変異原に対する感受性を比較した。また、コンソミック系統を用いたPhIP+DSS誘発腸炎の感受性及び抵抗性遺伝子同定の可能性についても検討した。遺伝的背景の検索として、酸化的DNA傷害修復遺伝子MYHの新規多型と胃がん症例対照研究を行った。がん予防法の研究として、沖縄産薬草のNO合成酵素に及ぼす影響について調べた。
結果と考察
河川水抽出物からnonCl-PBTA-2、-3、-4及び-7を主要な変異原性物質として単離・同定した。これらのnonCl-PBTAは染色工場などで使用されているアゾ染料から生成し,河川中に排出されたものと考えられる。脂質過酸化のモデル反応混合物中よりglyoxal、glyoxylic acid、ethylglyoxal、4-oxo-2-hexenal(4-OHE)等の変異原物質を同定した。このうち、4-OHEは焼き魚中から多量に検出された。サルモネラTA1538株のDNAポリメラーゼ遺伝子を系統的に破壊することによりDNA損傷の違いにより異なった複数のDNAポリメラーゼがトランスリージョンDNA合成に関与することが示唆された。C57BL/6J及びMSM/Msマウス系統間で、PhIP+DSS併用による腸炎の誘発性及び大腸発がんの感受性に系統差があることが認められた。アジアの大腸がんで、リスクを約1.5倍有意に上昇させるMYH 多型(IVS1+11C>T)を見いだした。ベニバナボロギクおよびその抗酸化成分のイソクロロゲン酸はTNF-aを介するiNOS誘導を抑制し、肝保護作用を有することが示唆された。
結論
本研究は、ヒトのがん発生要因及びがん感受性要因を総合的に把握することを目的として、新規変異原物質の同定や損傷乗り越え型DNAポリメラーゼの発がん要因としての重要性を明らかにした。更に、遺伝子改変動物を用いた解析やヒトにおける遺伝子多型の解析等により、発がん感受性要因を見い出し、以上の成果は、がん予防対策を講ずる上に有用な基礎的研究資料となるものと確信する。

公開日・更新日

公開日
2011-05-31
更新日
-

行政効果報告

文献番号
200500075C