文献情報
文献番号
200500060A
報告書区分
総括
研究課題名
リバース・モーゲージの利活用による社会保障補完システムの研究
課題番号
H17-政策-018
研究年度
平成17(2005)年度
研究代表者(所属機関)
中川 雅之(日本大学 経済学部)
研究分担者(所属機関)
- 丸尾直美(尚美学園大学 総合政策学部)
- 三橋博巳(日本大学 理工学部)
- 浅見泰司(東京大学 空間科学情報センター)
- 田中正秀(筑波大学 生命環境科学研究科)
- 明野斉史((財)住宅都市工学研究所)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 行政政策研究分野 政策科学推進研究
研究開始年度
平成17(2005)年度
研究終了予定年度
平成17(2005)年度
研究費
5,822,000円
研究者交替、所属機関変更
-
研究報告書(概要版)
研究目的
私的財として、財産価値の高い日本の住宅を社会保障の補完システムとして利活用できる可能性を財政、法制度などのソフト面からと、都市環境、耐用年数などのハード面を加味し、総合的に検証する。また、リバース・モーゲージが私的社会保障の段階にとどまっている原因を解析する。わが国は高齢化がますます本格化している一方で、少子化が急速に増大してきている。このため公的支援だけでは、急増する年金や医療費を支えていくことは絶望視されている。その反面、高齢者層は個人金融資産などの70%前後を所有し、持家率も80%以上と世界でも有数の資産構成を示している。この所有する住宅を利活用することによって、老後の豊かさを維持するシステム、すなわち「私的社会保障」の構築が必要不可欠である。日本では持家率が高く、しかもその資産価値が高いにもかかわらず、なぜリバース・モーゲージが利活用されないのかの原因を明らかにし、そのための制度障害の排除と積極的な利活用の方策を考える。
研究方法
リバース・モーゲージ先進国であるアメリカの制度的特徴を理解するために、ワシントン、ニューヨークにてヒアリング、資料収集を行った。また、国内においては福岡県社会福祉協議会が行っている長期生活費支援資金制度、愛知県高浜市のリバース・モーゲージ(いきいき資金融資)に関するヒアリングを担当者に行った。
結果と考察
アメリカにおけるリバース・モーゲージは公的機関の積極介入によって、リバース・モーゲージが内包する三大リスクに対して適切な対応が図れている。そのため、利用者・融資者双方が安心してリバース・モーゲージ市場に参加でき、市場規模の拡大により制度の安定的運営が可能となっている。一方、わが国の制度は各市町村単位での実施となっており、潜在的需要があるにもかかわらず、自治体担当職員の能力や自治体トップの意向によって制度の運営が大きく左右されるという事態に陥っている。さらにリスクへの対応が不十分で、利用者自らがそのリスクを負わざるを得なくなっており、リバース・モーゲージが持つ本来の魅力を大きく削ぐ結果となっている。
結論
リバース・モーゲージの普及について本腰を入れて検討するのであれば、担保物件の不動産価値の下限などは地域によって自主性を持たせる必要はあるが、各種リスクを政府が引き受ける保険を備えた全国共通の制度を提供しなければならないと考える。
公開日・更新日
公開日
2006-05-26
更新日
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