雇用と年金の接続に係わる研究(副題:働くことへの意識の違いが労働供給と年金受給の選択に与える影響に関する日独比較分析)

文献情報

文献番号
200500059A
報告書区分
総括
研究課題名
雇用と年金の接続に係わる研究(副題:働くことへの意識の違いが労働供給と年金受給の選択に与える影響に関する日独比較分析)
課題番号
H17-政策-016
研究年度
平成17(2005)年度
研究代表者(所属機関)
高木 朋代(敬愛大学経済学部)
研究分担者(所属機関)
  • フランツ ヴァルデンベルガー(ミュンヘン大学)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 行政政策研究分野 政策科学推進研究
研究開始年度
平成17(2005)年度
研究終了予定年度
平成19(2007)年度
研究費
1,420,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
 本研究は働くことへの意識の違いが、働き続けるのか(労働供給)、引退するのか(年金受給)の選択決定に与える影響を、勤労観が日本と近似するドイツとの比較によって明らかにし、雇用と年金の接続における企業のマネジメントのあり方を探索的に明らかにすることを目的とする。
研究方法
 年金制度と高年齢者雇用政策、就業意欲に関して文献調査を行った。また次年度のサーベイ調査の準備として、企業へのヒアリング調査を実施した。
結果と考察
 日本における働き続けることへのモチベーションの高さは、自らが属する社会圏の中心を地域や家族よりは職場におく傾向が強いことと無縁ではない。こうした特性は、戦略によって新しい産業を生み出す、あるいは新しい市場を開拓するといった差別化よりは、財・サービスを着実に市場に浸透させることで成長してきた日本企業の同質戦略にも由来していると考えられる。多くの企業が濫立する厳しい競争の中で、人的資源への強い依存と心理的契約に基づく職場関係を軸に、組織関連的技能の形成、および組織コミットメントの重要性を強調する人的資源管理が日本では暗黙的に行われてきた。対してドイツでは、特徴ある産業や製品を独自で生み出していく差別化による経済成長を遂げ、そうした産業社会の中では職務コミットメントが強調される人的資源管理が行われてきたものと考えられる。そのために勤労観は日本と似ているとされるが、ドイツにおいては経済的に困窮しなければ、人々は就業継続・引退の選択決定において比較的容易に引退を選択する。
 つまり以上をまとめると、日本の労働者の意識は他国に比してより強く職場関係に埋め込まれているために、職場に身をおくことに自らの存在価値を見出す傾向があり、そのために日本の高年齢者の場合には、年金制度や企業の高年齢者雇用制度のあり方によって、必ずしも高年齢者の就業か引退かの選択が一律に決定されるのではなく、特有の就業意識が媒介変数となり、選択決定を左右しているものと考えられる。
結論
 雇用と年金の円滑な接続の実現が、個々の労働者の働くことに関するモチベーションのあり方に影響されるとすれば、これを形成し統制する主体である企業のマネジメントの役割は極めて重要といえる。将来的にエイジフリー社会へと軟着陸するためには、法整備や雇用制度の設計を行う際に、単に理論的整合性を追うばかりでなく、各国特有の就業意識を念頭に入れて設計する必要があると考えられる。

公開日・更新日

公開日
2006-05-19
更新日
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