文献情報
文献番号
200500057A
報告書区分
総括
研究課題名
国民皆保険制度不在下における無保険者・慈善医療の研究
課題番号
H17-政策-012
研究年度
平成17(2005)年度
研究代表者(所属機関)
石川 義弘(公立大学法人横浜市立大学 大学院医学研究科)
研究分担者(所属機関)
- 井伊 雅子(一橋大学 公共経済学)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 行政政策研究分野 政策科学推進研究
研究開始年度
平成17(2005)年度
研究終了予定年度
平成17(2005)年度
研究費
4,970,000円
研究者交替、所属機関変更
-
研究報告書(概要版)
研究目的
本申請は,米国において慈善医療の現場に携わる医師である研究代表者が,米国医療における無保険者および慈善医療の存在・診療の実態を,わが国の医療内容との比較論を中心とした観点から,医療経済学者である分担研究者と検証したものである.
研究方法
診療供給体制の検討をまずおこなった。申請者が客員教授をつとめるNJ州立大学病院をケースモデルとし,外来部門における無保険者向けクリニック(慈善外来)と,有保険者向けクリニック(一般外来)において,診療供給体制の違いを中心に検討した. つぎに無保険者の医療受信体制の調査をおこなった。又同時にわが国における眼科手術を対象に、全国モデルにおいてどのような在院日数の変化があるのかを検討した。これはわが国には無保険者がいないために、特定の治療群についてどの程度のばらつきが存在するのか□沛リするために行われた。
結果と考察
一般に無保険者と有保険者とは,クリニックの所在が異なり,無保険者は有保険者向けのクリニックにかかることができない. 有保険者向けクリニックにおいて診察医師は教員クラスに限られ、研修医あるいは専門研修生が診療に直接かかわることはない。一方において無保険者向けクリニックでは、診療の主体は研修医ないし専門研修生であり、教員は自ら診察に当たるよりも、研修医ないし専門研修生の診療指導を主体とする。さらに無保険者の医療受診体制の調査をおこなったところ、疾患の重症度あるいはコントロール状態においては、一般的に慈善外来における患者群に重症例が多い。これは疾患がある程度進行してから病院を受診する患者の割合が、慈善外来において多いためと考えられる。さらにわが国の現状を考察するために、眼科手術を例にとり、わが国の病院において平均入院日数を比較検討したところ、子供ダミー、退院先、処置・手術のタイプが在院期間に影響していることが求められた。また、患者の属性などを考慮しても病院間には平均入院日数の大きな違いが認められ、利益率が高いほど入院日数が長くなる傾向がみられた。以上のことから、わが国では皆保険制度を導入しているにもかかわらず、少なくとも平均入院日数でみた治療内容に違いがあることが推測され、皆保険制度が廃止されればこのような格差がいっそう広がることが考えられた。
結論
現在わが国においては、国民皆保険制度の存続が再検討されている状態が懸念されているが、我々の研究結果からも、患者間の格差を少なくするためにも、わが国における国民皆保険制度の存続が望まれる。
公開日・更新日
公開日
2006-04-11
更新日
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