医療保険、医療費抑制、医療技術、医療の質の研究-医薬品価格規制と研究開発

文献情報

文献番号
200500056A
報告書区分
総括
研究課題名
医療保険、医療費抑制、医療技術、医療の質の研究-医薬品価格規制と研究開発
課題番号
H17-政策-011
研究年度
平成17(2005)年度
研究代表者(所属機関)
姉川 知史(慶應義塾大学大学院経営管理研究科)
研究分担者(所属機関)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 行政政策研究分野 政策科学推進研究
研究開始年度
平成17(2005)年度
研究終了予定年度
平成19(2007)年度
研究費
2,201,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
 この研究では医療保険制度の維持,医療費抑制,医療技術の革新と普及,医療の質の向上の4つの異なる政策目的が同時に実現可能かという政策課題を,日本の医薬品を題材にした実証研究,事例研究,理論的考察によって検討する。3年計画の1年目の研究を行った。
 
研究方法
 この研究は5つの個別研究によって構成する。第1年度はこれらの個別研究に必要になる準備作業を2つ行った。
 この準備産業としては,医薬品産業に対する公共政策のありかたを概観する研究を行い,論文1を作成した。次に,医療費の地域差の原因を,社会資本の蓄積の相違に求める理論を,医療保険,医療費,医療技術の革新と普及に応用する研究を行い,論文2を作成した。交付申請書に示した個別研究のうち,第1は,医療保険制度における新薬の薬価決定要因の分析であり,承認された新薬の薬価と医薬品の属性による統計分析を行った(個別研究1,第1年度研究)。個別研究の第2は,医薬品卸企業と医療機関・薬局との間の納入取引における寡占的競争の分析であった。現行の医療保険制度と薬価設定方式のもとで,医薬品需要,薬価,納入価格の関係が,医薬品企業による医薬品広告,販売活動,新規参入競争といった寡占的競争の要因とどのように関係するか検討した(個別研究2)。
結果と考察
 予備的研究1により論文1「日本の医薬品産業」(2006)を作成した。これにより日本の医薬品産業が医療保険の薬価基準制度によって育成保護されてきたが,現時点では同じ薬価基準制度がその成長を抑制していることを示した。予備的研究2により,論文2"Geographical Variance and Convergence of Medical Cost in Japan”を作成した。
 個別研究1において,日本の薬価制度では発売後時間が経過し,ジェネリック医薬品との競争のある医薬品が納入価格低下によってその需要量を拡大させる傾向のあることが示された(個別研究1,第1年度研究)。
 
結論
 3年計画の第1年目の研究を行った。医療保険制度による薬価抑制政策は1990年代の日本の医薬品産業の生産額の停滞を招いた。技術政策だけでは新薬の研究開発は進まず,需要をどのように確保するかが課題である。他方,医療費の地域格差は依然として大きく,しかもそれが医療に関する社会資本の蓄積量と密接に関係するため,社会資本が需要を誘発していること,しかし,それは時系列でみると,一定の水準に収斂する傾向があり,地域格差は縮小することが示された。

公開日・更新日

公開日
2006-05-10
更新日
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