包括的社会保障財政予測モデルの構築とそれを用いた医療・年金・介護保険改革の評価研究

文献情報

文献番号
200500047A
報告書区分
総括
研究課題名
包括的社会保障財政予測モデルの構築とそれを用いた医療・年金・介護保険改革の評価研究
課題番号
H16-政策-025
研究年度
平成17(2005)年度
研究代表者(所属機関)
社団法人 日本経済研究センター(社団法人日本経済研究センター)
研究分担者(所属機関)
  • 八代 尚宏(国際基督教大学教養学部)
  • 鈴木 亘(東京学芸大学教育学部)
  • 八田 達夫(国際基督教大学教養学部)
  • 周 燕飛(独立行政法人 労働政策研究・研修機構 )
  • 富岡 淳(独立行政法人 労働政策研究・研修機構 )
  • 松崎 いずみ(社団法人 日本経済研究センター)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 行政政策研究分野 政策科学推進研究
研究開始年度
平成16(2004)年度
研究終了予定年度
平成17(2005)年度
研究費
3,474,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
本研究では、年金、医療保険、介護保険の財政予測に関して、手軽に用いる事ができ、厚生労働省が行うシミュレーションをほぼ再現できるモデルを作成し、政策提言をする事を目的とした。これにより官民が同じ議論の土俵上で社会保障改革に関する政策論議を建設的に行う事ができる。総合モデルにより、社会保障全体の将来像を詳細に描き実情が把握できる。またモデルの諸前提・パラメータとなるような改革に対する家計行動の反応を、個票データを用いて実証分析し、モデルのシミュレーション等に反映させることを目指す。
研究方法
本年は、昨年作成した年金、医療保険、介護保険の各モデルを用いて、社会保障の全体像や年金改革に関するシミュレーション分析を実施した。また、シミュレーションに用いる家計行動の変化を定量的に知るために、別途、個票データを用いた未加入行動や貯蓄行動、無貯蓄化の分析を実施し、同時に年金改革・医療制度改革に対する国民意識も明らかにした。研究期間中に議論となった政策的論点について個別的な政策提言を行った。
結果と考察
(1)年金、医療、介護保険について作成した財政予測モデルを用いてこの世代間格差の状況を計測した結果、1940年生まれでは約5300万円の受取超過である一方、2005年生まれでは約2800万円の支払超過であり、差は約8100万円にも達する事(2)平成16年年金改正の評価では、長期的な財政の維持可能性の目的は確保されたが世代間の受益と負担の格差是正の目的ではほとんど改善が見られなかった事、(3)社会保障改革に対する家計行動の変化では年金未加入者分析の結果、25年の資格期間を満たすための限界年齢である35歳前後で加入率が急激に上がる事、等が分かった。医療制度改革・年金改革を取り巻く意識、混合診療に対する意識等についても明らかとなった。
結論
年金、医療保険、介護保険を統合した財政予測モデルを作成した結果、従来見えにくい構造となっていた社会保障分野の全体像が明らかとなった。巨額の世代間格差を生じる構造となっており、最大の改革だった平成16年年金改正でも同格差を縮小する方向に働かなかった事が分かった。年金未加入者問題の背景に同格差は重要なものと考えられるが、未加入者も合理的な行動をとっている事が明らかとなり、そのような合理的な行動にインセンティブとして働きかける政策が重要である。

公開日・更新日

公開日
2006-04-20
更新日
-

文献情報

文献番号
200500047B
報告書区分
総合
研究課題名
包括的社会保障財政予測モデルの構築とそれを用いた医療・年金・介護保険改革の評価研究
課題番号
H16-政策-025
研究年度
平成17(2005)年度
研究代表者(所属機関)
社団法人 日本経済研究センター(社団法人日本経済研究センター)
研究分担者(所属機関)
  • 八代 尚宏(国際基督教大学教養学部)
  • 鈴木 亘(東京学芸大学教育学部)
  • 八田 達夫(国際基督教大学教養学部)
  • 周 燕飛(独立行政法人 労働政策研究・研修機構 )
  • 富岡 淳(独立行政法人 労働政策研究・研修機構 )
  • 松崎 いずみ(社団法人日本経済研究センター )
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 行政政策研究分野 政策科学推進研究
研究開始年度
平成16(2004)年度
研究終了予定年度
平成17(2005)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
本研究では、年金、医療保険、介護保険の財政予測に関して、誰もが手軽に用いる事ができ、厚生労働省が行うシミュレーションをほぼ再現できるモデルを作成し、それを用いた政策提言をする事に目的を置いた。これにより官民が同じ議論の土俵上で社会保障改革に関する政策論議を行う事を可能にし、論議を建設的になる事が期待される。また、総合モデルにより、社会保障全体の将来像を詳細に描き実情を把握する事ができる。
研究方法
1年目に作成した年金、医療保険、介護保険の各モデルを用いて、2年目では、社会保障の全体像や年金改革に関するシミュレーション分析を実施した。また、シミュレーションに用いる家計行動の変化を定量的に知るために、別途、個票データを用いた未加入行動や貯蓄行動、無貯蓄化の分析を実施し、同時に年金改革・医療制度改革に対する国民意識も明らかにした。研究期間中に議論となった政策的論点について個別的な政策提言を行った。
結果と考察
年金、医療、介護保険について作成した財政予測モデルを用いてこの世代間格差の状況を計測した結果、1940年生まれでは約5300万円の受取超過である一方、2005年生まれでは約2800万円の支払超過であり、差は約8100万円にも達する事が分かった。平成16年年金改正の評価では、長期的な財政の維持可能性の目的は確保されたが、世代間の受益と負担の格差是正の目的についてはほとんど改善が見られなかった事等が分かった。
2年にわたる研究により、シミュレーションモデルの政策論議への有効性が確認できた。また様々なモデルのシミュレーションをする上で前提やシナリオとなる未加入者行動や貯蓄等について重要な定量的知見を得た。さらに医療制度改革・年金改革を取り巻く意識、混合診療に対する意識等についても明らかとなった。
結論
本研究によって年金、医療保険、介護保険を統合した財政予測モデルが作成され、従来見えにくい構造となっていた社会保障分野の全体像が明らかとなった。結論は、巨額の世代間格差を生じる構造となっており、最大の改革だった平成16年年金改正でも、同格差を縮小する方向に働かなかった事が分かった。年金未加入者問題の背景に同格差は重要なものと考えられるが、未加入者も合理的な行動をとっている事が明らかとなり、そのような合理的な行動にインセンティブとして働きかける政策が重要である。

公開日・更新日

公開日
2006-04-10
更新日
-

行政効果報告

文献番号
200500047C

成果

専門的・学術的観点からの成果
成果の中で画期的であったものは、鈴木亘・齋藤裕美「混合診療は不公平か?―インターネット調査を用いた医療規制改革の実証的考察」『日本経済研究』第53巻第1号であり、この分野でははじめての実証研究となっている。また、鈴木亘・周燕飛「研究ノート・コホート効果を考慮した国民年金未加入者の経済分析」『季刊社会保障研究』(国立社会保障人口問題研究所)41巻4号も、学術的に貢献が大きいものと思われる。
臨床的観点からの成果
特になし。
ガイドライン等の開発
特になし。
その他行政的観点からの成果
特になし。
その他のインパクト
マスコミに関しては、社会保障制度全体の世代間不公平の姿の計算が多くの新聞に取り上げられた。2006年3月28日東京新聞朝刊1面、2005年11月27日日経新聞サンデーニッケイ、2005年4月17日朝日新聞12面、週間ダイヤモンド2005年11月26日版32ページ、2005年4月10日日経新聞朝刊経済教室欄。また、医療制度改革に対する提言についても、2006年3月10日日経新聞33面の経済教室に提言が載った。

発表件数

原著論文(和文)
2件
原著論文(英文等)
0件
その他論文(和文)
2件
その他論文(英文等)
0件
学会発表(国内学会)
1件
学会発表(国際学会等)
0件
その他成果(特許の出願)
0件
「出願」「取得」計0件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
0件
その他成果(普及・啓発活動)
0件

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限ります。

原著論文1
鈴木亘・齋藤裕美
混合診療は不公平か?―インターネット調査を用いた医療規制改革の実証的考察
日本経済研究 , 53 (1) , 150-173  (2006)
原著論文2
鈴木亘・周燕飛
研究ノート・コホート効果を考慮した国民年金未加入者の経済分析
季刊社会保障研究 , 41 (4) , 385-395  (2006)

公開日・更新日

公開日
2014-05-21
更新日
-