少子高齢社会の社会経済的格差に関する国際比較研究

文献情報

文献番号
200500042A
報告書区分
総括
研究課題名
少子高齢社会の社会経済的格差に関する国際比較研究
課題番号
H16-政策-020
研究年度
平成17(2005)年度
研究代表者(所属機関)
白波瀬 佐和子(東京大学大学院人文社会系研究科)
研究分担者(所属機関)
  • 松浦克己(広島大学大学院社会科学研究科)
  • 玄田有史(東京大学社会科学研究所)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 行政政策研究分野 政策科学推進研究
研究開始年度
平成16(2004)年度
研究終了予定年度
平成18(2006)年度
研究費
3,350,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
本研究の目的は、少子高齢化に代表される人口変動に着目し、配分原理という質的な社会メカニズムが量的な人口変動と関連して、どう変化したのか、変化していないのかを探ることにある。本年度は、人口問題からみた機会の不平等、人口変動と世帯構造・ジェンダー構造、中年齢無業者の増大、教育格差の拡大、階層論からみた健康格差、資産、年金と出産・子育て、社会保障の個人勘定化、の7つのテーマを設定した。
研究方法
 本年度は、1980年代以降の人口変動とともに配分原理がどう変化していったのかという時系列的な変化を中心に研究を進めていった。ここでは「機会の平等/不平等」についての理論的な枠組みを踏まえつつ、マクロデータやミクロデータを計量的に分析した。さらに高齢者の単身者について、ルクセンブルグ所得データを用いた国際比較研究を進めた。
結果と考察
 少子化をミクロな観点から捉えると、子どもをもたずに一生を全うすることを意味し、自らの一生の中で人生の帳尻合わせをしなければならない。そのことが人々を「爆発する不平等感」へと駆り立てる。少子高齢化の背景には人々の生き方の多様化がある。それは単身世帯や夫婦のみ世帯の増加であり、そこには大きな格差が存在する。フリーターやニートも年をとり、中高年の無業者の増加を見逃すことはできない。働く選択をもたない「働けないもの」に対する福祉対策が必要とされる。健康であることにも階層差がある。特定の疾病というよりも、身体的なだるさといった見えにくいところに格差がある。これまで平等原理が貫徹していた義務教育にも、三位一体の動きと共に格差がみえてきた。資産は人生のスタートを不平等にする。出産・子育ても制度上有利に位置づけられていない。一方、人々は加齢に伴うリスクをプールする連帯の原則を決して軽んじていない。高齢単身者の経済状況は日米で似通っていた。市場原理が積極的に導入される中、格差、不平等について慎重に議論すべきことを本研究結果は示唆している。
結論
 本年度の研究結果から、少子高齢化の中で様々な格差が明らかにされた。人々は不平等感を高揚させ、政治の場でも格差論が活発である。しかしながらこれらの世論とは別に、世の中の格差や不平等は近年急に出現したわけではない。少子高齢化の背景には多様化した人々の生き方がある。この多様化した生き方を社会でどう底支えしていくかが、重要な政策課題である。

公開日・更新日

公開日
2006-04-13
更新日
-