地域のプライマリケア医機能評価に関する実証研究

文献情報

文献番号
200500038A
報告書区分
総括
研究課題名
地域のプライマリケア医機能評価に関する実証研究
課題番号
H17-政策-023
研究年度
平成17(2005)年度
研究代表者(所属機関)
福原 俊一(京都大学大学院医学研究科社会健康医学系専攻医療疫学分野)
研究分担者(所属機関)
  • 尾藤 誠司(国立病院機構東京医療センター臨床疫学センター臨床疫学研究室)
  • 渡部 一宏(財団法人聖路加国際病院薬剤部医薬情報室)
  • 松村 真司(松村医院)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 行政政策研究分野 政策科学推進研究
研究開始年度
平成17(2005)年度
研究終了予定年度
平成19(2007)年度
研究費
8,910,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
本研究は、わが国における地域のプライマリケア医の存在意義を、医療サービスの最終使用者である国民および患者のニーズに照らし、かつわが国の医療供給体制において果たしている機能として可視化し、どのような診療特性が地域のプライマリケア医にユニークかつユーザーである住民や患者へ実質的に貢献しているかを実証的に示すことを目的とした。本研究で着目したプライマリケア医の診療特性は、1.受け持ちの患者に関する情報の精通度、2.服薬状況の全体的・網羅的な掌握、3.より高度な診断検査への適切・迅速なアクセスへの支援である。
研究方法
上記の目的のうち、1と2に関しては地域の保険調剤薬局を情報源とした横断研究を、また3に関しては、地域の中核病院をフィールドとした頭部MRI・MRAの適正使用に関してどのようにプライマリケア医が役割を果たしているかを探る症例対照研究を行った。前者では、過去の研究をリビューしたのち、質問票を完成させ、2施設でパイロット調査を行った。後者では5つの研究協力施設において、頭部MRIおよびMRA検査を受けた外来患者を対象に診療録及び放射線科レポートより、症例群として臨床的に有意な頭蓋内の腫瘍性病変、虚血性もしくは出血性病変のある患者とし、それらの所見が明確でない患者を対照群とし、患者特性、来院時の診断名、かかりつけ医からの紹介の有無を調査した。
結果と考察
保険調剤薬局における横断研究では、研究プロトコール作成ならびに全国の10施設による協力研究ネットワークを構築し、また2施設を利用し調査票作成・調査手順の問題点を抽出するためのパイロット調査を行った。頭部MRI・MRAの適正使用に関する症例対照研究では、研究計画の倫理審査承認を得た3施設におけるデータの解析を行った。かかりつけ医からの紹介状を持たずに来院した患者のうち、検査上の有意所見を認めたものは7%であった一方、紹介状を持って来院した患者のうち、検査上の有意所見を認めたものは21%であった(オッズ比3.8、信頼区間 1.8-7.8)。これらから、地域のプライマリケア医を経由することでスクリーニング機能が働き、結果として効率的な医療の提供が行われていることが示唆される。
結論
本研究で地域のプライマリケア医が果たすことが期待されている機能を実証するための2つの研究を計画し、本年度は研究の第1段階を終了した。今後実証データを蓄積させた上で地域のプライマリケア医の機能評価を行うことで、わが国のプライマリケア医がどの程度国民の健康や医療サービスの効果的使用に貢献しているかを明示することが期待できる。

公開日・更新日

公開日
2006-04-06
更新日
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