国際比較パネル調査による少子社会の要因と政策的対応に関する総合的研究

文献情報

文献番号
200500037A
報告書区分
総括
研究課題名
国際比較パネル調査による少子社会の要因と政策的対応に関する総合的研究
課題番号
H17-政策-021
研究年度
平成17(2005)年度
研究代表者(所属機関)
西岡 八郎(国立社会保障・人口問題研究所人口構造研究部)
研究分担者(所属機関)
  • 津谷 典子(慶應義塾大学経済学部)
  • 福田 亘孝(国立社会保障・人口問題研究所人口動向研究部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 行政政策研究分野 政策科学推進研究
研究開始年度
平成17(2005)年度
研究終了予定年度
平成19(2007)年度
研究費
9,100,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
平成14から16年度に実施した「「世代とジェンダー」の視点からみた少子高齢社会に関する国際比較研究」プロジェクトを踏まえた上で,新たにパネル調査の実施や政策効果に関する研究を行う総合的研究を企図する.日本を含む国際比較可能なマクロ・ミクロ両データの分析に基づいて,結婚や同棲を含む男女のパートナー関係,子育て関係などの先進国間の共通性と日本的特徴を把握し,日本における未婚化・少子化の要因分析と政策提言に資することを目的とする.
研究方法
国連ヨーロッパ経済委員会(UNECE)人口部が企画実施している「世代とジェンダー・プロジェクト(GGP)」に参加し,この国際共同プロジェクトの中核部分であるパネル調査(「世代とジェンダーに関するパネル調査」)を日本でも実施し,少子化のミクロ的側面に関するパネル・データと雇用・労働政策や家族・子育て支援政策などの少子化のマクロ的側面に関するコンテキスト・データを連結させて因果関係を分析する新手法によって行う.





結果と考察
第一に,男性の場合,正規雇用と非正規雇用を比較すると,前者の方が結婚に積極的であり,結婚に対して雇用形態の不安定さがマイナス要因になる.女性の場合,正規雇用でも結婚に消極的である層もかなりいる.結婚に対して,非正規雇用で不安定さゆえに躊躇する男性,正規雇用という安定さゆえに躊躇する女性という結果を得た.第二に,日本では就業の母親でより子ども数は少ないが,フランスでは母親の就業が子ども数にあまり影響せず,必ずしも女性就業が少子化を引き起こすわけではない.女性就業と出生力の関係は母親の就業を取り巻く社会環境によって異なる.第三に,日本では夫の就業時間が長い場合に家事参加度が低くなり,妻の就業・非就業では,前者で夫の家事参加を促す傾向がみられた.第四に若年未婚者が親と同居する可能性は,本人が高学歴で低くなり,この傾向は女性よりも男性で顕著であった.高学歴者は賃金稼得力が高いと考えられ,若年層でパラサイト・シングル化するのは本人の経済力の低さが影響している.
結論
第一に,男性には安定した雇用を保障する政策を実施することで結婚を促進し,女性には家庭と仕事の両立を積極的に進めることで就業女性未婚化の抑制を期待できる.第二に,女性就業と少子化については積極的な子育て支援を実施することで,仕事と育児の両立が可能になり就業女性の出産を促進し,少子化進行の抑制を期待できる.第三に,男性の職場での働き方をよりファミリー・フレンドリーな形に改善
することにより,妻の二重負担を軽減させ,少子化抑制を期待できる.

公開日・更新日

公開日
2006-05-02
更新日
-